元中日韓国大使「李大統領の友好的な『ツートラック』外交の第一歩に日本も応えるべき」

投稿者: | 2025年6月23日

 イ・スフン元駐日韓国大使は、1965年の韓日基本条約は「歴史の取り繕い、反共連帯」という時代的限界があったとし、韓日国交正常化60年を迎えた両国がこれを克服し、さらに高い単会に進むためには相互尊重と信頼を築いていかなければならず、韓国だけの譲歩ではなく、日本の呼応が必ず必要だと強調した。

 17日午後、ソウル慶南大学極東問題研究所で行われたインタビューで、イ元大使は李在明(イ・ジェミョン)大統領が強制動員「第三者弁済」についても「政策の一貫性が重要だ」と述べたことは「最大限の前向きな措置」とし、日本が李大統領に抱いている「反日」という疑念を捨て、李大統領の友好措置に積極的に呼応しなければならないと強調した。さらに、日本の石破茂首相が歴史反省の意味を込めた戦後80周年談話を発表し、これをもとに「李在明-石破新韓日宣言」で包括的で未来志向的な青写真を作ることができるという期待を示した。李在明大統領が韓国の首脳として22年ぶりに日本を国賓訪問し、天皇の訪韓が実現すると、両国関係を非常に堅固にすることができるとも見通した。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権の初代駐日大使だったイ元大使は、北東アジア情勢を長い間把握してきた国際政治学者であり、共に民主党北東アジア平和協力委員会の特任顧問でもある。

―60年前の国交正常化当時、日本は韓日基本条約において「植民地支配の不法性」を認めず、過去を封印しており、結局両国の間に歴史問題は未解決のまま残っている。これについて李在明政権はどう対応すべきか。

 「1965年の韓日基本条約は要するに『歴史の取り繕い、反共連帯』を二つの軸にしたものだった。いずれも現在の時代の流れに合わない。『65年体制』はもう寿命を迎えており、それをどのように替えていくかは時代的課題だ。それは容易ではなく、急いだからといってうまく解決できるわけでもない。韓日が共に新しい合意に向けて動き出せるムードを作ることが重要だ。今は国際秩序の大転換期であり、北東アジア情勢も非常に不安定であるため、韓日協力を強化していかなければならない。過去の歴史をあまりにも前面に押し出すと、韓日関係を安定的に管理し、進展させることは難しくなる。韓国は日本に対し『歴史問題に正面から向き合う』という原則を明確にしながらも、日本の前向きな態度を引き出すことが望ましい。強調したいのは、今回は韓国だけが、または韓国の指導者だけが何かを差し出してはならず、日本も呼応しなければならないということだ」

―今年、日本の首相の「戦後80年談話」や韓日間で「第2の金大中・小渕宣言(韓日共同宣言-21世紀に向けた新たな韓日パートナーシップ)」が必要だろうか。

 「李在明(イ・ジェミョン)大統領が今年8月15日の祝辞を通じてメッセージを出すだろうが、日本が果たすべき役割がある。2015年の安倍首相の戦後70年談話は、歴史の反省について残念な点が多かった。今年の戦後80年を迎え、石破首相がより歴史に正面から向き合う内容の談話を出すのが望ましい。歴代政権の談話を継承すると言うことに止まらず、植民支配の不法性を認め、過去の歴史に対する謝罪と反省の意味をさらに盛り込むことを望む。その土台の上で李在明大統領と石破首相の歴史的な『新韓日共同宣言』も作れるだろう」

―必要ならば、どのような内容を盛り込むべきか。

 「1998年の『金大中-小渕宣言』には、韓日関係にとどまらず、東アジア全体で平和的かつ共同体的な秩序を作り、北朝鮮との和解を実現する非常に包括的な内容が含まれている。 今『新韓日共同宣言』を作るなら、成熟した韓日関係を目指すことに加え、北東アジアで韓米日対朝中ロの対決的構図が固着化しないようにし、グローバルな課題にも韓日がともに対応しようとする包括的な内容を盛り込むべきだ」

―日本の保守派は李在明大統領に対し、「親中、反日」という非難と疑念を依然として抱いている。

 「李在明大統領がすでに何度も過去の歴史に正面から向き合いし、原則的に解決していくと同時に、経済、文化、人的交流、安全保障まで協力を強化・発展させていくという意志を明らかにし、また実際そのような方向に進んでいる。李大統領は石破首相との電話首脳会談で、『相互尊重と信頼をもとに堅固で成熟した韓日関係を作ろう』と述べたが、そこに李在明政権の対日外交の大きな枠組みが全て含まれている。にもかかわらず、日本側が引き続き『反日』ではないかと疑念を抱いているのは非常に残念だ。日本政府と専門家たちは、韓国の新大統領の提案に日本がどのように呼応するか、どのように手を取り合って良い結果をもたらすのか、日本の役割について考えなければならない。良い韓日関係は、どちらか一方の努力でできるものではない。韓国国民も今、良い韓日関係を応援しているが、日本が信頼できないと言って韓国の一方的な譲歩だけを要求し続ければ、雰囲気が一瞬にして変わる可能性がある」

―国内の保守陣営でも、李大統領に対してそのように批判している。

 「保守政権は韓日関係をうまく維持する一方、民主党政権は反日というのは、実は深刻な『錯視現象』だ。李明博(イ・ミョンバク)大統領が2011年12月、野田首相と首脳会談をする間、90%以上『慰安婦被害問題』について語り、翌年には独島(トクト)を訪れた。これが韓日関係が急速に悪化した最も重要な出発点だ。朴槿恵(パク・クネ)大統領も、慰安婦問題に合意しない限り、安倍首相には会わないと言い続けたが、米国が(韓日関係の改善に)乗り出したことを受け、国民の同意も得ず、『12・29慰安婦合意』を行った。一方、金大中(キム・デジュン)大統領は素晴らしい対日外交を展開しており、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領も小泉首相の靖国参拝などには批判的だったが、韓日関係をうまく管理し、進展させた。今回、李在明大統領が韓日関係をうまく発展させることが、外交でも成功した大統領になる重要な要素になり得る」

―李在明大統領の対日政策は、歴史問題の原則を守りながら必要な協力をする「ツートラック」の復元だ。それが可能だろうか。

 「ツートラック基調の復元に向けた李在明大統領の意志が強く、初期対応をうまく行っているため、復元が可能だと思う。特に李大統領が記者会見で、強制動員問題をめぐる『第三者弁済』案を維持するのかという質問に対し、『政策の一貫性が重要だ』と答えたことに注目しなければならない。李大統領が自分にできる最大値を非常に前向きに示したのだ。日本政府はこれを積極的に受け入れ、呼応する立場を示さなければならない。 そうしてこそ、持続可能で堅固で成熟した韓日関係を築いていくことができる」

―韓日の軍事的協力については様々な懸念も存在する。韓国が必ず守るべき原則は何か。

 「今の状況で韓日間の安全保障協力は進めざるを得ない。しかし、どのレベルまで進むかが重要だ。李在明大統領は韓日・韓米日安全保障協力も維持・発展させていくという方針を示している。それと同時に、中国とも戦略的協力パートナー関係を復元しなければならない。米中競争の中で、韓国が戦略的自律性の空間を設けてこそ、バランスを取る役割を果たすことができ、仲裁役も務められる。韓国が戦略的自律性の空間を確保するためには、米国と中国のどちらか一方に過度に偏ってはならない。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権はあまりにも一方に突き進んでしまったため、隣国と(の関係を)ほとんど断絶した。今、北東アジア地域に『韓米日対北中ロ』の対決構図が形成されているが、これがさらに固まると朝鮮半島平和に大きな問題になる。我々は朝鮮半島の平和をビルドアップしながら、北東アジアの秩序も対決と衝突の方向ではなく、協力に向かわせる戦略を駆使しなければならない」

―台湾問題をめぐる米中対立が高まり、米国と日本は台湾に対する韓国のより明確な役割を求めている。

 「私たちは中国の台湾侵攻をあまり既成事実化せず、両岸関係の現状を平和的に維持し、条件が整った時に双方が合意によって統一するかどうかを決めなければならないという原則を持続的に強調しなければならない」

―韓米日協力と韓中日協力を同時に発展させることが可能だろうか。

 「尹錫悦政権は、韓米日協力に偏りすぎて、韓中日協力は優先順位から外してしまった。韓中日3カ国の協力を再び強化し、重点を置く必要がある。韓中日首脳会議を毎年欠かさず開くことが重要だ。韓中日の首脳らが定期的に顔を合わせると、その下で会談と交流が活発に進められる。韓米日協力と韓中日協力は、互いに衝突しない。どちらもすでに協力事務局があり、制度化されているため、並行して発展させることができる」

―李在明大統領の訪日は、いつ、どのような形で推進すれば望ましいだろうか。

 「韓国の大統領が最後に日本を国賓訪問してから22年が経った。盧武鉉大統領は就任3ヵ月後の2003年6月に日本を国賓訪問し、日本議会で演説し、明仁天皇(当時)に会い、日本のテレビにも出演した。その後、保守政権の朴槿恵、李明博、尹錫悦大統領も一度も日本国民を訪問できなかった。李在明大統領が歴史問題の解決に向けて努力しながらも、未来志向的な協力を進展させ、シャトル外交も活発に行い、任期内に国賓訪問もするのが望ましい。それが実現すれば、天皇の歴史上初の訪韓も推進する必要がある。2017~2018年に駐日韓国大使を務めていた際、天皇夫妻に数回お会いして訪韓を打診したりもしたが、当時は条件が合わなかった。韓国の指導者が久しぶりに国賓訪問し、天皇夫妻の答礼訪問も実現すると、堅固で成熟した韓日関係が軌道に乗るだろう」

2025/06/22 23:34
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/53539.html

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