S&P500の株価収益率(PER)は25倍前後で長期平均である16倍を大きく上回っており、時価総額上位10社のハイテク株が全体の約40%を占める極端な偏り現象も深まっている。資産価格が調整局面に入れば消費萎縮が早く現れる可能性が大きく、これは実体経済全般に否定的波及効果を拡散しかねない。
AI投資の期待が弱まったり資産価格が調整局面に進入する場合、株価下落から富裕層の消費萎縮、景気鈍化へと続く経路は十分に可能なシナリオだ。この場合米連邦準備制度理事会(FRB)は景気防衛に向け利下げ幅を拡大するほかなく、2026年に金利が3%以下に落ちる可能性も排除し難い。
利下げは長期金利下落とドル安につながる可能性が大きい。12月現在4%を上回っている米国10年物国債利回りは2026年に3%台半ばまで下落する余地がある。ここに過度な政府負債と累積した対外不均衡はドルに構造的な下落圧力を加えるだろう。2024年末に108.49だったドル指数が2025年9月に97水準まで下落したのに続き、2026年には90以下に落ちる確率が高い。
2番目の変数は米日金利差縮小の可能性だ。ここ数年間円安の最も重要な背景は米国と日本の通貨政策差別化だった。FRBが積極的な利上げで金利を5.5%まで引き上げたが、日本銀行は超低金利政策を固守して米日の金利差は2015年11月の0.25%から2023年7月には5.5%まで拡大した。これは円を借り入れて高金利通貨資産に投資する円キャリートレードを広め、ドル相場を2024年6月には1ドル=160円以上に押し上げた。
◇金利上げる日本、円上昇の見通し
しかしこうした環境は次第に変化している。米国経済は前で見たように「3A成長」の限界があらわれ、消費鈍化で経済成長率が低下し、FRBは金利をさらに下げる見通しだ。これに対し日本の通貨政策方向は正反対だ。日本銀行は先週政策金利を0.5%から1995年以降で最高水準となる0.75%に引き上げた。物価上昇が続き来年の春闘で賃金引き上げ率が5%前後に達する見通しだが、この場合日本銀行の利上げ速度はさらに速まるかもしれない。米日の金利とともに市場金利差がさらに縮小するという意味だ。
2010年以降、米日の10年物国債利回り差と円ドル相場の相関係数は0.69に達する。米日の金利差が減るほど円が強くなる可能性が大きくなるという意味だ。市場の期待が一方に傾いた場合、円キャリートレードが解消され円の価値が急激に上がる可能性も排除することはできない。
3番目は中国だ。中国は輸出と投資中心の成長モデルから消費中心に構造転換を試みている。この過程で過度な人民元安を容認する可能性は大きくない。中長期的には人民元が段階的に強くなる流れを示す可能性が大きい。
4番目は韓米の金利差だ。韓国銀行は当分基準金利を2.5%水準で維持する可能性が大きいが、FRBの利下げで韓米の金利差は自然に縮小する。これはウォン高に友好的な要因だ。
5番目は経常収支だ。韓国銀行の11月の「経済見通し」によると、韓国の経常収支は今年1150億ドル、来年には1300億ドルで相次ぎ過去最高を記録すると予想される。経常収支黒字ほど直接投資と証券投資などでドルが海外に出ていくが、経常黒字は中長期的に為替相場安定の核心の柱だ。もちろん韓米関税交渉結果にともなう3500億ドルの対米投資は外為市場の需給不安要因として残るだろう。
◇来年6月のウォン相場、1ドル=1412ウォンを予想
経済変数、特に為替見通しはかなり難しく間違いやすい。短期的には地政学的リスクや市場心理により変動性が拡大する可能性がある。しかしドル安と円高・人民元高の可能性、韓米金利差縮小、大幅の経常収支黒字という根本的要因を総合すると、ウォンの低評価は2026年に入ってから段階的に解消される見通しだ。
12月19日現在の内外の金融会社28社の見通し中央値を示すブルームバーグコンセンサスによると、ウォン相場の予想値は来年6月に1ドル=1412ウォン、12月に1400ウォン、2027年末に1350ウォンだ。ウォン相場を決める5つの要因で評価すれば、 11月の適正相場は1270ウォン前後だ。この数年間に世界的通貨環境の変化の中で揺れたウォン相場はゆっくりこの水準に接近する確率が高い。
キム・ヨンイク/元西江大学経済大学院兼任教授
2025/12/22 10:59
https://japanese.joins.com/JArticle/342457