スーツケースに隠して持ち込んだ7万ウォンの「スシジャロ」…今年だけで密輸摘発5000件

投稿者: | 2026年9月30日

 会社員のパクさん(37)は、秋夕(チュソク=中秋節、今年は9月25日)連休最終日の27日夜、体重計に乗った。パクさんは昨年12月からダイエット目的での使用が広がる糖尿病治療薬「マンジャロ」の注射を受け、90キロあった体重を連休直前には77キロまで減らしていた。ところが連休中、ずっと脂っこい名節(秋夕や旧正月)料理を食べ、顔に肉がつき、お腹が張るのを感じていたところ、秋夕を過ぎた後には体重が80キロに増えていた。

 パクさんはすぐに翌月の日本行き航空券を予約した。マンジャロを入手するためだ。1カ月分のマンジャロ2.5ミリグラムの価格は、韓国では30万ウォン(約3万4600円)前後だ。しかしパクさんは以前、日本で7万ウォン台で購入したという。パクさんは「昨年から日本で3カ月分ずつマンジャロを購入してきた」と話した。

 パクさんのように日本から持ち込まれるマンジャロは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やオンライン・コミュニティーで「スシジャロ」と呼ばれている。日本旅行の際にマンジャロを購入してくる人が増えたことで生まれた新語だ。だが、日本の医療機関で正式に処方を受けたとしても、韓国食品医薬品安全処の承認なしにマンジャロを韓国に持ち込むことは認められていない。食品医薬品安全処は医療用医薬品であるマンジャロを、誤用・乱用の恐れがある医薬品として管理している。食品医薬品安全処の承認なしにマンジャロを持ち込む行為は、関税法上の密輸入罪に当たり、5年以下の懲役または罰金刑に処される可能性がある。

 それにもかかわらず、海外からマンジャロなどの医薬品を持ち込もうとして摘発されるケースが、今年に入って急増している。関税庁によると、今年1-8月にダイエット目的での使用が広がる糖尿病治療薬の密輸が摘発された件数は5030件で、8カ月で昨年1年間の摘発件数(1189件)の4倍を超えた。

 処罰のリスクを冒してまでマンジャロなどを密搬入する理由は、価格差にある。韓国でマンジャロは健康保険が適用されない非給付医薬品のため、患者が費用全額を負担する。一方、日本ではマンジャロが糖尿病治療薬に分類され、政府が定めた薬価を基準に流通している。このため、韓国で販売されているマンジャロと成分が同じ、いわゆるスシジャロは、韓国のマンジャロ価格の3分の1にも満たない。

 一般の人がスシジャロを入手することも難しくない。韓国を出国する前に、非対面でマンジャロを処方する日本の医療機関でオンライン診療を受けられるためだ。あらかじめ処方を受けておき、日本に到着した後、ホテルなどの宿泊先にマンジャロを配送してもらうこともできる。

 SNSやオンライン・コミュニティーでは「スシジャロの税関取り締まりを避ける方法」や「密輸成功体験談」がシェアされている。税関検査の抜け穴を狙ってマンジャロを持ち込む、さまざまな「小技」も紹介されている。「X線検査を受ける預け荷物ではなく、機内持ち込みの個人用リュックにマンジャロを隠して持ち込め」とか、「100ミリリットルの液体物規定に引っ掛からないよう保冷パックの容量を管理しなければならない」といった内容だ。

 スシジャロを韓国国内に持ち込もうとして摘発されても、実際に刑事処罰にまで至るケースは多くないことも、密輸を助長していると指摘する声が上がっている。関税法上の密輸入罪は通常、事業者を対象としており、個人に適用するのは容易ではない。個人に密輸入罪を適用するには、常習的または故意に密輸したことを立証しなければならない。関税庁の関係者は「マンジャロの密輸を摘発しても、当事者が『申告が必要だとは知らなかった』と主張した場合、現場で廃棄処分するにとどまる」と話している。マンジャロは医薬品のため、食品医薬品安全処の承認を受けずに海外から持ち込んだ場合、薬事法に基づく処罰対象になり得る。しかし、これも販売目的で搬入した場合に適用されるもので、自ら投与する目的で持ち込んだ場合には、薬事法で処罰するのは難しいという。

 医療業界では、マンジャロを韓国国内に持ち込む過程で成分が変質する可能性があると指摘する。マンジャロは摂氏2-8度で冷蔵保管しなければならないペプチド(タンパク質)注射剤だ。旅行かばんなどに入れ、長時間にわたり適正温度を外れた状態で運搬すると、タンパク質が変性して薬効が低下したり、免疫異常反応を引き起こしたりする可能性があるという。

 数カ月分の薬を一度に購入して投与することも問題だ。ソウル大学医学部内科のクァク・スホン教授は「マンジャロは医療用医薬品である以上、定期的に病院を訪れ、投与の経過をチェックしなければならない」とした上で、「医師の管理なしに大量購入した薬剤を任意に投与した場合、膵炎や低血糖ショックなどの副作用が生じる恐れがある」と話している。江北サムスン病院家庭医学科のカン・ジェホン教授は「韓国も国民の健康のために、必要であればマンジャロに保険を適用し、価格を引き下げる必要がある」と語った。

2026/09/30 12:06
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2026/09/30/2026093080074.html

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