米・英が初の関税合意…「自動車143万台輸出」韓国との交渉見通しは

投稿者: | 2025年5月9日

 ドナルド・トランプ米大統領が、すべての貿易相手国を対象に行う「関税戦争」で英国と初の合意を成し遂げ、「優先交渉対象国」に挙げられる韓国との交渉に及ぼす影響が注目される。

 8日(現地時間)、米英政府による発表の核心は、米国が自動車に対する品目別関税率を10%に下げたことと、英国の商品全般に対する10%の「基本関税率」を固守した点だ。これは韓国・日本・インド・イスラエル・ベトナムとの交渉も急ぐ米国が大きな枠組みのガイドラインを提示したものとも見られる。

 米国はこれまで、自動車、自動車部品、鉄鋼、アルミニウムについて全世界を相手に25%の関税を課しながら、このような品目別関税については譲歩しないという態度を見せてきた。その代わり、4月3日に韓国など57カ国に賦課し、7月8日まで適用を猶予した国別相互関税(「基本関税」名目の10%は維持)に関する協議に集中するとの立場だった。

 日本では最近、スコット・ベッセント財務長官が自動車品目の関税は交渉対象ではないという立場を明らかにしたとの報道が出たりもした。1日、ベッセントと2回目の交渉を行った赤沢亮正経済再生相は、日本の商品全般に課された24%の相互関税だけでなく、自動車や鉄鋼などに課された品目関税まで議論対象にならなければならないとし、「そうした部分がパッケージに含まれなければ合意は不可能だ」との立場まで明らかにした。

 ところが、米国は英国産自動車に年間10万台まで関税率25%(既存関税率を加えると27.5%)を10%に下げる低率関税割当を適用することにし、品目別関税も調整対象になりうることを示した。昨年、英国の対米自動車輸出量は9万2千台であるため、事実上物量全体が関税10%を適用されるものと予想される。日本と同じく自動車が対米1位の輸出品目である韓国には、ひとまず鼓舞的なニュースだ。韓国政府は米国との交渉で自動車関税の減免に努めるという立場を明らかにしてきた。英国産鉄鋼・アルミニウム製品の関税を撤廃することにしたことも品目別関税に対する米国の態度が変わったことを示している。

 米国が相互関税率を10%以下には下げないという立場を強調したことも重要な部分だ。ベッセント財務長官などが以前から明らかにしてきた立場が現実化したのだ。米国は7月9日、相互関税の適用猶予期間が終われば、韓国の場合は25%の相互関税を適用する計画だ。これに前後して韓国と合意に至っても、相互関税の中で現在適用中の「基本関税」10%は維持しようとする可能性が高いと見られる。トランプはこの日、記者たちとの問答で10%「基本関税」が他の交渉でも基本枠組みなのかという質問に「それは低い数字だ」として、合意になっても10%を超える相互関税率を適用しうるという意まで明らかにした。

 だが、米・英合意を韓国に直接代入しにくい側面もある。韓国の対米自動車輸出量は昨年143万台で、英国の14倍を超える。さらにトランプ大統領は、英国は例外的なケースだと述べた。彼は「ロールスロイスはここ(米国)で作らないので関税を25%から10%に下げた」として「それは非常に特別な車であり、生産量も非常に制限的」と話した。また、「ロールスロイスは数百万台を生産する巨大自動車メーカーではない」とし、「ロールスロイスに匹敵する車でなければ、そのような(関税率を下げる)合意はしない」と述べた。ロールスロイス、ベントレー、アストンマーティンなどの高級車は生産量が少なく、米国メーカーの主要競争相手でもないため、英国産は関税を引き下げることができるということだ。それでは、米国市場で現地企業と激しく競争し、多くの物量を輸出する韓国や日本の企業と関連しては、交渉の見通しが明るいとは言い難い。

 米国が最も簡単な相手から最初の合意を引き出した点も、他国との交渉は容易でないとの展望を維持させる。英国はブレグジット(欧州連合脱退)以後、欧州大陸との関係が弱まり、大西洋の向こう側で活路を見出そうと米国との自由貿易協定(FTA)を追求してきた。トランプ大統領は政権1期目に、英国の欧州連合脱退を煽った張本人だ。彼は英国との合意を発表し、両国の「特別な関係」のために合意が可能だったと明らかにした。

 米・英の貿易収支構造が韓国と大きく異なる点もある。米国は昨年、英国を相手に119億ドルの貿易収支黒字を出した。対米赤字国である英国と昨年の対米貿易黒字が557億ドルに達する韓国とは違う。そのため、英国は他の56カ国と共に相互関税賦課対象として名指しされたが、適用された関税率は10%で、基本関税だけが適用される残りの国々と同じだ。英国は今回、米国産牛肉と機械類の輸入拡大とエタノールに対する関税廃止などの譲歩案に合意した。トランプ大統領と英国のスターマー首相は、いずれも今回の合意は自分たちの「大きな勝利」だと主張した。しかし、対米貿易で赤字の英国は、相互関税率10%に変化がないという点で、良い成果を収めたわけではないとの評価もある。また、フレームワーク(基本枠組み)と呼ばれる今回の合意は、具体的な内容が確定されなければならず、発効時点も決まっていないという点も限界と言われている。

 こうした中、米国は英国との基本合意を根拠に、韓国などに合意の導出を急ぐよう圧力をかけるものとみられる。

2025/05/09 12:58
https://japan.hani.co.kr/arti/economy/53154.html

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