中国の習近平国家主席が2019年1月に包括的な台湾政策を発表して以降、「台湾有事」は東アジア諸国の安保変数に浮上した。台湾問題の核心は、台湾有事の際、米日両国がどう対応するかという問題だ。大韓民国は輸出入物流の約40%が台湾海峡を通過するため、この地域で武力衝突が発生すれば経済に直接的な影響を受ける。
高市早苗首相は先月の衆議院予算委員会で、台湾が中国の武力攻撃を受ければ日本には「存立危機事態」と言及し、日本の介入の可能性を示唆した。この発言に激憤した薛剣駐大阪中国総領事が「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」という極端な言葉をSNSに載せて波紋を呼んだ。
これに先立ち10月30日に慶州(キョンジュ)で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議期間に習近平主席と高市首相が初めて会ったが、冷めた雰囲気だった。高市首相が存立危機事態に言及して以降、中日関係は急激に冷え込み、最近は軍事的脅威の行使につながっている。外交関係はもちろん経済・文化交流にも悪影響を及ぼしている。
日本は安倍政権当時から台湾有事を想定して戦略を研究し、安保関連法制を制定しながら戦略環境の変化に対応してきた。日本は台湾有事を3段階で想定している。第1段階は中国が台湾を侵攻した場合だ。米国は軍事介入および兵力の展開を決断しなければいけない時期だ。日本は重要事態を認め、米軍は南西の島嶼地域に臨時拠点を設置する。自衛隊は米軍の後方支援をする。第2段階は米中間で戦闘が始まる場合だ。この段階で日本は同盟の米国の要請に基づき「存立危機事態」を認め、自衛隊は集団的自衛権レベルで武力行使に入る。第3段階は中国が在日米軍基地や自衛隊基地を攻撃する場合だ。日本は武力攻撃事態に対抗して個別的自衛権を発動し、自衛隊が中国軍に武力で対応する。この場合、米国・日本・台湾が中国に対抗して全面戦争をすることになる。高市首相の議会発言は第2段階を想定したものと解釈される。こうした日本の立場は第2次安倍政権当時に日本が「戦争できる国」に変身したことに基づく。
中日両国の最近の対立は1972年の国交正常化当時から胚胎している問題だ。中国が主張する「一つの中国」に対して中日がそれぞれ異なる解釈したからだ。中国は台湾を中国の一部と主張してきた半面、日本は中国の見解にあいまいな態度を維持してきた。当時、日本は中国が台湾を統一しても異議を提起しないという立場だったが、平和的な解決が前提条件だった。したがって中国が台湾を武力で侵攻する場合、中日が採択した共同声明は破られることになる。
最近の中日葛藤は韓国に示唆する点が少なくない。1つ目、隣国の首相に発言を撤回しろと制裁を加えて威力を誇示する中国にどう対応するかだ。韓国はすでにTHAAD(高高度防衛ミサイル)事態当時に似た圧力を経験した。韓中間に似た葛藤が生じないよう相互尊重の実用外交が求められる。
2つ目、台湾有事が「韓国有事」または「韓米同盟有事」につながらないようにすることだ。最悪の事態を避けるには、韓米は有事を仮定した事前協議を通じて韓米同盟が実質的に作動するようにしなければいけない。米シンクタンクの台湾有事シミュレーションによると、米日同盟の協力がなければ米軍は中国に敗れるという研究があった。それだけに在韓米軍の役割が重要だ。さまざまなシナリオを想定して徹底的に備える必要がある。
3つ目、中日葛藤の長期化に備えて経済安保を強化することだ。韓国の技術・サービス・サプライチェーンを強化し、弱点を補完しなければいけない。半導体・レアアース(希土類)など戦略物資を国家安保の武器として利用する状況で、サプライチェーン支障の可能性を念頭に置いて備える知恵が必要だ。両岸統一を明らかにした中国が国家目標達成を強行し、これに対抗した米日同盟の力が劣勢で均衡が崩れれば、台湾有事はすぐに韓半島(朝鮮半島)に安保の脅威として押し寄せてくるかもしれない。中日の葛藤が投げかける重要な質問だ。
イ・ジョングク/21世紀安保戦略研究院東アジアセンター長
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2025/12/11 15:39
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