現代自動車の62歳まで再雇用が投げかける問い[コラム]

投稿者: | 2024年8月5日

 私たちは何歳まで働かなければならないのか。あるいは何歳まで働けるのか。

 このかん裁判所は、労働者がどれほど長く働けるかを判例によって定めてきた。事故で死亡したり負傷したりした被害者の将来得たであろう所得を算定しなければならなかったからだ。2015年にウォーターパークで水遊び中に死亡したA君の家族は、業務上注意義務違反を理由として、運営者に損害賠償を請求する訴訟を起こした。一審と控訴審は、4歳で死亡したA君が軍服務を終えてから60歳になるまで、都市の日雇い労働の賃金を受け取ると仮定した。しかし2019年、最高裁はA君が働きえた年齢を65歳へと上方修正した。平均余命の伸び、実質的な退職年齢、高齢者の就業者の割合などが考慮された。1989年に最高裁が肉体労働の稼動年限をそれまでの55歳から60歳に引き上げてから、30年ぶりの変更だった。判例が直ちに職場の定年年齢へとつながるわけではない。法廷の外では、議論はさらに複雑になる。

 最近、現代自動車の「熟練労働者の再雇用」の拡大が産業界内外で大きな関心を呼んだ。現代自動車は2019年に労使が合意し、60歳で定年を迎えた際に本人が希望すれば、嘱託契約職としてさらに1年働けるようにしている。7月中旬に終わった賃金交渉で、さらに1年伸ばして62歳まで働けるようにしたのだ。毎年2千人以上の技術職(生産職)などが定年を迎えているが、1964年以降に生まれた労働者は、退職後も最長2年間の再雇用が可能となった。その代わり、賃金は新入社員の水準にまで減らされる。

 今回の合意は高齢人材の活用の新たな「実験」だと認識されているが、実状は定年延長をめぐる労使間の綱引きの中で打ち出された「一時しのぎ」に近い。ここ数年、定年延長は団交における労組の最重要要求事項の一つだった。2016年に60歳定年が法的に保障されてからそれほどたっていないのに、改めて定年延長要求が高まっているのは、国民年金の受給年齢と一致していないからだ。国民年金の受給開始年齢は60歳から徐々に引き上げられている。1969年以降に生まれた人は受給開始が65歳となるため、最大で5年間の所得の絶壁が生じる。定年延長要求はこのような脈絡から打ち出されたものだが、会社側は人件費が負担となることを理由として反対してきた。そこで、労使の利害をある程度満たす妥協案として登場したのが再雇用だ。

 再雇用は、短期的な解決策にはなり得たとしても、突き詰めればいつかは毒になるかもしれない。早くから65歳までの雇用保障を強制してきた日本でも、ほとんどの企業の選択は契約職としての再雇用だった。企業に定年延長、定年廃止、継続雇用(再雇用や勤務延長など)の中から一つを選択させるというものだが、人件費の負担の軽い方式が好まれてきたからだ。日本では結果的に「契約職が好まれたことによって、高齢者の労働条件の悪化と労働意欲の低下を招いた」という問題が、新たな課題となっているという(国会立法調査処)。すでに高齢の労働者の臨時職の割合が他国に比べて圧倒的に高い韓国が肝に銘じるべき問題だ。

 政府も近ごろ「継続雇用ロードマップ」を策定するとして後押ししているが、大企業の垣根の外の代案にはなりにくいという限界も抱えている。当面は現代自動車のような各大企業単位で限定的に導入される可能性が高い。実際にKTやクラウン製菓などが定年後の再雇用制度を導入しており、この問題について議論を進めているのもすべて規模の大きな企業だ。

 一方、55~64歳の就業者全体に広げると、明文化された定年も守られていない人々の方が多い。最も長く勤めた職場を辞めた人の退職時の平均年齢は、わずか49.4歳だ(2024年5月の統計庁の高齢層付加調査による)。辞めた理由を「定年退職」とした人の割合は9.3%に過ぎない。大半は会社の経営が厳しくなり、廃業したり人員が減らされたりしたことで非自発的に押し出されたケースだ。主な稼ぎ先を失うのが早ければ早いほど、深刻な賃金減少がついて回る。これこそ、「定年退職者の所得の空白が定年前の早期退職者の貧困リスクより急を要する問題だと見なすことは困難」だと指摘(KDIのハン・ヨセフ研究委員)される背景だ。

 改めて問う。私たちは何歳まで働きたいのか。55~79歳の高齢層に聞いたところ、平均で実に73.3歳だった。1年前の調査より上がったという。すでに彼らの雇用率は60%に迫っているが、より長く働きたいというのだ。公的年金の歴史が浅いため老後の所得が貧弱だということとも無関係ではない。定年延長に向けた議論は、このように高次方程式を解くような難しい課題だ。生涯の主な雇用にできる限り長くとどまらせる政策から、もう少し精巧なものへと踏み出すべきだ。

2024/07/30 20:04
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/50750.html

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