産業化と民主化をともに成就した大韓民国の成功はグローバル模範事例だ。韓国戦争(朝鮮戦争)以降、李承晩(イ・スンマン)、朴正熙(パク・ジョンヒ)など歴代政権と国民の血と汗の結果だ。1人あたりの国民所得が日本を上回る驚くほどの経済成果を成し遂げた。今では経済の発展を越えてK(韓国)文化が地球村に爆発的に拡大している。このような成就にもかかわらず、先進経済と後進政治の矛盾した二重構造から抜け出せずにいる。
政治が繰り返し経済の足を引っ張っている。文在寅(ムン・ジェイン)政権当時には反企業・反市場立法を連発し、第22代国会に入ってからは敵対的な少数与党の中、弾劾乱発と立法暴走で国政運営がまひする局面に至った。
巨大野党の暴走と大統領の政局突破の試みが衝突する間、自由民主主義が萎縮した。ついに12・3非常戒厳事態で国家の地位と国民の自負心が奈落に落ちた。韓国経済が遠からず主要7カ国(G7)グループ入りするという期待と魂の塔が崩れている。もちろん極限的な政治葛藤にもかかわらず、国民は暮らしやすい経済、強い安保を強く望む。
ウクライナ戦争と中東事態、中国経済の鈍化、米国の政権交代など対外リスクが高まる状況で、戒厳宣言の後、結局、大統領弾劾訴追案が憲法裁に渡った。政治的な不確実性と混乱は対外的に外国人投資家の韓国離脱と金融不安定に転移して「コリアディスカウント」が再浮上した。韓国が日本のような「失われた10年」に入るのではという懸念もある。
今年は輸出が韓国経済成長を主導したが、トランプ政権2期目に関税戦争で保護貿易の障壁が高まれば来年は輸出も打撃を受ける可能性がある。沈滞した内需景気を活性化する余力が少ないため、来年度の成長率予測値は1%台に修正され、下方リスクが高まっている。
韓国経済を支えている半導体・バッテリー・電気自動車など核心産業までが内憂外患に直面している。すでに自営業者や中小企業は瀕死状態であり、雇用寒波で民生経済が悪化している。低所得の脆弱階層は言うまでもない。
経済が沈滞する中で政治混乱が加わり、金融市場の不安定、輸出・雇用の縮小、対外信用度低下、労働界の政治闘争が重なった。対内外から同時多発的に押し寄せてきた荒波が韓国経済を複合危機に追い込んでいる。与野党が超党派的に経済活性化にまい進しなければいけない理由だ。
何よりも政治が経済の足かせになってはいけない。経済の発展を追求するシステムへの大々的な改革が求められる。国の経済より党利党略に埋没した政治が葛藤と分裂を助長する立法規制を乱発してはいけない。目の前の小利に執着して分裂する政治は和合と安定という大利を押しのける。政治的な葛藤と分裂は人材も企業も投資も遠のける。韓国の人材と資本は海外に流出し、外国の企業と資本は韓国への投資を避ける。コリアディスカウントの主な原因は政治が触発した不安定にある。
韓国政治の慢性病は相対主義価値の失踪にある。与野党が互いに排斥して相手を認めない。国政危機の克服に関心を向けず権力争奪に固執する。このため極限政争の日常化で国政はまひする。互いに正面から衝突する後進政治の素顔を恥じることなく表している。互いに自制して共存を生み出すのが先進政治だ。
1979年から45年ぶりに戒厳事態を経験した中、この機会に国家ガバナンスを節制された権力システムに再構成することを提案する。民主化の結実である1987年の憲法体制で導入された大統領任期5年単任制はもう効力が尽きたという指摘を受ける。国家政策の連続性と責任政治を担保するには任期4年の重任制を検討するのがよいとみる。
我々の経済がここで倒れるのか、それとも回復力を見せるのかは、政治大改革にかかっている。政治は正しく立てる「正治」であるべきであり、相手を征服する「征治」になってはいけない。分裂した政治では韓国経済の未来は暗い。政治家は地位が高いほど腰を低くする登高自卑の姿勢を見せなければいけない。与野党ともに自身を鏡に映してみる時だ。
キム・ジュンヨン/成均館大名誉教授/元総長
2024/12/19 13:29
https://japanese.joins.com/JArticle/327612