イランに対する圧勝をついに収めることなく、ドナルド・トランプ米大統領は中国訪問の準備を進めている。
米国の力を誇示し、優位に立った状態で習近平国家主席との首脳会談に臨もうとしたトランプ大統領の危険な賭けは失敗に終わった。米国とイラン戦争により一度延期された末、来週に迫った米中首脳会談を控え、習近平中国国家主席の手にはより多くの切り札が握られることになった。米国がイラン戦争で消耗した莫大な武器備蓄を回復するためには、中国のレアアース(希土類)に依存せざるを得ない。米国はホルムズ海峡の開放と終戦のために、中国がイランに対する影響力を行使するよう求めているているが、中国は泥沼に陥っている米国を救うために積極的に動くつもりはないようだ。中国もホルムズ海峡の開放を望んではいるが、それは米国自ら解決すべき課題だという態度を示している。
トランプ大統領は昨年1月の就任後、関税戦争や先端技術の輸出規制などで中国の急所を狙ったが、習近平国家主席が綿密に準備したレアアースカードに押され、昨年10月末の釜山(プサン)での首脳会談で、「休戦」せざるを得なかった。その延長線上で、今月14〜15日に開かれる米中首脳会談において、両国は互いの利益を守りつつ、長期的な競争を続けられる枠組みを作ろうとしている。習主席は、トランプ大統領が中間選挙での成果として掲げられるような米国産農産物や航空機の購入などを約束する可能性があり、貿易、技術と投資、そして台湾問題とイラン問題が主要な議題として議論されるだろう。
しかし、今回の首脳会談でどのような取引が行われようとも、米中覇権争いはこれからも続く熾烈な長期戦だ。習主席は、米中の勝敗は先端技術と未来産業で決まるとみて、総力戦の指揮を執っている。
韓国金融研究院のチ・マンス上級研究委員は、15日に現代中国学会で発表する予定の論文で、中国が2035年までに達成すると宣言した「中国式現代化」の目標は、中国共産党が主導する「製造業を有する米国になること」だと分析している。習主席は、不動産などの資産バブルを管理できず後遺症に苦しむ「日本モデル」、福祉社会のコストを賄い切れない「欧州モデル」を、中国が避けるべき反面教師としている。米国が高い成長率と先端科学技術の革新を維持している点は学ぶべき点だとみなしているが、製造業基盤の弱体化によって深刻な社会政治・経済安全保障上の脆弱性に直面している状況は、中国が必ず避けなければならない道だと考えている。これを踏まえ、中国は米国の技術革新を参考にしつつも、伝統産業から最先端産業に至るまで、製造業のあらゆる分野を手放さないことを目指している。
今年から始まった中国の第15次5カ年計画(15.5計画)は、成長率目標を「4.5〜5%またはそれ以上」と曖昧に設定しつつ、技術革新を圧倒的な優先課題に据えている。チ研究委員は、中国が「製造業を有する米国になる」ために3つの案を提示したと分析する。一つ目は、「先進国型産業の高度化とは、製造業からサービス業へと産業の中心が移行することだ」という従来の認識を明確に廃棄し、製造業優先の方針を維持しつつ経済を発展させるという目標を明確にした。15.5計画は「先進製造業は先進的な産業体系の骨格」と明記したうえで、「製造業が国内総生産(GDP)の中で合理的な比重を保てるようにする」という目標を示した。二つ目は、新エネルギー、新素材、自動運転車、ロボット、バイオ、先端装備などの戦略的産業において、中国がもはや追随者ではなく主導者の地位を強化する戦略への切り替えだ。三つ目は、製造業とサプライチェーンの強化が国家安全保障の基礎であるという認識のもと、半導体技術などの難関を克服するため、「新型の挙国体制」と「非常な政策手段」を活用すべきだと明記した。
習近平政権の指導部は2015年に「中国製造2025」を発表して以来、戦略産業の育成を一貫して進めて来た。特に第2次トランプ政権の関税攻撃などに効果的に対応したことで、最近では「中国モデル」に対する自信が高まっている。習主席は今年の年頭演説で、「わが国はイノベーション能力が最も急速に高まっている経済体の一つとなった」と自負した。2024年と2025年の年頭演説で「大衆の雇用と生活の困難」「不確実性という新たな挑戦」に言及していたのとは、明らかに異なる。中国は電気自動車、太陽光、半導体などの現在の先端産業だけでなく、核融合、量子力学、ヒューマノイドロボットのようなまだ実証されていない分野にも巨額の投資を行っている。未来の産業まで先取りしようとしているのだ。
習近平主席の戦略は、中国が技術自立を強固にし、世界が中国にさらに依存するようにすることだ。特に米国のイラン侵攻以降、多くの中国人は、習近平主席が自給自足を強調して石油や原材料を備蓄し、米国への依存度を低減させる経済体制を築いてきたことを、先見の明があるとして改めて評価している。
トランプ大統領は、中国の原油輸入の半分と液化天然ガス(LNG)輸入の3分の1がホルムズ海峡を通過するため、海峡封鎖が長期化すれば中国が大きな打撃を受けると予想したのだろう。ところが、中国は過去10年余りの間、石油・ガスへの依存を減らし、石炭、水力、太陽光、風力などを総合的に取り込んだ「電化」を進め、石油への依存度が低い経済を築いてきた。世界最高水準の電気自動車の普及と充電インフラの拡充は、その一環だ。
今回の戦争を機に、世界が先を争って石油・ガスへの依存を減らし「電化」を推進すればするほど、中国への依存は必然的に高まるだろう。中国は世界の太陽光モジュール製造、風力タービン、バッテリー生産能力の80%以上を占めており、これらの技術に不可欠な重要鉱物の生産と加工もほとんど掌握している。エネルギー安全保障への懸念が高まるほど、世界は中国の再生可能エネルギー技術とサプライチェーンに頼らざるを得なくなる。日本経済新聞は、今回の戦争の真の意味は、米国の「石油の世紀」ビジョンと中国の「電気の世紀」ビジョンの覇権遣争いであり、自給自足可能な電気に基づく中国のシステムが、「石油・ドル・軍事同盟」に基づく米国の世界運営体制に挑戦していると分析した。
中国の「製造業を有する米国になる」戦略は大きな成果を上げ、中国を無敵の勝者にするかのように見えるが、光と影が共存している。
中国国内では、資源が集中的に投入される先端技術の目覚ましい発展と、経済の停滞という「K字型二極化」がますます深刻化している。中国には、約4億人の中産階級と、1日10ドル未満で生活する約10億人が同時に存在する。いくら努力してもこれ以上利益が増えない過度な競争を意味する「内巻(ネイジュアン)」が日常語となった。技術的には急速に発展しているが、過度な競争により収益が低下し、重複投資が深刻化している。仕事が見つからない若者たちが、何もしないという意味の「タンピン(躺平)」で消極的な抵抗と不満を表現していることに対し、最近、中国の情報機関である国家安全部は、「外国勢力がタンピンを煽り、中国青年の精神を腐食させようとしている」とする広報動画を公開した。若者の不満が爆発することを警戒しつつも、分配や福祉を改善するよりは「外勢のせい」に転嫁したのだ。
国際的には、中国製の高コスパ製品の「過剰生産」が問題だ。政府の各種補助金や政策的支援により雨後の筍のように生まれた先端技術企業は、熾烈な競争を経て海外市場への進出に乗り出している。韓国、日本、ドイツ、フランスなどの主な製造業国は、ますます中国製ハイテク製品の価格競争力に押されている。東南アジアや中東、アフリカ、南米でも、中国製のコストパフォーマンスに優れた製品が席巻している。「トランプ関税」の逆風にもかかわらず、中国の貿易黒字は昨年1兆ドルを突破し、今年も増え続けている。世界各国が中国の過剰生産問題を指摘し、貿易障壁を高めようとしているが、中国は自国製品の競争力が強いだけなのに何が問題なのかと反論する。
しかし、「製造業を有する米国になる」という戦略の過度な成功は、逆説的に「中国が無限に作り出す製品を誰が買うのか」という問いへとつながる。中国の先端製造業が他国の市場と雇用を蝕み続ける状況に対する共存の解決策が必要だ。チ研究委員は、「『中堅国連帯』は、米国の単独主義への対応だけでなく、製造業と貿易の公正な秩序を強調する声を上げなければならない」とし、「韓国、ドイツ、日本をはじめとする製造業基盤を持つ中堅国が力を合わせることで、中国の過剰生産や補助金などに問題提起し、新たなルールを作ることができる」と指摘する。
習近平時代の中国は、国家主導で富国強兵に向け、破竹の勢いで突き進んでいる。先端製造業は強力な軍事力へとつながる。「戦って勝つ軍隊」の構築と「製造業を有する米国になること」は、富国強兵に向けた習近平主席の核心戦略だ。だが、富国強兵の影に囚われた「もう一つの中国」と、中国製品に押されつつある他国々の懸念や不安も高まっている。20世紀初頭、帝国主義列強が産業生産力を基盤に軍事力競争を繰り広げ、結局は限られた資源と市場を巡って衝突し、世界大戦へと向かった歴史の教訓を改めて振り返らなければならない。
2026/05/05 19:33
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/56132.html