「北朝鮮弾道ミサイル発射」速報はどのようにして出てくるのか

投稿者: | 2025年5月24日

 北朝鮮が弾道ミサイルを発射するたびに相次ぐ速報記事はどのように出てくるのか。

 韓国軍合同参謀本部(合参)は、北朝鮮が弾道ミサイルを発射すれば、1〜2分以内に国防部の担当記者に「北朝鮮、未詳の弾道ミサイル発射」というショートメール(第1報)を送る。このメールを受け取った記者団が「【速報】北朝鮮、弾道ミサイル発射」という記事を書く。合同参謀は、最初のショートメールを送ってから約1時間後、ミサイル発射時間と場所が含まれたショートメール(第2報)を担当記者に送る。さらに約1時間後には、ミサイルの飛行距離と弾着地点などを説明したショートメール(第3報)を送る。

 合同参謀が北朝鮮の弾道ミサイル発射をほぼリアルタイムで把握できるのは、韓国型ミサイル防衛(KAMD)作戦センターのおかげだ。KAMD作戦センターは空軍作戦司令部傘下のミサイル防衛司令部に編成されている。

 空軍は21日、国防部の担当記者団に京畿道烏山(オサン)基地にある韓国航空宇宙作戦本部(KAOC)を公開した。ここは朝鮮半島で行われる空中・宇宙作戦を総括・統制し、北朝鮮の核の脅威に対応する「3軸体系」(キルチェーン、韓国型ミサイル防御体系、大量反撃報復)を運用・統制する。韓国航空宇宙作戦本部が位置したバンカーには韓国防空識別圏(KADIZ)内のすべての飛行物体を探知・統制・対応する中央防空統制所(MCRC)、北朝鮮のミサイル脅威を真っ先に探知し対応するKAMD作戦センターなどがある。

 韓国航空宇宙作戦本部はセキュリティを徹底していた。スマートフォンとノートパソコン、スマートウォッチのようなデジタル機器だけでなく、記者団が見聞きした内容を記録する取材手帳の所持も認められなかった。21日は初夏の蒸し暑さだったが、建物内部は涼しかった。空軍関係者は「真夏にも冬用の肌着を着て過ごす。5組4交代で365日24時間働くため、体力的にかなりの負担がかかる。勤務者の中に体重が増えた人はおらず、自然にダイエットをしている」と伝えた。

 北朝鮮がミサイルを発射すれば、空軍ミサイル監視隊、海軍イージス艦、早期警戒衛星など各種探知システムが探知し、KAMD作戦センターに情報が集まる。作戦センターはこの情報をもとにミサイルの予想落下地点を算出し、陸・海・空軍と民間に迅速に警報を伝達する。弾道ミサイルは通常、発射後3分以内に首都圏、7〜8分以内に釜山(プサン)まで到達するため、作戦センターの警報電波任務が非常に重要だ。予想される落弾地域にあるミサイル砲台は、地対空ミサイルを発射して弾道ミサイルを迎撃する。作戦センターが探知した北朝鮮ミサイル飛行軌跡を逆算し、予想発射地点を算出した後、対弾道ミサイル(CBM)作戦状況室に伝えると、北朝鮮の移動式ミサイル発射台を破壊するキルチェーン作戦が行われる。

 空軍関係者は「北朝鮮はこの10年間、弾道ミサイルを200発余り発射した。我々は北朝鮮が発射した弾道ミサイルを一発も逃さずすべて探知した」と述べた。韓国型ミサイル防御作戦センターは2014年12月に弾道弾作戦統制所(KTMO-Cell)として任務を開始し、2023年7月に韓国型ミサイル防御作戦センターに名前を変えた。

 韓国は2014年まで、北朝鮮のミサイルを独自に探知する能力を十分備えていなかった。当時、韓国軍はマスコミの発表はおろか、米国から情報が伝わるまで、北朝鮮がミサイルを発射した事実自体を知らなかったケースもあったという。米国に対北朝鮮情報を依存しているため、プライドが傷つくこともあった。2007年6月、北朝鮮のミサイル発射後、韓国合参が在韓米軍が提供した北朝鮮ミサイルの軌跡情報などを記者団にブリーフィングしたことについて、米国の抗議を受けた。当時、米国は、自国市民の税金で運用する情報資産で収集した対北朝鮮情報を、なぜ韓国が勝手に公開するのかと問題視した。米国はこのような問題が発生すれば、韓国に与える北朝鮮地域の衛星写真、対北朝鮮傍受の情報を大幅に減らすやり方で不満を表したりもした。

 合同参謀が北朝鮮のミサイル発射をリアルタイムで探知して発表できるようになったのは、弾道弾作戦統制所が開所した後の2015年からだった。当時は朴槿恵(パク・クネ)政権時代だったが、北朝鮮がミサイルを発射すれば、合同参謀が担当記者団に告知した第1報は「不詳の飛翔体発射」だった。発射と同時に探知された軌跡だけで弾道ミサイルなのか、放射砲なのか、衛星なのか判断しにくいためだ。軍当局は追加精密分析が必要で、ひとまず第1報には正確な性格が分からない不詳の飛翔体という意味で「不詳の飛翔体発射」というショートメールを送った。その後、1時間後に弾道ミサイルだと明らかにし、それから再び1〜2時間後に射程と高度、速度などの諸元を公開した。

 2017年5月、文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後も北朝鮮がミサイルを発射すれば、合同参謀は朴槿恵政権当時の方式どおり「不詳の飛翔体」と公示した。当時野党の「国民の力」と保守メディアは「ミサイルをミサイルと呼べず、不詳の飛翔体という奇怪な用語を作り、北朝鮮に低姿勢を見せ続けた」と文在寅政権を攻撃した。

 合同参謀がほぼリアルタイムで北朝鮮ミサイル発射の事実を公開するようになった背景には、日本とのプライド対決もあった。1998年8月、北朝鮮のテポドン1号の発射後、国内外のマスコミが北朝鮮ミサイル関連報道を相次いで行ったが、かなりの間、日本のNHKなどの海外メディアが先に報道し、韓国のマスコミが後を追って報道する場合が多かった。

 韓国が2010年代初めから半ばにかけて、「グリーンファイン弾道弾早期警報レーダー」をイスラエルから導入し、北朝鮮の弾道ミサイル発射を探知する能力を備えたが、軍当局は「情報能力が知られてしまう」との理由で北朝鮮のミサイル関連情報を公開することに消極的だった。これに対し国防部担当記者団は政府と軍首脳部に「北朝鮮のミサイル発射を日本政府やマスコミに依存して報道しているが、対内的に国民のプライドが傷つき、対外的に韓国軍が無能力に見える」と抗議し、その後政府が方針を変えて北朝鮮がミサイルを発射すれば第1・2・3報を担当記者団に順次ショートメールで送っている。

2025/05/23 16:39
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/53289.html

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