映画『旅と日々』(三宅唱監督)は、スランプに陥った脚本家「李」(シム・ウンギョン)が、雪に覆われた田舎町へ旅に出る物語だ。
李の旅の中へ観客を誘い込み、青い海や豪雨、雪山など大自然の中で出会う魔法のような瞬間を共に体験させる。日本で注目を集める新鋭・三宅唱監督が、つげ義春の漫画『海辺の叙景』と『ほんやら洞のべんさん』を組み合わせて物語を構築した。
李が脚本を手がけた映画を見せた後、後半では李の旅を描く劇中劇の形式で展開し、今年のロカルノ映画祭で国際コンペティション部門の大賞である金豹賞を受賞した。
三宅監督が、原作で日本人中年男性として描かれる主人公の代わりにシム・ウンギョン(31)を主演に起用したのは、「必要以上に自分を良く見せようとしない点が、主人公と似ている」という理由からだ。
5日、ソウル銅雀区(トンジャクグ)のアートナイン話を聞いたシム・ウンギョンも、自分と似ている李の姿に惹かれたと語った。
「『私はあまり才能がない気がする』というセリフに心をつかまれて、出演を決めた。私自身も不足を感じる瞬間が多い。多くの人の前でそれを勇気を持って口にする李の姿勢を見て、ぜひ演じてみたいと思った」
シム・ウンギョンは「余白が多い分、感じるままに表現することができて、自由を感じた」とし、「言葉で表現されないものが確かに存在することを見せる映画だと思う」と語った。
日本での活動で言語の壁を感じてきた自身の経験と、李の悩みには似ている点もあるという。「スランプに陥っている人たちは、李というキャラクターに自分を投影できる気がする」とも話した。
雪景色を楽しんでいた李は、ホテルの部屋が取れず、深い山中の古い旅館で、何を考えているのかつかみどころのない主人・べん造(堤真一)と共に過ごすことになる。
彼と心を通わせ、思いがけない小さな出来事に巻き込まれる時間は、李の心を癒やし、再びペンを取らせる原動力となる。
シム・ウンギョンは映画『新聞記者』(2019)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞し、今回の映画でシンガポール国際映画祭の主演女優賞候補に挙がるなど、日本で認められる俳優へと成長した。しかし映画の中の李のように、絶えず自分の才能を疑ってきた。
「映画『怪しい彼女』(2014)で多くの愛と大きな賞をもらったあと、『私にそんな資格があるのだろうか』という思いから崩れ始めた。でもそこから、『一番でなくてもいい、演技を好きな気持ちがあればいい』と心を立て直し、小さな映画にも出演し、日本での活動にも挑戦するようになった」
彼女は「作品にどう溶け込むべきかを見落としていたことに気づいてから、自分が果てしなく不足しているように感じた」とし、「今は、自分で納得できる演技ができて、監督の満足そうな表情を見ると、高揚するような喜びを感じる」と語った。
彼女は次回作として、韓国と日本でそれぞれ2本のドラマに出演する。13日放送のNHK開局100周年記念ドラマ『火星の女王』では火星人を演じ、さらにブラックコメディ『韓国でビルオーナーになる方法』(tvN、来年上半期放送)にも出演し、
これまでのイメージとは対照的なキャラクターに挑む。
シム・ウンギョンは「大きな未来を設計するより、日々を精一杯生きていけば、いつか行きたい道にたどり着けると思っている。今回の映画を通じて、日常の大切さを改めて実感した」と語った。
2025/12/09 13:31
https://japanese.joins.com/JArticle/341937