◆南北の二つの国家論
北朝鮮は2023年末、過去80年の南北関連史を決算しながら、大韓民国の民主政権も保守政権も自由民主主義体制への吸収統一を推進したとし「敵対的な二つの国家論」を持ち出した。北朝鮮は韓国憲法の領土条項(3条)を問題にし、歴代政権が政権崩壊と体制統一を推進したと主張して南北関係を断絶した。北朝鮮の立場の旋回がない限り、対北朝鮮政策の推進と関連した国内の葛藤が再現される可能性はそれほど大きくない。その代わり「平和的な二つの国家」解決法をめぐり「大韓民国は統一を志向し、自由民主的基本秩序に立脚した平和的統一政策を樹立し、これを推進する」という憲法4条を違反したとか、永久分断に固着するかもしれないという主張でもう一つの葛藤が生じている。
北朝鮮が南北基本合意書で合意した「統一を志向する過程で暫定的に形成される特殊関係」の枠を否定する状況で「統一志向の平和的な二つの国家」解決策は現実整合性が高い。朴正熙(パク・ジョンヒ)政権の内政不干渉と相互不可侵および南北国連同時加盟推進(1973年6・23宣言)、盧泰愚(ノ・テウ)政権の南北基本合意書採択と国連同時加盟実現(1991年)、民族共同体統一案の提示(1989年)など保守政権が推進した対北朝鮮・統一政策は事実上「二つの国家解決策」だ。韓民族共同体統一案を作って修正・補完する時期に主務長官だった李洪九(イ・ホング)元首相は「我々の統一案で南北連合段階を設定することで南北基本合意書採択と国連同時加盟を可能にした」とし「これは韓国版の両国体制解決策(two states solution)だった」と振り返った。
北朝鮮は今月下旬に開くことにした労働党第9回大会で統一・同族・和解を捨てて「交戦中の敵対的な二つの国家関係」の枠を制度化する可能性が高い。北朝鮮版の二つの国家解決策に対応することが宿題に出されたということだ。北朝鮮は今回の党大会を通じて分断体制の北朝鮮でなく独立的な朝鮮民主主義人民共和国としてアイデンティティ確立のための思想・理論的調整をし、新たな対外政策方向を提示するとみられる。北朝鮮は敵対敵な二つの国家解決策に基づき停戦協定を無力化し、大韓民国と関係のない「社会主義独立国家」として米国・日本などとの関係を結ぼうとするだろう。
◆平和特使の任務
鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官は昨年末の業務報告で、ペースメーカーの役割強化のための「韓半島平和特使」任命を要求した。統一部は米中首脳会談が開かれる4月までを韓半島情勢の重要な分岐点と見なし、鄭長官が韓半島平和特使としてペースメーカーの役割を遂行することを望んでいる。朝米対話と南北対話を再開して終戦宣言などを推進するには韓半島平和特使が必要という論理だ。
まだ平和特使を任命するような動きは感知されていない。鄭長官が注文するように李在明大統領が韓半島平和特使を任命して中国や米国に派遣するには、事前の関連国との協議が前提になってこそ成果を期待できる。2018~2019年に韓半島平和プロセスが作動した当時、韓国と北朝鮮、米国の首脳が情報当局を動員してトップダウン方式で南北、朝米首脳会談を実現させた点を参考にする必要がある。
今は南北関係が断絶していて秘密接触自体が難しい条件で、特使を通じたう回路を活用するのが唯一の方法かもしれない。戦略的覇権競争が激化している米中は首脳会談をしても直ちに韓半島問題に集中するのは容易でない。こうした難関を突破するための韓国政府のペースメーカーの役割がより一層重要になる。大韓民国が戦略的自律性を発揮するために特使の役割が必要な理由でもある。韓半島平和特使が決まれば、まずは朝米首脳会談が開かれるよう米国と中国・ロシアを通じて北朝鮮を説得することに主眼点を置かなければいけない。
同時に韓国戦争(朝鮮戦争)を終わらせるための韓半島平和共存プロセスを稼働させることも念頭に置く必要がある。米中両国は朝鮮戦争の交戦国であり停戦協定の署名当事国だ。トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が決断すれば2(米中)+2(南北)または4者会談を通じて停戦協定を平和協定に転換し、朝米関係正常化のための交渉を始めることもできるだろう。
国連安全保障理事会傘下の対北朝鮮制裁委員会が最近、対北朝鮮人道的支援事業17件に対する制裁を免除することにした。朝米首脳会談の開催を念頭に置いた措置かもしれないが、2019年のベトナム・ハノイで開催された2回目の朝米首脳会談でノーディールを経験した北朝鮮の心を変えるにはかなり不足した「誠意」の表示だ。「制裁対自力更生の正面突破戦、長期戦」に突入して社会主義の全面的発展に「成果」を出した北朝鮮を動かすには、朝米関係正常化のような大きな贈り物が必要かもしれない。もしかすると我々の希望とは違い、韓半島をめぐる安保の原形そのものが揺らぐこともある。我々も実事求是の立場で停戦体制の構造変化をもたらす平和交渉に対応しなければいけない。
高有煥(コ・ユファン)/東国大名誉教授/元統一研究院長
2026/02/10 15:34
https://japanese.joins.com/JArticle/344663