米国が57カ国に課税を公言した高率の相互関税の発効(現地時間9日0時1分、韓国時間午後1時1分)の16時間ほど前となる8日夜、ハン・ドクス大統領権限代行首相が、米国のドナルド・トランプ大統領と電話会談を行った。相互関税の課税対象になった国々が発効直前まで激しい水面下での外交折衝戦を行っているなか、韓米首脳間の直接のコミュニケーションが行われたのは、1月のトランプ大統領の就任後では初めて。
ハン権限代行はこの日夜9時3分から31分まで、トランプ大統領と電話会談を行い、韓米同盟強化▽貿易均衡など経済協力▽北朝鮮核問題などの両国の懸案を議論したと、首相室が明らかにした。
首相室によると、28分間行われた今回の電話会談で、ハン権限代行は、造船、液化天然ガス(LNG)、貿易均衡の3大分野で、米国側と一段階高い協力の意向を強調したという。また、両国は相互にウィンウィンとなる方法を見つけるために、貿易均衡を含む経済協力分野について、閣僚級で建設的な協議を継続していくことにした。ただし、首相室は、最大の懸案である米国の25%の相互関税課税に関して、どの程度の議論がなされたのかについては、特に言及しなかった。
トランプ大統領は、ハン権限代行との電話会談直後、自身のトゥルース・ソーシャルのアカウントに「韓国の(ハン・ドクス)大統領権限代行と立派な電話会談を行った」としたうえで、「巨大かつ持続不可能な韓国の(対米貿易)黒字、関税、造船、米国産LNGの大量購買、アラスカのガスパイプラインの合弁事業、そして、われわれが韓国に提供した大規模な軍事的保護に対する支払いを議論した」と明らかにした。
トランプ大統領はこれと関連して、「彼ら(韓国)は私の初めての任期のとき、数十億ドル(数千億円)の軍事的費用の支払いを始めたが、“スリーピング・バイデン(前大統領)”が、分からない理由でこの合意を終了させた」として、「それは誰にとっても衝撃だった」と主張した。その一方で、「とにかく今、われわれは、両国ともに大いに役立てる立派な合意の枠組みと可能性を持っている。韓国の最上級の交渉チームが米国に向かう飛行機に搭乗し、状況は非常に肯定的」だと述べた。さらに、「われわれは、韓国だけでなく、他の多くの国々とも取引を進めており、どの国も米国と交渉することを望んでいる」として、「貿易と関税以外の他の懸案もあわせて協議している。これが、まさに『ワン・ストップ・ショッピング』という美しく効率的な方式」だと述べた。韓国に課した25%の相互関税課税問題を交渉する過程で、韓国の防衛費分担金(在韓米軍の駐留費用に占める韓国の負担額)の増額の再協議や、アラスカのLNG開発投資などを一挙に要求する協議に入る意向を表明したものと分析される。
ハン権限代行はこの日、トランプ大統領との電話会談前に行った米国CNNとのインタビューで、「米国と交渉したい」という意向を強く表明した。ハン権限代行は、米国の関税課税措置に「遺憾の意」を示しながらも、「韓国全域の工場ラインが閉鎖される前に、両国が合意に到達できると信じている」と述べた。ハン権限代行は特に「韓国が中国や日本などと連帯し、米国の関税に対抗する可能性」を問う記者の質問に、「われわれはそのような道を進まないだろう」と断言した。特に、先月31日にソウルで開かれた韓中日3カ国の経済通商閣僚会議についても、「特別な会談ではなく、定期的な会談」だったとして、「米国の政策の波紋を議論することはできるだろうが、正面から対抗する連合ではない」と強調した。トランプ大統領が、米国の相互関税に合わせて同水準(34%)の関税を払わせることにした中国を狙い、50%の追加関税で脅している状況を考慮し、3カ国の経済通商閣僚会議に大きな意味を付与しないということだ。
韓米が首脳レベルでコミュニケーションをとったのは、5カ月ぶりのことだ。トランプ大統領は昨年11月7日(現地時間)の当選直後、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領(当時)と12分間の電話会談を行い、韓米日の協力や韓米同盟、北朝鮮のウクライナ戦争派兵、両国間の造船分野での協力などについて議論した。当時、両首脳は早い時期に会合をすることを述べていたが、12・3内乱事態が招いた権力空白が長期化し、4カ月以上にわたり首脳間でのコミュニケーションを取ることができなかった。チェ・サンモク大統領権限代行副首相兼企画財政部長官の体制のときも、首脳間での電話会談を推進したが、直接のコミュニケーションは行われず、尹前大統領への弾劾宣告が出た後、初めて電話会談を行ったのだ。
12・3内乱事態で韓国の対米外交の空白状態が続いた間、相互関税の課税対象になった他の国々は、すでに激しい水面下での外交折衝戦を繰り広げている状況にある。日本、ベトナム、台湾などは、自国の関税引き下げ、米国製品の輸入拡大など、多種多様な譲歩案を提示し、交渉テーブルに乗り出している。ベトナムは米国製輸入品に対して関税を0%に下げる案を提案し、日本の石破茂首相は前日夜、トランプ大統領と急遽電話会談を行い、交渉に総力を挙げている。欧州連合(EU)は、公式には交渉を望んでいることを明らかにしながらも、米国製品に対する報復対象の品目リストを最終調整中だと伝えられている。
チャン・ナレ記者、チョン・ユギョン記者、ワシントン/キム・ウォンチョル特派員
2025/04/09 01:14
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/52892.html