秒読みに追い込まれた「関税交渉」の終盤の妥結を導いたのは韓米造船産業協力プロジェクトの「MASGA(Make American Shipbuilding Great Again=米造船業を再び偉大に)」だった。米国の造船業復興のために韓国の資本と技術力を投入するという構想がドナルド・トランプ大統領まで動かしたというのが韓国政府関係者の説明だ。
◇「MASGA」の説明フリップボード持った金長官にラトニック長官も「great idea」
24日(現地時間)、金正官(キム・ジョングァン)産業通商資源部長官と呂翰九(ヨ・ハング)通商交渉本部長は、ワシントンD.C.で米商務省のハワード・ラトニック長官と会い、MASGA構想を初めて伝えた。スコット・ベッセント米財務長官と会うことにした具潤哲(ク・ユンチョル)経済副首相兼企画財政部長官が米国出発直前にベッセント長官不参加の通知を受けて「空港回軍」をした直後だった。
トランプ大統領の「関税策士」と呼ばれるラトニック長官は関税問題において強硬派に分類される。交渉チームにとっては負担に感じる人物だったが、MASGAの内容を伝えた後、トランプ大統領に会った時の対応法まで教えてくれ、今回の交渉の「キーマン」になったというのが韓国政府の説明だ。政府関係者は「金正官長官がMASGA関連で説明するフリップボードまで直接準備してラトニック長官に見せたが『素晴らしい考え(great Idea)』と関心を示した」と述べた。
◇現地で説明のフリップボード製作、「MAGA」のように「MASGA」の帽子も
当時、交渉チームはトランプ大統領の大統領選挙のスローガン「MAGA(Make American Great Again=米国を再び偉大に)」のように「MASGA」と書かれた帽子の写真まで作り、これを政治的に広報できるとラトニック長官を説得した。大統領室の高官は「MASGAと書いた帽子も20個製作した」と伝えた。
単純な経済的利益を提供することを越え、トランプ大統領に政治的贈り物まで抱かせるという高度な計算を基にした提案だった。MAGAに着眼したMASGAという名称の命名は、産業通商資源部の造船海洋プラント課の実務陣が作った。
また、交渉チームは金長官の指示でMASGAの内容を一目で伝える説明のフリップボードまで現地で直接製作した。このような細やかな準備がトランプ大統領まで満足させ、その後の交渉のテコになったという噂だ。呂翰九通商交渉本部長は「他国に比べて韓国だけが強みを持ち、韓国だけがやっていることは何か。それが造船だった」と述べた。
◇ラトニック長官のニューヨークの自宅・スコットランドまで行った交渉チーム
交渉チームは、ラトニック長官の動線を追って交渉を圧迫した。ワシントンで初会談を行った翌日、ラトニック長官が個人の日程のため自宅でしか会えないと言うと、ニューヨークの自宅を夜遅く訪問した。その翌日、ラトニック長官がスコットランドに行くと言うと今度はそこまで追いかけ、さらに2回会った。
結局、スコットランドでの会談でラトニック長官が今回の関税交渉の核心になった「ファンド規模」を提示したというのが政府関係者の説明だ。当初、交渉チームは1000億ドル規模を提案したが、ラトニック長官が4000億ドルを提示した後、最終3500億ドルでファンド規模が確定したという。金長官は「世の中のことというのは至誠感天(真心は天に通じる)と言うが、スコットランドの日程で交渉の天気を得たと考える」と述べた。
◇農産物を守るための「狂牛病デモ」写真を提示
今回の交渉で最大の難関と呼ばれたのは農産物だった。特に韓国政府は交渉初期から米と牛肉市場を譲れない「レッドライン」に設定し、交渉に臨んだ。米国側は、韓国の鎖の弱い部分である農産物市場の開放問題を交渉初期から提起し、圧迫した。
米国の圧迫がある度に交渉チームは「2008年狂牛病事態」を説明し、最大限感性に訴えた防御戦略を組んだ。特に、農林畜産食品部の修習事務官が集めた当時のろうそくデモの写真を交渉に活用したという。また、すでに韓米自由貿易協定(FTA)で農産物市場の99.7%が開放されているという点も説得した。
呂本部長は「100万人の人波が狂牛病ろうそくデモをする写真を持ち歩きながら見せた」とし「50日しか経っていない政府であり農畜産産業の特異性と敏感性を説得し説明し、そのような部分が効果を見たと考える」と話した。
◇自動車・鉄鋼は米国の強硬反対で手ぶら
自動車と鉄鋼の関税を更に引き下げることができなかった点は残念だ。政府は関税率2.5%を適用されていた日本と欧州連合(EU)とは異なり、韓国はFTAで関税率が0%だったという点を挙げ、自動車関税は日本・EUのような15%ではなく12.5%を要求していた。しかし、結局、自動車関税も15%に決まった。50%を与えている鉄鋼とアルミニウム関税の引き下げも持続的に要求したが、受け入れられなかった。
呂本部長は「米国の自動車労働組合や米国政界が反発すれば15%受け取れない状況だった」とし、「鉄鋼の関税は、トランプ大統領が強力な意志を持っている」と述べた。
2025/08/01 10:28
https://japanese.joins.com/JArticle/337040