トランプの孤立主義、習近平の人類共同体論 【特派員コラム】

投稿者: | 2024年11月29日

 中国の習近平国家主席が国際問題を語る際、口癖のように並べる言葉の一つが「人類運命共同体の建設」だ。雲をつかむような構想だと思っていたこの言葉の意味を新たに考え始めたのは、孤立主義を掲げたドナルド・トランプ前米大統領の返り咲きが確定してからだった。「アメリカファースト」を前面に掲げたトランプ次期大統領と「人類の運命は一つ、ウィー・アー・ザ・ワールド」を叫ぶ習近平主席の2度目の「両極端」の真っ向対決がまもなく繰り広げられる。

 4年の臥薪嘗胆の末に帰ってきたトランプ次期大統領は、当選直後、次期内閣の主要人物を相次いで発表するなど、素早く動いている。早くから関税戦争の砲門を開き、就任直後に中国とメキシコ、カナダにそれぞれ10%、25%の追加関税を課すと発表した。後のない任期4年を一秒たりとも無駄にしないという決意がうかがえる。

 守備する立場の習主席は急がず、広く布石を打っている。習主席は今月中旬、南米ペルーとブラジルで開かれたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席し、トランプ時代を迎える中国の今後の国際戦略を明らかにした。「国際関係の基本ルールを遵守する」、「開放型世界経済を構築する」、「人類の共同繁栄を促進する」などの巨大言説から「アフリカ支援を強化する」、「グローバルサウスとの協力を強化する」、「開発途上国のデジタル化・人工知能(AI)化・グリーン化を支援する」など、具体的な戦略が次々と出てきた。

 これ以上ないほどの素晴らしい言葉が並べ立てられているが、これを額面通りに受け止めるわけにはいかない。ただし、習主席はトランプ政権の国際政策の正反対側に中国が立つという意志を明確にしている。アフリカやグローバルサウス、発展途上国など中国の支援を必要とする地域を抱えていくという意味だ。

 ビザ免除拡大政策は、習主席が打った地域的布石の一つだ。中国は今月初めに韓国人に対する入国ビザを免除したのに続き、最近日本人に対してもビザを免除した。日本人に対するビザ免除はコロナ禍以後4年ぶりであり、韓国人に対するビザ免除は1992年国交正常化以来初めて。トランプ前大統領の就任を前に、地理的隣国であり米国の中核同盟国である韓国と日本に先に手を差し伸べ、「和解のシグナル」を送ったのだ。地域を包容する試みは、これからも出てくる可能性がある。手ごわいトランプ前大統領が帰ってきたから、これからは中国とも仲良くしようという意味だ。

 習主席のもう一つの布石は、米国の攻撃に備えて城を高く築き、長期戦に備えることだ。9月末に低迷した経済再生に乗り出した中国は、枯死状態の不動産と地方政府財政に息を吹き込む水準の対策を打ち出しただけで、まだこれと言った浮揚策を発表していない。米国のカードをすべて見るまでは、実弾を無駄にしない構えだ。独自のシステム構築も進めている。最近、ファーウェイはグーグルのアンドロイド・オペレーティングシステム(OS)から完全に離れた独自のシステムを発表した。米国中心のモバイル体制から抜け出し、中国だけのモバイル体制を構築するのが狙いだ。中国はここにグローバルサウスと発展途上国を引き入れ、習主席の言う運命共同体の拡大を目指すだろう。電気自動車(EV)、ロボット、レアアースなど、中国が主導権を握った分野でこのような試みが続く可能性がある。

 2017~2021年に一戦交えたことのあるトランプ次期大統領と習主席の再対決過程で、韓国は何をすべきか。第一戦の時よりはるかに困難な道が予想される。

2024/11/28 18:57
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/51750.html

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