韓国で「人工知能(AI)基本法」の通過が先送りになっている間に世界各国は規制の主導権を巡り熾烈な競争を繰り広げている。各国別の規制がAIの無分別な活用を防ぐ一方、自国に有利な競争環境を作る役割も果たす場合もあるという判断からだ。
◇規制から着手したEU
今年3月、欧州議会は「EU AI法(AI Act)」を通過させた。根底には、米中が主導しているグローバルAI産業でビッグテックを牽制(けんせい)し、地域内の企業を保護しようとする意図がある。米国のマイクロソフト(MS)・グーグル(Google)、中国アリババのようなビッグテックAI企業が欧州にはない。この法律全113条項のうち7条項は革新企業の支援措置に関する内容で、残りは規制および監視に関連している。
EU AI法の最も大きな特徴は欧州内に使われるAIシステムの危険度を4段階(許容不可能な危険、高危険、制限的危険、最小危険)に分類し、これに伴う義務事項をそれぞれ規定している点だ。最小危険に分類された場合、特別の規制はない。反面、ビッグテックが作った大規模言語モデル(LLM)のような「汎用AIモデル」に対しては厳格な規定を設けている。EU AI法第53条は汎用AIモデルプロバイダにAIモデル学習に使ったデータに対する詳細内容を公開させている。嘉泉(カチョン)大学法学科のチェ・ギョンジン教授(韓国人工知能法学会長)は「韓国でも危険性によってAI技術に差別的に接近する必要がある」としつつも「ただし、どのようなAIがどれほどの危険を持つのかまだ正確に分類することが難しいので時間をかけて議論する必要がある」と話した。
◇支援の根拠から用意した米国
米国は2020年にいち早く「国家AIイニシアチブ」法を制定してAI産業を支援できる法的根拠を用意した。2022年だけでAI分野に17億ドル(現レートで約2600億円)を投じた。振興に焦点を置いた米国は、昨年の生成AIブーム以降、副作用を指摘する声が高まるとすぐに規制案も作った。昨年10月バイデン政府はAIを規制する初めての行政命令を下した。安全を脅かしかねないAIモデルの開発企業は政府が検証した専門家チームの安全評価を受けて結果を政府に告知しなくてはならない。特に米国企業のAI技術を利用する外国人(企業)も適用の対象に含めて国境の向こう側まで影響力を行使しているのが特徴だ。
これまでAI開発を企業の自主性に任せてきた日本も今月開かれる「AI戦略会議」で法の規制を提案する計画だ。日本経済新聞は「民間の自主的な対応に委ねてきた方針からの転換に政府内には慎重論もある」としつつも「それでも法規制を議論するのは、日本だけが規制強化で遅れれば社会的なリスクが大きくなる恐れがあるため」と伝えた。
◇韓国は主導権争い
反面、韓国企業は二重苦を強いられている。事業予測の可能性に役立つ「AI基本法」の導入は国会で無期限で先延ばしにされているが、一方では部署間の主導権争いが起きているためだ。科学技術情報通信部が「人工知能の発展と信頼基盤の造成などに関する法律」(AI基本法)の制定を推進する中で放送通信委員会は今年3月、業務計画ブリーフィングで年末までに「AIサービス利用者保護に関する法律(仮称)」を作ると発表した。個人情報委員会も2月の業務計画を通じて年内にAI原則と基準を具体化した「6大ガイドライン」を用意するとした。
◇業界「国家AI産業のコントロールタワー必要」
政府が部署別に規制を出すと業界では「AI基本法に基づいて国家全体のAI戦略をコントロールできる機構が必要だ」という声があがっている。一貫したAI政策を推進するために総合的に調整を行う機構が必要だということだ。
ネイバー(NAVER)フューチャーAIセンター長のハ・ジョンウ氏は「各部署の利害によって法作りが進んでいて、戦場同様の生成AI市場で毎日戦っている企業の混乱が深まっている」とし「国家全体のAI戦略を立てて部署間で調整をする役割が必要だ」と話した。
2024/05/06 06:53
https://japanese.joins.com/JArticle/318259