「漢江の奇跡、九老工団、五輪…その裏には190カ国・700万人のコリアンの力」(1)

投稿者: | 2025年12月5日

世界のどこに行っても次の3カ国・地域の人たちはいるという。世界各地に暮らすアイルランド系(在韓アイルランド大使館によると約7000万人)、中国系(6000万人)、そしてユダヤ系(1300万人)のことだ。特定の民族が故郷を離れて移住して暮らしながら集団を形成することを意味する「ディアスポラ(Diaspora)」の代表民族だ。韓国人の移住の歴史もこれら民族に劣らない。現在、韓国系の在外同胞数は190カ国・約700万人だ。在米同胞が260万人で最も多い。次いで中国(210万人)、日本(80万人)、欧州(65万人)の順だ。

韓国人の海外移住は苦難と悲しみの近代史の中で出発した。最初の記録は1902年12月、ハワイに向かった労働者だ。この人たちは主にサトウキビ農場で働いた。当時ハワイに定着した韓国人労働者およそ7200人の生活は劣悪だった。しかし韓人会を結成し、上海臨時政府の独立運動を後援した。日帝の国権侵奪後には多くの農民が満州と沿海州に向かった。独立活動家と知識人も集まり、武装独立運動の拠点となった。ここの韓人の苦痛の移住史は一度で終わらなかった。1930年代半ば、ソ連のスターリン政権の強制移住政策で約17万人の韓国人がウズベキスタン・カザフスタンなど中央アジア地域に追い出された。列車で6000キロを移動する約1カ月間に飢えと病気で子どもや高齢者など約1万人が命を失った。

 アジア・太平洋戦争中には多くの労働者が日本に渡った。強制動員されたり、金を稼げるという言葉にだまされて行く人が多かった。解放後、多くの人々が故国の地を踏むことができなかった。韓国戦争(朝鮮戦争)後も生計のために海外に出る人が多かった。

◆海外訪問するたびに現地同胞と特別行事

1960年代から国家の外貨獲得の一環として海外への移住が活発になった。韓国からドイツに渡った鉱夫と看護師が代表的な例だ。1963~77年にドイツに派遣された人は約1万9000人(鉱夫7900人、看護師1万1100人)。この人たちは月給の80%を故国に送り、残りの20%で生活した。1964年12月、ドイツを訪問した朴正熙(パク・ジョンヒ)大統領夫妻が現地の国民と会った。行事中は涙を流す人が多かった。陸英修(ユク・ヨンス)夫人も涙を拭いた。ドイツ派遣勤労者が国内に送金した金額は当時、年間5000万ドル前後だったという。送金額が韓国の年間総輸出の2%近い年(1973年の韓国の輸出総額は30億ドル)もあった。このような送金は「漢江(ハンガン)の奇跡」を起こすきっかけとなった。

韓国の大統領は海外を訪問すれば必ず現地同胞と会う時間を設ける。海外同胞懇談会を海外訪問日程の必須コースとする国は韓国のほかには少ないという。こうした特別な行事は韓国人の海外移住史と関連している。貧困や差別を経験しながら海外で孤軍奮闘した同胞に「国家は忘れていない」というメッセージを送っている。

60年代半ば以降、在日同胞の資本が韓国国内に入り、産業基盤の構築を後押しした。当時、政府は九老(クロ)工団を中心に輸出産業工団造成のために外資誘致が必要だった。1965~79年に在日同胞が韓国に投資した金額は10億ドルを超えた。永野慎一郎教授は「64年まで在日の資金2569万ドルが韓国に流入し、祖国訪問時に持っていく『ポケットマネー』も少なくなかった」と伝えた(『韓国の経済発展と在日韓国企業家の役割』)。九老工団には70年代後半まで電気・電子、化学、肥料、金属など200以上の在日韓国人の企業が入った。

88年ソウルオリンピック(五輪)の開催が確定すると、海外同胞の故国支援が続いた。1939年に日本に渡った朴炳憲(パク・ビョンホン)元在日本大韓民国民団(民団)団長。朴氏は85年に民団団長で当選した後、五輪の成功のために525億ウォンを募金して韓国に伝達した。朴氏が集めた在日同胞の資金は体操・水泳・テニスなど複数の種目の五輪競技場建設に使用された。通貨危機の克服には在米同胞の支援があった。70~80年代にアメリカンドリームを夢見て米国に渡った人たちだ。ロサンゼルスLA韓人タウンを中心に「金集め運動」が始まり、1カ月後に100キロの金を本国に送って話題になった。グリーニング業に従事する人が多く、かつてLAとニューヨークのクリーニング店の50~60%を韓国系が運営していた。通貨危機を克服した後、韓国経済が復活し、韓流文化が世界各地に広まりながら在外同胞の地位も高まった。特に韓国人移民者の勤勉性と適応能力、教育熱心な点も地位を高めるのに寄与した。2009年からは在外同胞にも大統領、国会議員投票権が与えられた。

『文明衝突論』で有名な米国の政治学者サミュエル・ハンティントン氏は「ディアスポラと故国政府間の密接な関係と協力は現代政治の核心的現象」(『米国、私たちは誰か』)といった。世界各地に広がるユダヤ人やアイルランド人の事例は我々にも示唆する点が多い。米国でユダヤ人は全体人口の2%(700万人)程度だが、彼らのパワーは強大だ。「米国-イスラエル公共政策委員会」は米議会とホワイトハウスを動かす。元国務長官のキッシンジャー氏、マドリン・オルブライト氏など有名なユダヤ系政治家も多数輩出した。特に米国の経済を掌握している。ゴールドマンサックス、モルガン・スタンレー、ブラックロックなど主要金融投資会社の創業者および経営陣の多数がユダヤ系だ。ユダヤ人の影響力は本国イスラエルの全面的な支援につながっている。毎年30億ドル以上の軍事援助が行われる。また、米国の中東政策は常にイスラエルを中心に進められる。

2025/12/05 10:48
https://japanese.joins.com/JArticle/341803

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