韓国人が育てた「囲碁界の二刀流」一力遼九段(28)「韓国に追いつくのが目標」 LG杯朝鮮日報棋王戦決勝進出

投稿者: | 2025年8月12日

 日本は1990年代初めまで世界の囲碁界をリードしてきたが、その後、韓国と中国の2強構図に圧倒され、20年以上の長い低迷期に入った。しかし最近、日本の囲碁界が復活の兆しを見せている。その中心に立つのが、韓国人が育てた日本人囲碁棋士で、名門・早稲田大学を卒業した「囲碁界の二刀流」一力遼九段(28)だ。

 一力遼九段は昨年の「囲碁ワールドカップ(W杯)」で応昌期杯世界プロ囲碁選手権戦(応氏杯)を制覇したのに続き、韓国で最も古い囲碁棋戦「LG杯朝鮮日報棋王戦(LG杯)」の優勝カップも狙っている。6日、第30回LG杯準決勝で「ディフェンディング・チャンピオン」の卞相壹(ピョン・サンイル)九段を破った一力遼九段と、ソウル市城東区の韓国棋院で会った。一力遼九段は落ち着いた口調で、韓国と中国に押され気味の日本の囲碁を復興させるという使命感と自信を見せた。

 「日本の囲碁はかつては強かったですが、ここ数十年、韓国と中国が(世界の舞台を)二分していますね。(日本が)再び韓国と中国のレベルに追いつけるようにするのがプロとしての目標です」

 一力遼九段は今回のLG杯で、金凡瑞(キム・ボムソ)五段、安国鉉(アン・グクヒョン)九段、卞相壹九段ら韓国の強豪を次々と破ったが、その囲碁の「ルーツ」は韓国にある。一力遼九段は日本棋院所属の韓国出身棋士・宋光復(ソン・グァンボク)九段(61)の門下生だ。1997年に宮城県仙台市で生まれた一力遼九段は、有段者だった祖父の影響で幼少期から囲碁に接していたが、当時、囲碁教室で出会った師匠が宋光復九段だったという。宋光復九段が所属する日本の韓国式囲碁教室「洪(ホン)道場」は「模様」(石の配列形態)を重視する日本の棋風から脱し、隙のない読みで相手に圧力を加える戦闘力を強調する、新たな教育法を伝えたことで有名だ。

 一力遼九段は韓国式囲碁教育について「多くの子どもたちを一つの教室に集めて、互いに交わりあいながら学ばせる点が(1対1教育中心の日本と)かなり違っていました」「囲碁だけに専念するのではなく、社交性を育て、体力と精神力の重要性も強調し、囲碁の外的な成長のために努力してくださいました」と語った。事実、一力遼九段は国際試合で活躍し始めた2020年代に入ってから、「体力の鍛錬が重要だ」と宋光復九段に助言してもらい、水泳・ランニング・自転車などのトレーニングを囲碁研究と並行しているという。

 一力遼九段は13歳だった2010年に入段し、3年後、日本棋院が主催する若鯉戦で初の優勝カップを手にした。2014年には第39期新人王戦で17歳3カ月という年齢で最年少新人王に輝いた。 高校を卒業してからは、特技による特別選考ではなく高校の成績選考で名門・早稲田大学に入学した。学業と囲碁の勝負を両立させているという点で、「二刀流」で有名な日本のプロ野球界のスター、大谷翔平選手になぞらえて「囲碁界の大谷翔平」とも呼ばれている。

 一力遼九段の快進撃に、日本の囲碁界も最近、国際舞台で注目すべき成績を挙げている。上野愛咲美六段は昨年12月、呉清源杯世界女子囲碁選手権で日本人として初めて優勝した。一力遼九段は日本の月刊誌「文藝春秋」が連載した「令和の開拓者たち」シリーズで主人公の1人として取り上げられた。

 一力遼九段は来年1月19日から申旻埈(シン・ミンジュン)九段と3番機でLG杯の優勝カップを巡り競う。LG杯決勝に臨む覚悟を尋ねると、一力遼九段は「申旻埈九段をはじめ、韓国の棋士たちは手を決めるのが早いのに、ミスが少ないので相手にしにくいです」と言いながらも、「苦労して得た機会なので、絶対に優勝したいです」と語った。

金東炫(キム・ドンヒョン)記者

2025/08/12 08:40
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2025/08/09/2025080980038.html

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