尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権に成果が一つあるとすれば、大統領制において、大統領がその気になれば一国をどれだけ牛耳れるかを示したことだ。11月10日に任期の折り返し地点を迎える尹政権は、この2年半の間、あらゆる不正や脱法にもかかわらず、保証された任期を足場として粘り強く耐えてきた。法曹人出身でありながら、大統領は任期中に刑事不訴追と拒否権という特権を利用して、韓国国民が血と涙と汗で構築してきた民主秩序を破壊してきたが、政権の挙手機械へと転落した与党はもちろん、野党もこれといった力を発揮できていない。
大統領制がまともに成功した国は非常に少ないという常識が、改めて話題になりそうだ。ある保守メディアがパンドラの箱を開けるかのように内閣制改憲に慎重に言及したことも、理解できる気がする。そのコラムを書いた記者は、日本は自民党が民主国家では珍しく長期にわたって政権を握っているにもかかわらず、政治がそれなりに健全に保たれているのは、自民党内の派閥がけん制役を忠実に果たしているためだと主張した。
かつての軍事独裁時代の政権は、自らの権力を強化するために「内閣制は頻繁な政権交代で政局を不安定にさせるとともに、強力なリーダーシップの不在で一貫した政策の展開が難しい」という主張を広めた。その影響で、ほとんどの国民が議院内閣制に対して否定的な考えを持っていることは否めない。
しかし、筆者が日本での10年間の留学生活で感じた内閣制の長所は、思ったより多かった。議会の多数党が政権を握る構造だから、今のような少数与党国会による政局の硬直はありえない。そのうえ内閣制は、政権与党が首相をはじめとする内閣に不満を持った場合、独自に決議して首相を交替させられる。それに首相が従わなければ、議会が内閣不信任を決議できる。岸田首相の辞任も、支持率が急落したため総選挙(衆議院選挙)で不利になった自民党が岸田を降板させたのだ。これは、任期が保証されているため与党さえ無視する態度を示す大統領制の弊害を遮断しうる制度的装置だ。今回の総選挙のように過半数を占める党が現れず、連立内閣を樹立するケースであれば、首相と内閣の独断的な行動は連立解体によって政権崩壊までありうるということも、政権の独走をけん制する装置となる。政策の一貫性の問題は、大統領が変われば国政基調が根こそぎ変わるということを考慮すれば、大きな違いはないだろう。
むしろ内閣制を導入しようとする際に最大の妨害要素となるのは、国民が持っている偏見と、二大政党の意識だろう。筆者の所属する政党の党員たちと話している時、内閣制のことを切り出したら、大半がかなり否定的な姿勢を示した。これは内閣制に対する根深い偏見のせいだと思う。二大政党にとっては帝王的大統領制に対する未練を捨てるのが難しいということも問題だ。とりわけ、潜在的な大統領候補たちが将来手にすることになる権力に対する欲を捨てられるかは疑問だ。
しかし、もはや内閣制についての論議をタブー視することはできないだろう。尹大統領が本意ではないにしろ帝王的大統領制の問題を赤裸々にさらけ出した今こそ、内閣制について本格的に論議する機会ではないかと思う。民主党が試みているように、党員と国民の世論を最大限反映して首相候補が選択されるようにすれば、党利党略によってのみ選出されるという問題は解決されるだろう。どうか、あらゆる偏見を捨て、できる限り開かれた心で内閣制議論が行われることを願う。
2024/10/30 19:31
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/51493.html