米国は「信じてついてきてほしい」と訴えるが… 【寄稿】

投稿者: | 2026年8月17日

 コルビー米国防次官(政策担当)は8月10日、フィリピン・マニラのシンクタンクで行った演説で、次のように述べた。「我々はアジアを最優先に考えている」 「米国はアジアから手を引いているのではなく、むしろその逆だ」「米国の不変の目標は、インド太平洋地域で有利なパワー・バランスを維持すること」であり、「そのために第一列島線に沿って、拒否に基づく抑止態勢を維持しなければならない」。事実上、中国の西太平洋進出を抑止するという従来の戦略を再確認したのだ。

 また、米国を信頼できないパートナーと見なすのは大きな間違いだと指摘し、トランプ政権が常識に基づいた柔軟な現実主義を展開している以上、米国の安全保障支援を当然のことと見なしてはならず、域内の同盟国やパートナー国も共同防衛のために相応の分担をすべきだとしている。特に「米国抜きの中堅国同盟」という議論を「空想的で無益な試み」としたうえで、「真の抑止力は、実際に配備されたハードパワーと、それを使用する政治的意志から生まれる」とし、米国だけがそれを実現できる唯一の国家だと断言した。

 一方、8月5日にネブラスカ州オマハ市で開催された米戦略軍主催の「抑止シンポジウム」の非公開懇談会で、コルビー次官は米国の核戦略に関連し、次の3点を強調したという。第一に、通常戦争が核兵器の使用へと拡大する恐れのある地域戦争は、米国本土に対する大規模攻撃よりも懸念すべきだ。第二に、これに関連して、低威力の戦術核兵器の使用が、一つの合理的な核の選択肢となり得る。最後に、米国の最高指導部がこうした核兵器使用指針を検討している。これに対し、米国が中国を標的とした戦術核兵器を韓国や日本に前線配備しようとしているという見通しも示されている。

 コルビー次官のこうしたメッセージは、「インド太平洋地域の防衛は米国の最優先課題であり、これに対する米国の能力、意図、意志を疑ってはならない」という警告のようにも聞こえる。ところが、いくつかの疑念を拭い去ることは難しい。米国が圧倒的な経済力と軍事力を持っていることは認める。だが、それを賢明に活用しているようには見えない。ハーバード大学のスティーブン・ウォルト教授は最近、「フォーリン・ポリシー」への寄稿で、第二次世界大戦後、米国が関与して完全に勝利した戦争は1991年の第一次湾岸戦争だけで、朝鮮戦争では引き分け、残りの戦争ではすべて敗北したという分析を示した。国力、戦闘力、軍の士気の問題ではなく、「誤った目標のための誤った戦争」(wrong war for wrong objectives)が原因だったと指摘する。そのような前歴を持つ米国を信頼できるのだろうか。

 イランとの戦争がこれを如実に示している。戦争の大義名分も実利も明確ではなく、湾岸地域の現状を維持・改善するどころか、悪化させる結果をもたらした。米国に同調した域内のアラブ諸国に対する付随的な被害は甚大であり、日ごとに戦略的決定が覆る米国のリーダーシップに対する懸念は一層深まった。その深刻さ故に、米国に全的に依存していたサウジアラビアでさえ、トルコやパキスタンとスンニ派軍事同盟を結んだほどだ。おそらくアジア太平洋地域の諸国も、こうした悩みから抜け出すのは難しいだろう。

 コルビー次官の訴えが効果を発揮するためには、米国と域内諸国の間で脅威に対する認識を共有することが不可欠だ。日本やフィリピンの場合、中国に対する脅威の認識を米国と共有できるが、韓国やその他のASEAN諸国は事情が異なる。韓国の第一の脅威は北朝鮮だ。一方、米国にとっては中国が脅威だ。米国が北東アジア司令部を新設し、在韓米軍をその傘下の戦闘司令部に再編すると同時に、中国を標的とした戦術核兵器を韓国に配備することを、李在明(イ・ジェミョン)政権が受け入れられるだろうか。韓国は、北東アジアに新冷戦の構図が台頭し、その対決の最前線に朝鮮半島が置かれることを望まないだろう。

 最後に、米国政府や議会が「ユン・アゲイン」や「李在明大統領打倒」を公然と主張する韓米の極右勢力を庇護し、関税、投資、クーパン問題などについて過度な外圧を加えた場合、韓国政府や市民社会は引き続き沈黙を守るだろうか。激しい逆風が吹き荒れるだろう。

 「米国は健在だから、信じてついてきてほしい。アジアは米国の最優先地域だ」というコルビー次官のメッセージが伝える意味はよくわかる。だが、域内の同盟国が米国を当然のこととして扱ってはならないのと同様に、米国もこれらの国々を当然のこととして扱ってはならない。信頼性の確かな担保が求められる。さらに、抑止や勢力均衡だけでは、この地域の平和と安定は保証されない。緊張を緩和し、信頼を構築すると同時に、戦争を未然に防ぐ「予防外交」のリーダーシップを示すべきだろう。それこそが、米国がかつて享受した栄光を取り戻す道だ。

2026/08/16 18:24
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/56931.html

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