対北朝鮮情報機関の国軍情報司令部に所属する秘密エージェントの身元などを個人のノートパソコンで流出させた疑いが持たれている情報司所属の軍務員(軍属)について、軍検察が29日に拘束令状を請求したという。この軍務員は、海外で身分を偽装して活動する「ブラック要員」や、情報司全体の部隊員現況などを収めた機密ファイルを外部に漏らしたことが分かった。ブラック要員は、身元が明らかになってしまうと命の危険もあり得る。
情報エージェントのリストは世界の情報機関が最も隠密に扱う極めて特別な機密事項だ。これ以上の情報はない、と言っても過言ではない。流出したら情報システム全体が崩壊するからだ。エージェントの家族の安全まで脅かされかねない。韓国側に協力してくれる情報員も無事でいるのは難しい。だから情報機関の内部でもごく少数の人間のみ、それも自分が担当する分野に限って情報エージェントのリストにアクセスできるのが常識だ。情報司は、電算網が外部と切り離されていて、そもそもハッキングができない。ところが、情報司軍務員のノートパソコンに情報エージェントのリストが入っていた。世界の情報機関が聞いたら絶句するだろう。
2018年に情報司の工作班長が、軍事機密およそ100件を携帯電話で撮り、流出させた疑いで拘束・起訴された。機密は中国・日本の情報エージェントに渡った。ここには、中国で活動していた情報司秘密エージェント5人の身元情報も含まれており、エージェントらは急いで帰国しなければならなかった。ところが、同僚の命が懸かった軍事機密を渡して受け取った代価は、1件につき100万ウォン(現在のレートで約11万1000円)前後だという。こうした反逆の罪が5年続いたにもかかわらず、情報司は、国家情報院が通報するまで知らなかった。当時起訴された工作班長は、懲役4年を言い渡されて服役した後、今では出所したという。同僚の命を売り渡して国家情報網を丸ごと揺るがした反逆犯の刑が、たかだか懲役4年だった。
米国では05年に、中央情報局(CIA)の秘密エージェント1人の名前を漏らしたという理由で当時の副大統領の首席補佐官が起訴され、後に重い刑を言い渡された。身元が発覚したエージェントは07年に連邦議会下院の聴聞会で「国のために20年間、任務を忠実に果たしてきた身分を政府が保護できないのであれば、この先誰がCIAで働くだろうか」と語った。今、身元が発覚して急いで帰国する情報司のエージェントが言いたい言葉だろう。
2024/07/30 14:00
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