米国は最近、2025年国家安全保障戦略(NSS)を発表した。これは、「トランプ2.0」時代の米国がグローバルな権力と経済発展を捉える観点で、重大な方向転換がなされたことを象徴している。米国は第2次世界大戦後に追求してきたグローバル覇権追求の路線を修正し、「米国を再び偉大に」(MAGA)を核に、圧倒的な力を通じて、米国が戦争に巻き込まれることを避けようとしている。その代わり、経済・産業・国民を他国から保護し、同盟国に防衛責任を強く要求することに焦点を向けている。これについて、以下の見解を提示する。
まず、戦略的主軸の面で、国家安全保障戦略の報告書は、米国が過去に「誤った道」を歩んできたと批判する。米国はもはや民主的価値を全世界に輸出せず、グローバル・リーダーシップを追求しないことを明確に示している。代わりに、階層化された利益の「同心円」を構築した。最も内側に置かれる重要なことは米国本土の利益の保護で、第2の円は西半球に対する絶対的勢力圏の確保、第3の円はその他地域だ。これにともない、該当地域の同盟国には、より多くの安全保障と防衛の責任を負担するよう要求している。
米中関係において、今回の国家安全保障戦略は、中国に言及する際にしばしば使われてきた「最優先の脅威」といった表現を一切用いていない。代わりに、中国を「最優先の経済的ライバル」「サプライチェーンの脆弱性の源泉」、そして「理想的な状況においては」地域的主導権を確立することを阻止すべき行為者と規定した。これにはいくつかの隠された意味がある。一つ目は、現在の両国関係は経済が中心であるため、「経済的未来を確保すること」が優先課題だ。二つ目は、両国経済は競争・協力が共存する関係であるため、「貿易関係の再構成」が核となる。三つ目は、中国が米国の技術規制と関税戦争を突破し、「理想的な状況」においても優位を占めることが可能だとみている。以上を踏まえると、なぜ報告書が米国の利益を西半球に限定し、米国のドナルド・トランプ大統領が最近繰り返し「主要2カ国」(G2)に言及しているのかを理解できる。
東アジア地域の安全保障の側面では、米国が中国の軍事的台頭を阻止する意図はないという意向を明確にしたわけではない。むしろ、米中間の軍事的対立を緩和しつつ、その任務を地域内の同盟国に任せるというものだ。これを受け、米国は同盟国を明確に「戦略的目的を達成するための手段」とみなし、同盟国に「自分たちが位置する地域に対して、一次的責任を負担」するよう要求している。
最後に、両岸関係において、国家安全保障戦略は台湾について、中国とロシアの次に多く言及している。台湾が世界の半導体のサプライチェーンの中心にある点を強調し、台湾の戦略的位置に焦点を当てた。台湾の戦略的地位は二重の性格を持っており、一つは、中国の第1列島線(九州‐沖縄‐台湾‐フィリピンを結ぶ仮想の線)の突破を阻止する要衝であり、もう一つは、東北アジアと東南アジアを結ぶハブだという点だ。しかし、前述の論理と同様に、台湾は米国製武器を購入して自己防衛責任を担い、他方では米国の国防と関連産業を支援しなければならない。
国家安全保障戦略をみると、東アジア地域の米国の同盟国は「米国を再び偉大に」のために米国に対する投資拡大を約束しなければならない。安全保障問題では、米国を中心とする戦略的戦列を構築し、中国の台頭に対応しなければならない。米国は、軍事的抑止の中心的な提供者であり、その側面にある国家が「最前線の実際の参戦者」となり、国防費を大幅に増額しなければならない。しかし、もし過度に早急な行動で米国と中国との間の「取引」を阻害する場合は、「警告」を受けることになるだろう。日本の高市早苗首相が「台湾有事」問題をめぐり、中国との外交的摩擦を起こした件がその例だ。このような点で、この地域において、米国が真の主役として認識する対象は中国であり、同盟国は価値同盟において、中国を戦略的に抑制する協力者へと転換しつつある。
2025/12/21 19:37
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/55024.html