【中央時評】米国発の関税衝撃と韓国の対応

投稿者: | 2025年4月23日

米国が高率の輸入関税を課す一次的な理由は36兆ドル(約5100兆円)にのぼる政府の負債のためであろう。これによる利子支出はGDP比で4%、財政収入比で20%に迫り、先進国で最高水準だ。国防費の支出より多い利息費用は米国の政策を深刻に制約する要因となっている。基軸通貨国の地位を失いかねないため日本のように超低金利を維持して利子負担を減らすこともできない。地政学危機がコスト上昇型インフレにつながる状況で金利を大幅に引き下げるのも難しい。こうしたジレンマで負債という足元の火を消すことができなければ、米中覇権競争でも優位に立つのは難しいと、トランプ政権は判断するようだ。

スティーブン・マイラン(Stephen Miran)氏はトランプ大統領の以前からの関税愛を新しい経済の話に格上げさせた。米国経済諮問委員会議長のマイラン氏の報告書によると、基軸通貨を準備通貨で保有しようとする他国の高い需要のためドルの価値は過大評価されるしかなく、その結果、米国の貿易赤字と製造業空洞化が発生する。したがって10%の一律関税と60%の対中関税を徐々に課して為替レートを協議調整し、米国の貿易および財政赤字を減らし、製造業を育成するべきだと主張する。しかしこの報告書は厳格な論証と緻密な分析なく重要な変数をあまりにも容易に連結して巨大な話にしたアマチュア作品という評価もある。赤字を減らすには該当国が自ら消費を減らし、増税しなければならないが、米国はその責任を全面的に他国の「ただ乗り」に転嫁しているという批判も可能だ。もちろん中国の責任を無視することはできない。中国政府は企業に大規模な補助金を支給して過剰生産を誘導した後、外国にダンピング販売させることで、米国の製造業空洞化と貿易赤字に寄与した。しかしトランプ政権の関税は散弾銃のように中国だけでなくすべての国に発射された。

 ひとまず猶予した関税が実際に課される場合、米国も大きな被害を受ける可能性がある。高率の関税が実行され、外国の報復措置が重なれば、米国の資本市場ははるかに大きく揺れるだろう。関税で物価が上がって成長率が低下する場合、来年11月の中間選挙で共和党が完敗する可能性もある。トランプ大統領もこの点をよく知っているはずだ。したがって国別相互関税は結果的に大幅に軽減されたり課されない可能性が高い。しかし自身の確信が経済学的な正当性まで受けたと信じるトランプ大統領はいかなる実益もなく退くことはないだろう。

なら、我々はどのように対応するべきなのか。韓国の対米交渉の第1原則は戦略的明瞭性だ。韓国は民主主義と市場経済を基盤とする世界秩序に貢献するという戦略を確実にしなければいけない。これは保守と進歩の問題でなく大韓民国のアイデンティティだ。長期的に韓国の国益にもなる。航海のためには目的地を定めて出発しなければいけない。短期的な利益に没頭すれば、目的地と反対の終着地に流されたりもする。対米交渉の第2原則は戦術的柔軟性だ。現在の局面で見ると、交渉の開始は早期に、妥結は日本の後にするのがよい。米財務長官は韓国、日本、英国、オーストラリア、インドを関税交渉の最優先対象国とした。韓国がこのグループに属したのは米国の友邦であり国益にも重要であるからだ。「コリアパッシング」の可能性が減る可能性もある。したがってこの機会を捨てずに利用する必要がある。しかしトランプ大統領の意中など不確かな点が多いため、いくつかの面で韓国と似た位置にある日本の事例を学習した後に交渉を妥結するのが有利だ。米日交渉で地政学的要因、同盟関係、経済協力、米国内投資、防衛費分担などの重要性を把握し、適切な交渉方案を準備することができるからだ。「貿易、経済協力、対北朝鮮安保」の包括的合意が可能なら、韓米間の先端技術および製造業協力と北核抑止案を含む妥結が最善の結果だ。

対米交渉の第3原則は国際連携だ。韓国は日本、英国、オーストラリアとより一層深く広く連携するのがよい。これらの国と力を合わせて米国の経済的負担を分担すると同時に、米国が世界秩序維持という長期均衡に戻るよう努力しなければいけない。さらにサプライチェーン、資源、先端技術および核心製造業において米国と共に経済共同体を形成し、安定と発展を図ることができる。また、共に規範中心の経済秩序を目指し、超強大国の軌道離脱と正面衝突の可能性を低める必要がある。今は両超強大国が世界覇権をめぐり競争する危険な時代だ。米国発の関税戦争はこの混沌の時代を知らせる騒がしいラッパの音だ。韓国ほど世界の秩序に影響を受ける国も少ないが、韓国の大統領選挙は依然として国内版一辺倒だ。それでよいのだろうか。巨大な暴風が集まる海で戦略と戦術、長期と短期、価値と利益を調和させ、韓国を安全な港に導く知略の大統領は出てこないのだろうか。

キム・ビョンヨン/ソウル大客員教授・経済学部

2025/04/23 15:23
https://japanese.joins.com/JArticle/332918

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