「こうして週に2回も気にかけてくれるから本当にありがたいです。(国は)絶対にやめてはいけません」
18日、ソウル東大門区清凉里洞(トンデムング・チョンニャンニドン)のある多世帯住宅。hyフレッシュマネージャー(訪問販売員)のソン・グムジュさんから健康飲料を受け取ったキム・オクスンさん(90)は、そう言って明るく笑った。キムさんは、夫も子どもも兄弟姉妹もおらず、一人で暮らす独居老人だ。キムさんの安否を定期的に確認している人は、実質的にソンさんだけだ。
東大門区庁はhy江北(カンブク)支店と業務協約を結び、キムさんのような一人暮らし高齢者に週2回、健康飲料を配達しながら安否を確認している。配達した飲料が次の訪問時までそのまま残っていれば、hyのマネージャーが区庁に連絡して異変の有無を知らせる仕組みだ。ソンさんは「ちゃんと顔を合わせていると、家の事情も自然と分かる」と話し、「今年初めには、家の中で倒れていたお年寄りを見つけて通報した。飲料1本が生存信号のようなもの」と語った。この日、ソンさんが訪ねた80代のアン・ギルジョンさんは「こうして訪ねてくれる人がいるだけでもありがたい」と話した。
◇コンビニに“仮想会社”を開設……孤独死との戦いに乗り出す自治体
孤独死や孤立・ひきこもり問題が浮上する中、自治体も「孤独との戦争」に乗り出している。昨年、韓国で孤独死によって亡くなった人は3924人で、保健福祉部が実態調査を始めて以来、最多となった。
単身世帯の比率が全体の40%に達するソウル市は、「孤独のないソウル」の韓国語を略した「ウィ・オプ・ソ」事業を推進している。孤独を感じたときに365日24時間利用できるコールセンター「ウィロウムアンニョン120」と、孤独な気持ちを和らげることのできる空間「ソウルこころのコンビニ」が代表的だ。ソウルこころのコンビニ東大門店を管理する東大門総合社会福祉館のイ・ボソン課長は、「コンビニのように、誰でも気軽に立ち寄れる、歓迎される空間が目標」と語った。
全国で初めて、孤立・ひきこもり青年を専門に扱う機関であるソウル青年キジゲセンターのキム・ジュヒ・センター長は、「どうやって支援を受ければいいのか分からなかった孤立・ひきこもりの若者たちから、ソウルにセンターができたことで爆発的な申し込みがある。今年だけで申請者は4600人を超えた」と話した。
仁川市(インチョンシ)は、孤独問題に対応する専門担当組織「ウェロウムトルボム(=寂しさケア)局」を来年1月に新設する。局レベルの組織を新設したのは韓国の自治体としては初めてだ。あわせて来年から、孤独支援プラットフォーム「アイリンクカンパニー」を運営する計画だ。総合社会福祉館などに仮想の会社をつくり、孤立・ひきこもり状態にある人々が出勤・退勤するようにプログラムに参加する方式だ。
仁川市関係者は「与えられた任務を完了すればインセンティブを提供し、飲食店など日常生活で使えるようにする計画」と説明した。京畿道水原市(キョンギド・スウォンシ)と釜山市(プサンシ)は、それぞれ「ソオク」「集まってみよう 釜山1人世帯」といった単身世帯専用ポータルを運営し、きめ細かな支援を行っている。
孤独対策は、当事者が心を開かなければ手が届きにくい。そのため、家にこもりがちな人々をどう外に引き出すかが重要だ。水原市は「外出誘導カード」を通じて、外出時に使える地域通貨50万ウォンを支給し、使用履歴を確認する。慶尚南道梁山市(キョンサンナムド・ヤンサンシ)は、ひきこもりがちな中高年に1人当たり最大300万ウォン(約32万円)までの歯科治療費を支援している。梁山市関係者は「経済的に困難な中高年は、自分は支援対象ではないと考えがちなので、そのために打ち出した対策」と説明した。
中央政府も動き出している。9月に発表した「2025国家自殺予防戦略」には、自治体ごとに自殺予防官を指定し、地域の自殺予防業務を総括させる内容が盛り込まれている。保健福祉部第1次官を、社会的孤立(孤独)専担次官に指定する案も国政課題として提示された。福祉部関係者は「英国や日本など海外事例を参考に、わが国に最も合った方式を検討している」と述べた。
ただし、孤立・ひきこもり問題が複合的な社会問題である点から、より体系的な政策が必要だという指摘も出ている。全北(チョンブク)大学社会学科のソル・ドンフン教授は「孤独を深刻な社会現象として認識し、兼務ではなく専担次官を置いて、より統合的にアプローチすべき」と話す。成均館(ソンギュングァン)大学社会学科のク・ジョンウ教授は「実質的な効果を出すには、人工知能(AI)の活用や官民連携などを通じ、先制的に対応するスマートな福祉システムへ進む必要がある」と提言した。
2025/12/23 14:37
https://japanese.joins.com/JArticle/342524