韓国は経済安全保障の脆弱性が世界で最も高い国だ。それでも経済安全保障能力の進展速度はとても遅い。日本は経済安全保障担当大臣のポストを2021年に新設し、現在の高市早苗首相もその職を歴任した。来年には首相直属で経済安全保障センターを作り独立行政法人経済産業研究所(RIETI)の下に置く予定だ。このセンターの設立目的は経済・技術・外交・情報・軍事分野の統合的研究と政策開発、核心物資の供給網地図作成と政府省庁間の政策調整だ。12月中旬には経済産業省主管で米国、欧州、オーストラリアなどの専門家と外国大使館、企業関係者を招いて経済安全保障グローバルフォーラムを開催した。英国とは経済安全保障パートナーシップを結び、ドイツとは協議体を構成した。
韓国には経済安全保障の指令塔がない。経済安全保障と関連した役割が官庁間に散在しており統一性が弱い。青瓦台(チョンワデ、大統領府)国家安保室に経済安保担当次長と秘書官がいるが、人材は大きく不足する。経済と地政学に対する専門性を基盤に、核心技術と供給網、国際協力まで合わせてできる人材が必要だが、こうした専門家を探すのは難しい。外交部に経済安保外交センター、産業通商資源部に産業資源安保室、企画財政部に供給網安定化委員会、貿易安保管理院などがあるが、組織名でわかるように仕切りのように業務が分かれている。供給網、経済、技術、外交、軍事がすべてつながった世界でこうした分離的な組織だけで経済安全保障を守れるかは疑問だ。これに対し米国はホワイトハウス組織だけでなく国務省にも首席経済学者室を置き、経済、国際関係、データ分析専門家を雇用して政策を作っている。
良い研究が実効性のある経済安全保障政策を作る。データ基盤の研究がなされてこそリアルタイムモニタリングと早期警報システム構築、事前的抑止と事後対応能力を備えることができる。ところが現在の韓国の経済安全保障組織には研究機能が抜けている。既存の政策研究にも忙しい国策研究院が新たな経済安全保障研究に人材と資源を大挙投じることも難しい。関税庁など政府は機密漏洩を心配してデータを公開しない。しかし日本は省庁間の合意でデータを研究者に公開する決定を下しただけでなく、米国、台湾などと企業データを共同分析しようと作業中だ。
現在の地政学対立は経済戦争を中心に進行している。地球化時代に繁栄の通路だった超連結性がいまや武器になった局面だ。弾薬とミサイル、ドローンだけでなく供給網、貿易、投資、金融が安全保障に向けた核心手段として活用される時代だ。韓国はどれだけ準備できているだろうか。
キム・ビョンヨン/ソウル大学客員教授・経済学部
2025/12/31 12:03
https://japanese.joins.com/JArticle/342845