任期の折り返し点(10日)を控え、国内政治的に四面楚歌状況で国民の前で初めて頭を下げた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領にとって、7日は生涯忘れることができない日になりそうだ。ところが国民向け談話のその日の早朝にあった非公開外交場面が大韓民国の今後の運命にはさらに重要とみられる。尹大統領が米国の次期大統領に決定したトランプ前大統領と初めて電話をした日であるからだ。
海外メディアによると、トランプ氏は大統領選挙の翌日にイスラエルのネタニヤフ首相をはじめ、5日間になんと約70人の外国首脳と電話をし、祝福の言葉を受けた。ところが韓国および日本の首脳との電話が特に目を引いた。日本メディアは尹大統領が7日午前7時59分から12分間、石破茂首相は午前9時30分からわずか5分間、それぞれトランプ氏と電話をしたという事実を比較した。トランプ政権1期目当時に「ブロマンス」を誇示した当時の安倍晋三首相は2016年の大統領選挙直後に20分間ほど電話をしたが、今回は韓国が電話の順序も早く時間も長かったという点に注目した。
酒豪の石破氏は安倍氏と違ってゴルフをせず、ゴルフ好きのトランプ氏と接点があまりないという指摘も受けている。故人となった安倍氏の空席を尹大統領が埋めるかもしれないという日本側の焦燥感が感じられる。トランプ氏は酒を飲まず、尹大統領が特有の親和力を生かす機会が制限されるという見方もあるが、その代わりに尹大統領が8年ぶりにゴルフの練習を再開したという報道もあり、関心を引いている。トランプ-安倍コンビのようにトランプ-尹錫悦コンビのゴルフ外交が破格的に実現するかが注目される。
電話の順序と時間がそれほど重要なのかという声があるかもしれないが、個人的な関係を行動で表出するトランプ氏の特性を考慮すれば軽視することではない。こうした観点で尹大統領は迅速な電話でトランプ氏との最初のボタンをうまく掛けたということだ。
今後が問題だ。トランプ氏は来年1月20日に就任するが、民主党から共和党への政権交代のため政権移行委員会がすぐに発足した。経済・通商および外交・安保政策などトランプ政権2期目の核心基調が整えられる政権移行期間に「尹錫悦-トランプコンビ」を強力な接着剤で結束させることが極めて重要だ。
7日の会見で外国の記者が「トランプ氏は尹大統領をあまり知らず、検事が好きでない」と質問すると、尹大統領がにやりと笑う場面があった。尹大統領はトランプ氏と近い米国側の人たちが「尹錫悦-トランプはよく合いそうだ」と話したと伝え、自信を表した。しかし核で武装した北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長をどう扱うか、文在寅(ムン・ジェイン)政権の対北朝鮮戦略失敗をどう反面教師にするかなどを熟考する尹錫悦-トランプのブロマンスとホットラインを構築する行動が言葉よりも重要だ。
張虎鎮(チャン・ホジン)大統領室外交・安保特別補佐官がトランプ氏への特使として挙がっているが、尹大統領が15、16日にペルーで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に行き来する途中にトランプ氏を訪問したり、年内に別途の日程を用意したりするのはどうだろうか。
尹大統領が近く退くバイデン大統領や落選したハリス副大統領を意識する暇があるほど国際情勢と大韓民国の安保状況は穏やかでない。安倍氏は2016年11月当時、米大統領選挙から9日後に米国に渡ってトランプ氏にゴルフクラブをプレゼントし、就任1カ月後には一緒にゴルフをした。トランプ1期目にクアッド(Quad)やインド太平洋戦略などでトランプ氏の耳と心を引いたのは安倍氏だった。
我々はトランプ氏と縁がある有力者らで「ドリームチーム特使団」を組むことを検討してみよう。政治・経済界の人たちがまず挙がるだろうが、発想を変えてみれば斬新な名簿が出てくる可能性がある。
トランプ氏の長男で次期ホワイトハウス実力者に浮上したトランプ・ジュニア氏の8月の訪韓当時に大型教会で信仰証を支援したキム・ミンア・ビルドアップコリア代表、2021年11月にフロリダ州マー・ア・ラゴ別荘に破格的に招待されてテコンドー服と名誉9段証を贈呈したイ・ドンソプ国技院長らがそのような例だ。2018年1月当時、トランプ大統領の国政演説に招待されてホワイトハウスで会った脱北者の池成浩(チ・ソンホ)以北五道委員会咸鏡北道知事(元国会議員)、トランプ氏が読むと約束した『イ・ヒョンソ、私の7番目の名前』を書いた脱北者イ・ヒョンソ・セブンアセット代表もそうだ。内政がいくら混乱していても、誰かが国益のためにトランプ政権2期目がもたらす外交・安保・経済リスクを最小化する知恵を最大限に絞り出す時だ。
チャン・セジョン/論説委員
2024/11/11 15:33
https://japanese.joins.com/JArticle/326071