反米・反政府掲げる韓国左派団体が利用する親パレスチナ・デモ【コラム】

投稿者: | 2025年3月5日

 2万里離れたガザ地区からの叫び声は聞こえても、韓国国内のパレスチナ住民の声は聞き入れられなかった。「ガザ地区を引き取り、休養地とする」というドナルド・トランプ大統領の構想に対する当事者の立場を取材しながら体験したことだ。知り合いのアラブ人が少しいて、ちょっと歩いてもパレスチナ住民と接することができた。しかし、彼らは簡単に口を開かなかった。

 彼らの周囲には、韓国国内のパレスチナ・デモを主導する二つの左翼団体が存在する。一緒に発足したものの、ハマスの民間人殺害に対する見解の違いにより内部の葛藤が表面化し、労働者連帯と全国民主労働組合総連盟(民主労総)が分裂した。ガザ出身の一人はインタビュー要請に対し、連帯側に問い合わせるよう促し、直接回答することはできないと話した。また別の知人は「主催側がインタビューを許可しないだろう」と懸念する様子を見せた。同団体で活動した関係者は「朝鮮日報はパレスチナを非難し、イスラエルの肩を持つと考える」として断った。

 労働者連帯は自らマルクス主義と反米を旗印とする極左翼団体だ。「マルクス主義とパレスチナ」という講演を行い、韓米同盟を否定したほか、国家保安法の廃止まで主張する。昨年12月には北朝鮮軍のウクライナ派兵説が「尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の真っ赤なうそ」だと主張した。北朝鮮の指令を受けて在韓米軍の撤収を扇動したある民主労総の幹部は、大韓民国の体制を転覆しようとした疑いで、最近15年の刑を受けた。

 アラブ人の10人に9人は「パレスチナ解放」を叫び、多数が反米情緒を共有する。英国がバルフォア宣言でパレスチナの土地をイスラエルに譲渡し、米国がこれを受け継いだという歴史的共感があるためだ。未来のために日本と交流しなければならないと言いながらも、日本による植民地支配を思い浮かべると、多くの韓国人の血が騒ぐのと似ている。左翼団体はこのような感情を利用して深く入り込んでいく。「韓国の体制を揺さぶり、米国とその道具であるイスラエルに立ち向かえ」という指針の下、パレスチナ問題は有用な手段となったのだ。

 実際にデモ現場は、韓国国内の反米・反政府闘争にパレスチナ問題を利用するのではないかという懸念をより一層拡大している。集会の案内文には、尹錫悦大統領退陣集会に合流するという内容が盛り込まれ、「ボリシェビキ」や「社会主義者連帯」などの旗が翻る。証拠写真を残そうとする警察に対し携帯電話を出すよう迫り、現場の写真を全て削除されてしまったこともある。在韓米軍の撤収を叫ぶ民衆民主党も一役買っている。「パレスチナ連帯」という看板を掲げ、これを反米・反政府闘争のてことして利用する羊頭狗肉(ようとうくにく、外見と内実に大きな開きがある様子)ではないか。

 本紙がどちらか一方を支持するという偽りを信じない人たちの声を聞くことができた。集会に毎週参加するある50代のアラブ人は「パレスチナに関心を持ってくれて心より感謝する」と記者に話した。ガザ出身の30代の大学院生は、インタビュー要請に「断ったこともなく、断ることもない」と話す。パレスチナの旗が大きくはためく中、パレスチナ住民の声が薄れてしまってはならないのだ。

ソ・ボボム記者

2025/03/05 07:00
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2025/03/01/2025030180006.html

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