一度頭に刻まれた第一印象を容易に消さず、誤った情報でも臆すことなく口にするドナルド・トランプ米大統領特有のスタイルは、25日(現地時間)の韓米首脳会談でも際立っていた。トランプ大統領は前半約50分間生中継された会談で「アラスカで韓国との合弁投資(joint venture)が行われる」と話したが、韓国が7月末の関税協議で米国産液化天然ガス(LNG)などの購入意思を示したのが全てだった。トランプ大統領は大統領選候補時期から一貫して在韓米軍規模(2万8500人)を「4万人」と誇張してきた主張も繰り返した。
◇李大統領「テロ経験共有、強い共感帯」
トランプ大統領は韓国史に関する認識の根本が中国習近平国家主席から聞いた話であることを再び露呈させた。「習主席が言うには、韓国は2000年間に中国と51回戦争した、当時韓国は南と北に分かれておらず、ひとつだった」と述べた。トランプ大統領は第1期政権の時も習主席を引用し、「韓国は実際には中国の一部だった」(ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビュー)と語ったことがある。さらには「(慰安婦問題について)日本は前に進みたがっているのに韓国はその問題に非常に執着していた」とも言った。これは第1期政権当時、安倍晋三首相の影響を受けて抱いた認識そのままだった。李大統領はフェイスブックに「過去の政治テロ経験を互いに共有し、強い共感帯を形成した」と書いた。
トランプ大統領よりも濃い赤色のネクタイを締めた李在明(イ・ジェミョン)大統領は、このようなトランプ大統領特有のスタイルに逆らわず、調子を合わせた。赤は米国共和党の象徴色だ。終始、背筋を伸ばし、両手を太腿の上にきちんと揃えて置いたまま会話する姿は、猫背気味のトランプ大統領と対照をなした。
李大統領は会談場所であるホワイトハウス・オーバルオフィスが最近新装された点に触れ、「黄金色に輝いていて本当に見栄えが良い」と称賛から発言を始めた。続いてダウ平均株価の最高値更新や米製造業ルネサンスなどを話題にしてトランプ大統領を持ち上げた。やや硬かったトランプの表情が大きく和らいだのは、李大統領が「金正恩(キム・ジョンウン)とも会っていただき、北朝鮮にトランプ・ワールドを一つ作って、そこで私もゴルフができるようにしてほしい」と語ったときだった。トランプ大統領は「李大統領ならそれを助けることができる。あなたのアプローチは(以前の韓国指導者たちよりも)ずっと良い」と笑みを浮かべた。トランプ大統領は非公開会談で「金正恩に会えと言った指導者は初めてだ」として高揚した反応を示したという。これまで「米国大統領を褒めることが彼を扱う最善の方法」(8日付ニューヨーク・タイムズ)という米メディアの助言をそのまま実行し、効果を得た形だ。
トランプが会談3時間前にSNSに投稿した「韓国で何が起こっているのか。粛清か革命のように見える」という文の余波で緊張感が漂っていた雰囲気を、和やかに反転させたのは事前分析と予行練習を繰り返し行っていたから可能だった。李大統領は会談後、戦略国際問題研究所(CSIS)を訪れ、「トランプが私に会う前、とても脅迫的にSNSを書いたので、我々の参謀の間では『ゼレンスキー(ウクライナ)大統領と同じ状況が起きるのでは』と懸念があった。だが私はそうならないと分かっていた」と語った。そして「トランプが書いた『The Art of the Deal(取引の技術)』を読んだからだ」と付け加えた。
大統領室の李圭淵(イ・ギュヨン)広報首席もブリーフィングで「李大統領は“素のトランプ”に徹底的に備えた」と説明した。また「トランプ大統領がピースメーカー(peace maker)になってくださるなら、私はペースメーカー(pace maker)として一生懸命支援する」という発言も、“ピースメーカー”がトランプ大統領の最も好きな表現だからこそ口にしたのだと李首席は説明した。
◇トランプ大統領、ペンに関心を示すと李大統領が贈呈
李大統領はホワイトハウス芳名録署名の際に使用したペンに、トランプ大統領が「この太さがとても気に入った」と関心を示すと、その場で贈った。国産手作りペンブランド「Zenyle」に注文し、2か月余りをかけて2本だけ製作された製品だった。
国産の手作りパター、小型金属製亀甲船模型、「Make America Great Again(米国を再び偉大に)」カウボーイ帽など、トランプ大統領に贈られた品々は長期にわたり準備したものだった。ゴルフ好きのトランプ大統領の体型に合わせたパターは、李大統領就任直後の6月初めに依頼して制作された。亀甲船を製作した大韓民国機械組立のオ・ジョンチョル名匠は「7月末に外交部の依頼を受け、8月初めから昼夜なく製作に15日間をかけた」と語った。
トランプ大統領は李大統領の要請に応じ、自身の襲撃写真が収められた写真集を贈った。また「あなたは偉大な指導者だ。韓国はあなたと共により高いところで驚くべき未来を持つことになるだろう」と書いた直筆カードも贈った。
2025/08/27 07:35
https://japanese.joins.com/JArticle/338022