[社説]「足元に火」ついた韓国外交、トランプの衝撃に備えよ

投稿者: | 2024年7月2日

 米国の大統領選挙の第1回目のテレビ討論会はジョー・バイデン大統領の「惨敗」だとの評価があふれていることで、米国と日本との関係の強化だけに「全賭け」してきた尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の足元に火がついている。まだ11月に行われる米大統領選挙の結果が決まったわけではないが、直立していた勝負の軸が傾きはじめたのは確かなようにみえる。政府はドナルド・トランプ前大統領の返り咲きが朝鮮半島に与える巨大な衝撃に備えるために、今からでもすべての力量を総動員すべきだ。

 今年81歳のバイデンは先月27日の討論会で、自分より4歳年下のトランプを相手に、若干ではあるがしどろもどろする姿をさらした。公開の場であらわになった米国大統領の「老衰」には、全世界が驚かされた。ニューヨーク・タイムズは翌日の28日、バイデンは「国のために大統領選挙レースを降りるべきだ」と苦言を呈した。CBSは30日、バイデン不出馬世論は72%にのぼることを明らかにした。バイデンは辞退要求を一蹴したが、代わりの候補を探すべきだとの声は絶えない。

 バイデン大統領は就任直後から、権威主義国家と対立する民主主義国家同士の連帯を強調してきた。尹大統領はこの基調に従って「価値観外交」を前面に掲げ、昨年8月のキャンプデービッドでの首脳会議で韓米日三角同盟への第一歩を踏み出した。

 対してトランプは、「米国第一主義」を基盤としてウクライナ戦争の早期終結、中国に60%の普遍関税を課すことなどを主張している。政権に返り咲けば在韓米軍の撤退または削減、同盟国に犠牲を強要する経済・貿易政策などを打ち出すとみられる。このような構想が現実のものとなれば、米国の指導力は大きく動揺すると同時に、韓米同盟の強化などの、尹大統領が「外交的成果」だとして掲げてきたすべてが水の泡になってしまう。米国の支持ばかりを信じて相手陣営(朝中ロ)に突進して孤立を招く歩兵のような状況に追い込まれることになる。

 米国戦略国際問題研究所(CSIS)のビクター・チャ韓国部長は先月26日の「フォーリン・アフェアーズ」への寄稿で、「米国のアジアのパートナーは、トランプを十分に警戒していない」と述べつつ、最も根本的な変化が起こりうる地域として朝鮮半島をあげた。武力衝突の可能性だ。同氏は、トランプの再登場によって韓国で独自の核武装計画が始動すれば、先んじてこれを制圧したいという朝中の思惑が強まると指摘している。今は「国難」という表現を使っても不十分な状況だ。政府は性急な動きを止め、実質的な国益の観点に立って冷徹に備えるべきだ。

2024/07/01 18:05
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/50470.html

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