【時視各角】李在明政権、過去と別れる時が来た

投稿者: | 2026年7月10日

日本経済新聞が数日前、メモリー半導体での韓国の独走が米国との通商摩擦を招くかもしれないという記事を掲載した。単なる誇張した推測とは言い切れない。日本としてはすでに経験済みだからだ。かつて世界の半導体市場の80%を支配していた日本は1986年の米日半導体協定で失速した。半導体の覇権を維持しようとする米国から生産コストの開示や低価格攻勢の中止といった圧力を受け、最終的に屈して競争力を失った。それが韓国や台湾の半導体が成功する契機となった。

流れが尋常ではない。サムスン電子は4-6月期に89兆ウォン(約9兆5600億円)を超える営業利益を出し、世界トップに立った。今年の半導体利益は、サムスンが半導体事業を展開してきた過去40年間の累積利益を上回るという見方も出ている。サムスンとSKハイニックスのメモリー市場シェアは約60%に達する。

 我々は人工知能(AI)革命による半導体チップ不足を「AI特需」として喜んでいるが、米国のビッグテック企業にとっては大打撃であるはずだ。彼らはチップ不足で価格が高騰すれば収益性が低下する。米国経済全体にインフレをもたらす火種となる。このためアップルが中国半導体企業の長鑫存儲技術(CXMT)のメモリーチップ購入を容認するよう米政府にロビー活動までするほどだ。チップ価格の暴騰を「100年ぶりの洪水」(ティム・クック最高経営責任者)と表現したアップルは結局、MacBookとiPadの価格を大幅に引き上げた。

湖南(ホナム、全羅道)地域に半導体ファブ(fab、工場)4基を構築するという李在明(イ・ジェミョン)政権の「湖南半導体プロジェクト」は、そのAI特需を逃さないという決意を前面に出している。しかし相手は米国、中国、日本だ。政府が前面に立つ国家的イベントよりも、企業を後ろから全力で支援する構図のほうが実利的だったはずだ。

湖南半導体は時間との戦いだ。AIサイクルが下降に転じる前にファブを完工し、市場支配力を固めることがカギとなる。半導体ファブには『人・水・電・地』が必要だ。政府が最近、湖南半導体クラスターを光州(クァンジュ)軍空港の敷地に造成することにしたのは「地」に該当する。難易度でいえば最も容易な部分だ。

次は電力と産業用水、そして人材をどう調達するのか政府が答えなければいけない。湖南半導体ファブだけでも大型原発(1.4GW)4.5基分に相当する電力が必要と試算されている。ここに原発ほど効率的な方法はない。クリーンな産業用水はどうやって供給するのか。結局のところ4大河川整備やダム建設に反対する声を乗り越えなければならない。優秀な人材を誘致するための教育や医療といった定住条件も極めて重要だ。同時に労働市場の規制を緩和する必要がある。工場の建設を急ごうと言いながら、週52時間勤務制や黄色い封筒法(労働組合及び労働関係調整法改正案)に縛りつけるわけにはいかない。

実際、脱原発やダム建設反対を民主党のアイデンティティと言うのは難しい。原発は、民主党が輩出した金大中(キム・デジュン)大統領や盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の時代にも活発に推進されていた。金大中政権下では月城(ウォルソン)3・4号機をはじめ原発6基が完工し、ハンウル5・6号機など2基が新たに着工された。盧武鉉政権では慶州(キョンジュ)の放射性廃棄物処分場が選定され、新古里(シンゴリ)1・2・3号機など5基が着工された。両政権では竜潭(ヨンダム)ダムや長興(チャンフン)ダムといった大型の多目的ダムも複数建設されている。労働政策も今のように労働組合寄りではなかった。IMF(国際通貨基金)危機の影響が大きかったとはいえ金大中政権下では整理解雇も導入された。

李大統領はあらゆる手段を動員して企業を支援するという。その言葉が本心であるなら、科学と常識の軌道を逸脱していた脱原発、ダム反対、労組寄りといったポピュリズムの基調と決別することしか方法はない。それこそが湖南半導体プロジェクトを成功させるための必須要素だ。

「戦争」は、現在の半導体産業におけるグローバル競争に完全に一致する表現だ。現政権は「湖南半導体」を秘蔵の武器に選択した。世間にはこの唐突で驚きの決定の動機が、特定の党代表候補を支援するためではないかとの疑念もある。それは別として、湖南半導体が成功するための旅程で原発とダムが拡充され、労働市場の改革が実現するのであれば、ひょっとすると本当に国運が開かれることになるかもしれない。

イ・サンリョル/首席論説委員

2026/07/10 15:20
https://japanese.joins.com/JArticle/351833

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