「アジア最大富豪」、インド財閥リライアンスグループのムケシュ・アンバニ会長(68)がサムスン電子の本陣、水原(スウォン)事業場を訪問する。5G・6G通信装備および人工知能(AI)データセンター分野で協力を拡大するという信号だ。アンバニ会長と以前から深い縁がある李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子会長の「ネットワーク経営」が速度を出している。
財界によると、アンバニ会長と長男のアカシ・アンバニ・リライアンス・ジオ・インフォコム取締役会議長が25日から1泊2日の日程で訪韓する。訪韓当日の午後に李会長と共にサムスン電子水原事業場を訪れ、5G通信装備生産ラインと6G通信技術開発現況を見る予定だ。アンバニ会長がサムスン事業場を訪問するのは今回が初めて。財界関係者は「アンバニ会長の親子が直接現場を訪問するだけに後続の契約につながる可能性がある」と話した。
アンバニ会長の親子はその後、ソウルの別の場所に移って李会長と夕食会を持つ。夕食会にはサムスン電子ネットワーク事業部長も同席するという。ネットワーク事業部は中国のファーウェイ、スウェーデンのエリクソン、フィンランドのノキアと競争する。
今回の会談は大きな意味を持つ。「インド進出のアルファとオメガ」と呼ばれる大物、アンバニ会長の訪韓だ。アンバニ会長は「人口大国」インドでエネルギー・通信などの事業分野に進出し、最大規模のグループを率いる。世界最大規模のAIデータセンターも建設している。フォーブスによると、アンバニ会長の財産は1114億ドル(約17兆3000億円)規模であり、アジア最高の富豪(世界15位)だ。エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)、メタのマーク・ザッカーバーグCEO、グーグルのスンダー・ピチャイCEOもインドで事業チャンスをつかむためにアンバニ会長を訪れる。
リライアンスグループは2012年から40兆ウォン(約4兆2370億円)を投資してインド全域に4G LTE通信網を構築した。ここにサムスンが10年以上も通信装備を単独で供給した。長男のアンバニ議長は2022年から通信系列会社ジオの議長を務める。ジオは9月末基準で加入者数が5億600万人(加入者数基準世界2位)にのぼる超大型通信会社だ。
最近は5G通信装備に転換している。中国と政治紛争があるインドは早くからファーウェイの5G装備を拒否したが、その相当部分をエリクソンとノキアが握った。
リライアンスグループは現在インド西部グジャラート州に3ギガワット(GW)級データセンターも建設中だ。個別データセンターでは世界最大規模だ。先週のインドメディアによると、インド南東部にまた別のGW級データセンター建設も計画中だ。インドの東・西にリライアンスグループの超大型AIデータセンターができるだけに、サムスン電子としてはデータセンター用の5G・6G通信技術・装備を大量供給する機会だ。
最近5G・6G通信はAIデータセンターの核心技術に浮上している。AIモデルが拡大して大規模容量のサービスを提供しながらだ。サーバーとサーバーの間、外部とデータセンターが超高速で大容量データをやり取りする通信技術はAI性能と直結する。先月エヌビディアが10億ドルを投資してノキア株2.9%を買収した理由もここにある。エヌビディアはAIデータセンターに6G技術を適用するために数年間エリクソン・ノキア・T-モバイルなど通信装備・技術会社と協力してきた。サムスン電子もここに参加している。サムスンは昨年、5Gとエヌビディア加速コンピューティングを結合して知能型基地局(AI-RAN)技術検証に成功したと発表した。
中国市場がふさがった米ビッグテック企業もインドリライアンスグループのデータセンターに参入した。2020年にジオに先制的に投資したグーグル・メタはそれぞれデータセンタークラウド運営、AIモデル開発分野で協業中だ。エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは最新ブラックウェルAIアクセラレーターを供給すると明らかにした。
財界は今回の会談をきっかけにサムスン電子ネットワーク事業が新たな動力を得るかどうかに注目している。サムスンファウンドリー(半導体委託生産)がテスラから大規模AIチップを受注して長期不振から抜け出し始めたのと似た状況であるからだ。いわゆる「JY(李在鎔)ネットワーク」経営がサムスン電子のビジネスチャンスを拡大しているという評価だ。李会長はアンバニ会長の子ども3人の結婚式に韓国から唯一招待されて出席した。2019年にアンバニ議長が結婚した際、インド式ターバンをまいて出席した姿が話題になった。
李会長は2023年の日本出張の際、記者らに対し、「生きていると友人は多いほど、敵は少ないほどよい」と語った。李会長が長期間にわたり世界各国の政界・財界人と築いた人脈はサムスンのもう一つの競争力として作用した。昨年以降、ジェンスン・フアンCEO、マーク・ザッカーバーグCEO、ソフトバンクグループの孫正義会長、OpenAIのサム・アルトマンCEO、シャオミの雷軍(レイ・ジュン)会長、メルセデスベンツのオーラ・ケレニウス会長らと相次いで会った。
最近ソウル三成洞(サムソンドン)のチキン店でジェンスン・フアンCEOと会食をした後、エヌビディアのグラフィック処理装置(GPU)5万枚を「青田買い」すると発表した。イーロン・マスクCEOと映像会議後にテスラのAIチップを受注する成果も出した。李会長がアラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・ビン・ザイード・アル・ナヒヤーン大統領とも長く交流してきただけに、UAEでもAIデータセンターの協力について協議する可能性がある。サムスンの関係者は「サムスン電子が海外で大型契約をする過程で『JYネットワーク』が大きな役割をしたケースが多い」と説明した。
2025/11/19 14:06
https://japanese.joins.com/JArticle/341214