韓国外相の現実論と統一部長官のあがき【コラム】

投稿者: | 2026年8月22日

 「千里駒」というあだ名で韓国報道機関に大きな足跡を残した「記者」金東成(キム・ドンソン、1890~1969)が、1921年11月に始まったワシントン軍縮会議を取材して帰国したのは翌年1月のことだった。このころになると、3・1運動で急速に高まった「大韓独立」に対する期待は一段と弱まり、民族全体が「巨大な絶望」に陥ることになる。「外交がわれわれを救ってくれるのではないか」という希望は、第1次世界大戦を終わらせるベルサイユ講和会議の虚しい結末で事実上消滅し、武装闘争に対する期待も同様に、独立軍が武装解除される「自由市惨変」(1921)を経て、打ち砕かれてしまった。最後に残された変数は、太平洋の覇権をめぐり米国と日本が全面衝突する可能性だった。しかし、日本はワシントンで米国の優位を受け入れる巧みな妥協を選ぶことになる。

 ワシントンでこの光景を目撃して帰国した金東成は、何を考えたのだろうか。総督府京城地方法院検事局が作成した文書「大正11年(1922年)朝鮮治安状況」に、彼が周囲に伝えた話が簡潔に整理されている。「会議ノ目的ハ日、米、英三大国ノ衝突ヲ避ケ(中略)ニ在リテ弱小民族ノ如キハ其ノ内容ニアラサリシコトヲ推察スルニ難カラス(中略)朝鮮独立問題ノ如キ日本ノ諒解ヲ得ルニアラサレハ到底不可能ナルヲ感知セリ(中略)朝鮮独立ノ如キハ当分絶望」。状況がそうならば、これからどうすべきなのか。この苦悩と残酷な問いを前に、きわめて現実主義的な考え方をした人物は、「東亜日報」社長であり3・1運動で獄中生活の苦しみを経験した民族の指導者、宋鎮禹(ソン・ジヌ)だった。『朝鮮及満洲』という名の日本語雑誌の1928年2月号に、彼のインタビューの一部が掲載されている。宋鎮禹は「朝鮮独立はそもそも希望しない者はいないが、希望するとしても、(すぐに)実現されるものではない。(中略)実体論(現実論)として、現総督政治下で実現可能なわれわれ朝鮮人の理想に近い政治を行うよう望む」と述べた。宋鎮禹が言う「理想に近い政治」とは、「朝鮮に『朝鮮議会』を設置し、朝鮮の予算はもちろん、朝鮮の政治を朝鮮人が議論」できるようにしてほしいという「自治論」だった。宋鎮禹にとっては、苦心の末に到達した結論だったが、植民地支配の受け入れを前提とするこの構想は、どれほど恥ずべきものだったのだろうか。1922年の朝鮮人が「日本の植民地支配が永続化するかもしれない」という恐怖に苦悶していたとすれば、2026年の韓国人は「敵対的2国家を掲げる北朝鮮による核の脅威が永続化する可能性がある」という絶望感に陥っている。進歩派が30年あまり推進してきた「太陽政策」は失敗に終わり、保守派が強く敬っていた韓米同盟も同様に大きく揺らいでいる。そうしたなか、北朝鮮は2月末の第9次党大会を通じて「韓国を同族の範疇から永遠に排除」すると宣言すると同時に、「韓国の完全崩壊の可能性は排除できない」として、頻繁に核の脅しを繰り返している。

 この窒息しそうな状況を抜け出す解決策は何か。チョン・ドンヨン統一部長官は5日の業務報告で、今年下半期の中心課題として、朝米首脳会談に向けた働きかけと、韓国・北朝鮮・米国・中国による4者対話を進める原動力の確保を提示した。すると、チョ・ヒョン外交部長官は、この構想について「理想主義に基づく希望」だとけなした。実際の外交上の困難を考えれば、チョ外交部長官の現実論に心が傾くのは事実だ。しかし、チョン統一部長官の必死のあがきは、北朝鮮を通じてイランの失敗を挽回しようとするトランプ大統領の気まぐれと相まって、妙な流れを生み出している。もちろん、楽観は禁物だ。これから賢明な外交を進めることができなければ、われわれが望む「平和」の代わりに、「北朝鮮核保有の公式認定」という断崖絶壁へと転落する恐れもある。

 宋鎮禹が自治論を主張する洗練されたインタビューをしてから4年後の1932年4月29日、23歳の青年、尹奉吉(ユン・ボンギル)が上海の虹口公園で敵に爆弾を投げた。この「あきれた」(!)あがきは、中国の指導者だった蒋介石の心に小さな波紋を呼んだ。蒋介石はこの日の日記に「今日、虹口新華園で倭寇の重要な役人たち全員が重傷を負う」という短い記録を残した。その後、大韓民国臨時政府に関心を持つことになる蒋介石は1943年11月23日夜、カイロで会談した米国のルーズベルト大統領に「朝鮮の独立」を主張した。連合国が朝鮮独立を公式に約束する「カイロ宣言」のあの涙ぐましい文言が登場する瞬間だった。歴史は緻密な現実論だけでは動かない、巨大なミステリーだ。巨大なリスクを背負い、何かのために必死にあがき続けなければ、結局のところ、成し遂げられるものは何もない。

2026/08/20 19:03
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/56986.html

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