韓国政府が全ての中央部処(省庁)に公務員の「内乱加担」の有無を調査するタスクフォース(TF、作業チーム)を設置する。特別検察官(特検)チームによる捜査とは別に、49の中央行政機関に所属する公務員を対象に「内乱清算」に着手するということだ。
違法な非常戒厳宣布に加担した公職者がいるなら処罰を受けるべきだ。非常戒厳の参加者・協力者になるには、謀議に加担したり、非常戒厳後の違法な指示に積極的に従ったりしていなければならない。ところが今回の非常戒厳事態は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領や金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防長官など、ごく少数の主導により行われた。首相やほとんどの長官、ひいては大統領秘書室長さえも事前に知らなかったのに、一般公務員の「非常戒厳謀議」があり得ただろうか。非常戒厳宣布から解除までにかかった時間は約6時間で、それも真夜中のことだった。ほとんどの公務員が一般国民のように非常戒厳宣布に当惑し、解除発表を聞いて安堵(あんど)したことだろう。この6時間に非常戒厳宣布に協力したと疑われる公職者は既に特検捜査の対象となっている。
政府は非常戒厳宣布前の6カ月間から大統領弾劾宣告までの10カ月間にかけての公職者の行動を洗い出すという。昨年6月なら非常戒厳とは関係なく大統領室と連絡を取り合っていたはずだ。非常戒厳後も日常の業務はしなければならない。これはつまり「内乱加担」の有無を調査することを口実に前政権の人物を排除しようという意図ではないのだろうか。政府は、公務員にスマートフォンまで自主的に提出するように指示した。提出しなければ待機発令・職位解除・捜査依頼まですると言っている。これでは「自発」ではなく「強要」だ。捜査機関でもない臨時TFが令状もなしに通信内容を調べるということ自体、違憲・違法に当たる可能性が高い。ところが、TFの名称には「憲法尊重」という言葉が含まれている。
文在寅(ムン・ジェイン)政権は「積弊清算(過去の政権の不正腐敗洗い出し)」として100人を超える過去の政権関係者を捜査した。そして、そうした人々の懲役刑の合計が100年を超え、苦しい状況に陥った公職者が続出した。このため、公職者たちの間では、「無事でいるためには、何もしないことだ」という認識が広まり、どの部処内でも「どっちの味方なのか」で分裂した。当時は19の部処・機関に積弊清算委員会が設置されたが、今回は事実上、全部処に「内乱清算委員会」がつくられる。副作用の方が大きいだろう。
各部処では既にさまざまな投書が寄せられているという。他人に害を与える意図のものも少なくないと思われる。内乱TFが「反逆加担者」の烙印(らくいん)を押し始めれば、公職全体が凍りつくことになる。非常戒厳も荒唐無稽(むけい)だったが、その後に起こっていることにもあぜんとする。
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
2025/11/13 09:40
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