外国人観光客の増加が、韓国の経済成長率を押し上げる牽引(けんいん)役となっている。国内の百貨店業界が過去最高の業績を更新するなど、内需にも追い風が吹いている。しかし、観光客の滞在期間が短く、支出がショッピングに偏っていることから、付加価値を高める「質的高度化」が急務だとの指摘が出ている。
5日、韓国銀行が発表した「BOKイシューノート:サービス輸出の観点から見た観光産業の成長効果と政策の方向性」によると、昨年の外国人観光客数は約1894万人と集計された。新型コロナウイルス禍前の過去最多だった2019年の1750万人を大きく上回る水準だ。世界的な観光需要の回復に加え、ウォン安や「Kカルチャー」への関心の高まりが相まった結果だ。今年1-3月期の外国人観光客数も約476万人となり、四半期ベースで過去最多を記録している。
こうした好影響は、サービス業や流通の現場に最も早く表れている。5日、現代百貨店は、今年4-6月期の百貨店部門の売上高が6438億ウォン(約713億円)となり、4-6月期として過去最高を記録したと発表した。営業利益も1101億ウォンとなり、前年同期比58.6%増加した。ザ・現代ソウルと貿易センター店では、外国人による売上比率がすでに20%近くに達している。
近く決算発表を控えるロッテ百貨店と新世界百貨店も好業績が見込まれている。流通業界や証券業界では、百貨店大手3社の今年の外国人観光客向け売上高の合計が3兆ウォンを超えるとみている。ウォン安による価格競争力に加え、Kカルチャーのポップアップストアなど、特色あるコンテンツが後押ししたためだ。
仁荷(インハ)大学消費者学科のイ・ウンヒ教授は、「百貨店はKカルチャーとラグジュアリーのイメージを組み合わせながら商品ラインアップを継続的に充実させてきたため、為替相場が変動しても、当面は好調が続くとみられる」と説明した。
韓国銀行の研究チームによると、訪韓需要が本格的に回復した2022~2025年、観光輸出が経済成長に寄与した効果は年間0.15ポイントと集計された。2000年以降の長期平均(年間0.04ポイント)を大きく上回る水準だ。
一方で、構造的な限界もある。昨年の外国人観光客数は新型コロナ禍前と比べて8.2%増加したものの、実際の観光輸出額(国際収支ベースの一般旅行収入)は5.5%の増加にとどまった。中国人団体観光客が減少し、滞在時間の短いクルーズ観光客が増えたことで、1人当たりの支出額が減少したためだ。
韓国の観光産業が生み出す直接的な付加価値は、2024年時点で名目国内総生産(GDP)の1.7%にとどまり、OECD平均(3.6%)の半分にも満たない。外国人観光客の支出の43.3%がショッピングに集中している一方、付加価値を生み出す効果の高い医療(5.8%)や文化・娯楽(3.3%)への支出割合は低い。また、訪問先がソウルと首都圏に集中していることも、観光産業の成長の足かせとなっている。
専門家らは、観光政策のパラダイムを、単純な誘致人数から「1人当たりの支出額と滞在期間の拡大」へ転換すべきだと口をそろえる。実際、日本は2003年から観光を戦略産業として育成し、昨年は観光輸出の対GDP比を1.46%まで引き上げた。韓国(1.17%)を上回る水準だ。日本は地方への分散や滞在の質の向上、高付加価値コンテンツの発掘に力を入れている。
日本の水準に追いつくためには、①現在より訪韓客数を481万人増やす ②1人1日当たりの支出額を約45ドル引き上げる ③平均滞在日数を1.7日延ばす–のいずれかが必要となる。ただし、研究チームは、一つの要素だけを大幅に伸ばすよりも、複数の政策要因を少しずつ改善する方が効果的だと分析している。
韓国銀行調査局のチョン・ソニョン・アジア太平洋経済チーム長は、「宿泊施設や飲食店など既存業種でもプレミアム商品を開発するなど、選択肢を広げるとともに、観光輸出の成果指標を具体化するなど、観光産業の質的高度化が必要だ」と強調した。
2026/08/06 06:47
https://japanese.joins.com/JArticle/353095