先月30日、米国のドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席は、釜山(プサン)で6年ぶりに再会した。米中は関税やレアアースなどの貿易紛争の議題について、一定の成果を得た。習主席は「両国はともに繁栄することができる」「対話が対立より望ましい」と強調した。トランプ大統領は、今回の会談は10点満点で12点だと評価した。世界の2大強国の首脳会談について、以下の見解を提示する。
一つ目に、両者の「対等な譲歩」は明らかに一時的な均衡とみられる。首脳会談後の貿易協議における科学技術企業の規制、通商法第301条の調査措置、レアアースの輸出統制などは、いずれも「猶予」であり、また「1年間」という条件が付された。米中が交わす経済・貿易の攻防をみると、中国は依然として米国の技術規制による制約を受けており、これが、中国が中期経済発展計画である「第15次五カ年計画(2026~2030年)」において、「科学技術自立自強」を発展の重点に置く理由だ。また、中国はレアアースなどの輸出規制によって、米国に対する「保障された経済的相互干渉」能力を備えていることを立証した。このように輸出規制の面では、過去には米国が一方的に対中国圧力とけん制を展開していたが、現在では相互けん制の形態へと変化した。
二つ目に、習近平主席が「中国の発展・振興とトランプ大統領が実現しようとする『米国を再び偉大に』(MAGA)は互いに矛盾しない」と言及したことは、中国の戦略的な側面において最も重要な点だ。両国はそれぞれ発展し、互いに衝突しない可能性があるということだ。習主席が数年間にわたり主張してきた「広大な太平洋の両岸には、中国と米国の2大国を受け入れる十分な空間がある」という言説と表裏一体をなしている。トランプ大統領が最近繰り返し強調している米中は「主要2カ国」(G2)だとする発言や、どのようにして衝突以外の手法で米国の利益を実現するのかについての言及も、このような主張に呼応している。
米中は地域の安全保障の領域では、異なる状況に直面する可能性がある。トランプ大統領は習近平主席と会う前に、日本と韓国の指導者とそれぞれ会談した。このことから、安全保障の議題はすべて中国を標的としていることがわかる。このような点から、「トランプ2.0」時代の米国の西太平洋での安全保障戦略は、徐々に明らかになっている。バイデン政権期のQUAD(米国・日本・インド・オーストラリア安全保障協議体)やオーストラリア・米国・英国のAUKUSの原子力潜水艦協定などの「ミニラテラリズム」(少数国間での協力)とは異なり、トランプ大統領が強調しているのは、同盟国がより多くの防衛責任を負う2カ国間の軍事的パートナー関係だ。
最後に、米中首脳会談前に外部では、トランプ大統領が「台湾独立に反対する」と宣言するよう中国側が望んでいると推測されていた。しかし、両首脳は「台湾問題」を正式には議論しなかった。主な理由として二つある。一つ目は、今回の会談は関税・レアアース・農産物・フェンタニルなど「目の前の」問題を解決することに重点が置かれた。台湾問題は戦略的な議題であり、短期間で合意できる事案ではない。したがって、この問題を提起すれば、他の議題の進展を妨げることになりうる。二つ目は、トランプ大統領は会談前の記者からの質問に「台湾は台湾だ」(Taiwan is Taiwan)と明確に述べた。このため中国は、会談でこの議題に触れる場合のリスクを考慮して避けた可能性がある。ただし、首脳間の会談後に両国の国防・外交など分野の閣僚級会談では、いずれも台湾問題が言及された。
トランプ大統領と習近平主席は今後1年間に何度も会う可能性がある。トランプ大統領は来年4月に訪中する予定で、その後、習近平主席を米国に招待した。また、来年は中国がアジア太平洋経済協力(APEC)の議長国を担当し、米国は主要20カ国(G20)首脳会議を開催する。この過程で大国間の競争は順調には進まない。米中は少しずつ扱いが難しい議題の領域に踏み込むことになるだろう。これには、両国の敏感な核心的利益に触れる議題が含まれる可能性があり、台湾問題もその一つになるだろう。
2025/11/16 19:03
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