世界最大のオンライン動画サービス(OTT)であるNetflix(ネットフリックス)によるワーナー・ブラザース・ディスカバリー買収の動きに伴う波紋が、コンテンツ産業全体に広がっている。Netflixがハリウッドを代表するワーナー・ブラザースの買収を試みていること自体が、メディアの「ビッグバン」をけん引する同社の存在感を改めて示している。
この動きは、韓国のコンテンツ市場にも影響を及ぼす可能性がある。圧倒的な加入者数を誇るNetflixが、『スーパーマン』『ハリー・ポッター』『ゲーム・オブ・スローンズ』といった大作シリーズのコンテンツIPまで保有することになれば、NetflixでのKコンテンツの存在感が低下するのではないかとの懸念が出ている。
14日、コンテンツ業界の分析によると、Netflixがワーナー・ブラザースの買収を進める最大の理由は、IPの確保にある。『アフター・ネットフリックス』の著者である東国(トングク)大学メディア研究所のチョ・ヨンシン客員教授は、「Netflixによるワーナー・ブラザース買収には、良質なIPを確保し、コンテンツ競争力を強化する狙いがある」とし、「買収に成功すれば、買収額を上回る統合効果が期待できる」と述べた。Netflixは今月5日(現地時間)、ワーナー・ブラザース買収の最終契約を締結したと発表し、買収額は720億ドル(約11兆1719億円)に上ると明らかにした。
米国の市場調査会社モフェット・ナサンソンのロバート・フィッシュマン氏も、「Netflixはこれまで、世代を超えて視聴できるフランチャイズ型コンテンツを十分に保有していなかった」とし、「ワーナー・ブラザースの買収は、そうした弱点を補完するものになるだろう」との見方を示した。
今回の買収の動きに対して、映画業界は強く反発している。米国の映画館事業者団体「シネマ・ユナイテッド」は、Netflixの買収発表後に出した声明で、「この取引は世界の映画上映事業に前例のない脅威をもたらす」とし、「その悪影響は、米国や世界の大手チェーン劇場から地方の独立系映画館に至るまで、すべての劇場に及ぶだろう」と指摘した。
ドラマなど他のコンテンツ分野も、Netflixの規模拡大の影響から逃れられない。特に、Kコンテンツの地位が揺らぐ可能性が指摘されている。韓国初のNetflixオリジナル作品『キングダム』を皮切りに、『イカゲーム』などが世界的な成功を収め、Netflixでの韓国コンテンツの存在感は大きく高まってきている。グローバルなメディア市場分析会社アンペア・アナリシスが今年4月に発表したデータによると、2023年1-3月期から2024年4-6月期までのNetflix全体の視聴時間に占める韓国コンテンツの割合は約8%で、英国(7%)や日本(4%)を上回り、米国(約56%)に次ぐ2位だった。
しかし、厚いファン層を持つワーナー・ブラザースのコンテンツがNetflixの配信ラインアップに加われば、Kコンテンツの存在感は相対的に低下する可能性がある。匿名を求めた業界関係者は「Netflixがワーナー・ブラザースのコンテンツを保有すれば、関連する派生コンテンツの制作が増え、その分、韓国コンテンツの供給が減る可能性がある」と指摘した。
今回の買収を巡っては、ドナルド・トランプ米大統領が独占への懸念を示し、パラマウントも買収競争に参入するなど、情勢は複雑化している。それでもコンテンツ業界では、「Netflix一強体制」が当面続くとの見方が大勢を占めている。
韓国のコンテンツ業界も、こうした状況への備えが必要だとの指摘が出ている。Netflixへの過度な依存を避けるため、対抗できる存在を育成すべきだという声だ。韓国放送通信大学メディア映像学科のイ・ソンミン教授は、「コンテンツ産業の健全な循環を期待するには、結局のところ強力なローカルOTTの存在が不可欠だ」と述べた。
2025/12/15 14:47
https://japanese.joins.com/JArticle/342173