--ごく少数だけが楽しめるものではないのか。
「そうではない。パリ・オペラ座の天井を見たことがあるだろうか。シャガールの美しい絵で装飾されている。誰も買えない作品であり、我々みんなのものだ。『カルティエコレクション』で世界各地で展示会を開くのも同じ脈絡だ。ハイジュエリーはそのような意味でラグジュアリーの逆説を見せる。できるだけ多くの人たちが展示場を訪れ、芸術品として楽しむことを望む」
--今回の展示は2019年に東京で初めて開かれた後、ソウルを訪れた。アジアを続けて選んだ理由は。
「展示が語る物質的なもののはかなさ、時の永遠性は韓国、日本、中国などアジアでより大きな響きと共感を持つと考えた。空間と時間の中での人間の存在に対する認識が深いからだ。もちろんアジア以外の地域でもいつか開催されることを望む」
--ソウルに対して抱いている特別なイメージはあるのか。
「日本で12年間暮らし、日本人と結婚した私にとって、ソウルは九州・福岡がある西側の感じがある。12回ほど韓国を訪れたが、とても古い伝統を持ちながら生活は現在に集中している都市のようだ。新しいショッピングモールと古宮が近くあり、現在と過去を行き来するようだ。特に若い層には最高の結果を見せなければいけないという圧迫と活力が共に存在しているように見える。すでに芸術分野でも韓国の青年アーティストの活躍は立派だ」
--カルティエが財団(Foundation Cartier pour l’art contemporain)を運営するほど芸術に関心を注ぐ理由は。
「一般的にラグジュアリーは文化と親密だ。アーティストが当代に根を下ろしながら均衡感を持ち、現在に集中するインスピレーションを与えるものだった。それでカルティエは現代美術が馴染まず古典美術がさらに価値あると考えられた40年前に初めて現代美術財団を設立した。今はもう芸術と科学の関連性、または環境のような同時代の問題に対する談論提起が続かなければいけない。芸術家は大衆に向かってその役割をする。それでカルティエは芸術後援政策も作った」
--カルティエの考えは芸術家の創作活動に反映されるのか。
「カルティエは芸術家そのものを尊重する。芸術家が望まないことは強要しない。創意性を発揮できるよう激励するだけだ。心を込めて作業する芸術家のおかげで概して結果がよく、作品に接する観客も驚異を感じる。今回の展示デザインのために協業した新素材研究所の杉本博司氏と榊田倫之氏もそうだ」
--今回は伝統文化研究所のオン・ジウム氏と協業したが。
「単純な素材を美しく使用できる、言い換えれば素材が持つ美しさを内外で表現する方法に対する理解が優れていると考える。韓国のデザイナーは素材に対する感覚が優れていて、一見単純に見えるが、実際には非常に精巧な結果をつくる」
2024/05/01 14:14
https://japanese.joins.com/JArticle/318129