旧日本軍の慰安婦被害者を支援する施設「ナヌムの家」(京畿道広州市)の後援者が寄付金の返還を求めて同施設を相手取って起こした起こした訴訟で、「施設側は後援者に寄付金を返還すべき」との韓国大法院(最高裁判所に相当)判決が示された。
大法院はこの訴訟で、原告のイさんが敗訴した原審判決を破棄し、審理をソウル中央地裁に差し戻した。
大法院は「被告(ナヌムの家)が提示し、原告(後援者のイさん)が認識していた後援契約の目的と、後援金の実際の使用状況との間に、錯誤と言えるだけの不一致が存在する」として「原告が錯誤していなければ、後援契約は締結されなかったはずだ」と指摘した。
錯誤による意思表示を規定した民法109条は「意思表示は、法律行為の内容の重要部分に錯誤がある場合には取り消すことができる」と定めている。
大法院は「原告は、被告による後援案内に基づいて寄付金が慰安婦被害者に関する活動に使われてきて、現在もそのように使われ、将来もそうだろうと認識していたとみられる」として「後援契約の目的は、契約内容の重要部分に該当する」と指摘した。
さらに「寄付金のほとんどが、特定の建物の建設のために法人側に留保されているというのは、後援当時に被告が自ら明示した後援目的と、これに基づいて原告(後援者)が抱いた認識と一致しない」として、後援契約を取り消すよう命じる判決を下した。
後援契約が取り消されたため、ナヌムの家はイさんに寄付金を返還しなければならない。イさんは2017年8月から20年4月にかけて「慰安婦被害者の生活・福祉・証言活動などの後援」という目的で、ナヌムの家の後援口座に5万ウォン(約5500円)ずつ、計31回にわたり寄付金を振り込んだ。
ナヌムの家を巡っては、20年5月に職員らが「寄付金が慰安婦被害者のために使われていない」と内部告発し、論議を呼んだ。
ナヌムの家は巨額の寄付金を、今後の養老事業に使うために法人の留保金として蓄え、慰安婦被害者たちは自費で医療費を負担するなど十分な支援を受けられていなかったことが分かった。
後援者らは「慰安婦のおばあさんのための寄付金および後援金返還訴訟対策の会」を結成し、20年6-8月に2回にわたり、約9000万ウォン(約990万円)の返還を求める訴訟を起こした。
イさんが起こした訴訟には当初、23人が参加していたが、一審・二審でいずれも敗訴したため、イさんだけが上告審の裁判を続けていた。
リュ・ビョンス記者
2024/08/02 13:00
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