トランプ氏の「関税訴訟で敗訴すれば貿易合意は無効化」 発言、実現可能性は

投稿者: | 2025年9月5日

米国のドナルド・トランプ大統領は9月3日(現地時間)、「相互関税訴訟で敗訴すれば、韓国・日本などと締結した貿易合意が無効化(unwind)される可能性がある」と警告した。トランプ大統領は同日、ホワイトハウスで開かれたポーランド大統領との会談で、関税訴訟について「(米国は)再び信じられないほど裕福になる機会があるが、その事件を乗り越えられなければ、再び信じられないほど貧しくなる可能性がある」と述べた。

2審の役割を担う米連邦巡回控訴裁判所は8月29日、トランプ政府の相互関税賦課の根拠となった「国際緊急経済権限法(IEEPA)」は、大統領に輸入規制の権限は与えるが、その権限に行政命令で関税を課す権限までは含まれないと判決した。IEEPAを根拠にした相互関税賦課は無効だということだ。これを受け、トランプ政権は連邦最高裁に上告し、判決の効力は10月14日まで停止されている。

 トランプ政府は同29日に裁判所に提出した陳述書でも「相互関税を課すことができなければ他国との通商交渉に支障をきたし、相手国の交渉遅延や報復関税を防ぐのが難しくなる」と主張した。「相互関税廃止→貿易合意破棄→国益毀損」という論理を掲げ、相互関税廃止の最終決定権を持つ連邦最高裁に対する強い圧迫と解釈される。

原則的に、トランプ政府の上告が受け入れられなければ、7月30日に韓国と締結した貿易合意は効力を失うことになる。相互関税制度自体が無効となり、韓米自由貿易協定(FTA)以前の関税体系に戻る構造だ。関税引き下げを条件とした3500億ドル(約52兆円)規模の対米投資と、1000億ドル相当の米国産エネルギー購入に対する口頭合意も名分を失うことになる。企業はすでに支払った関税の払い戻しを請求する可能性もある。

しかし通商専門家は、最高裁の判決によって通商協定自体が無効化される可能性は大きくないと説明する。ソウル大学法学専門大学院のイ・ジェミン教授は「最高裁判決が現状を完全に覆すほどのゲームチェンジャーになるとは見にくい」とし「もし控訴裁判所の判決を最高裁がそのまま受け入れる場合でも、トランプ政府は他の法律的根拠を探して関税賦課措置を続ける可能性が大きい」と説明した。

実際、スコット・ベッセント財務長官は9月1日の議会公聴会で、トランプ政府が相互関税訴訟で敗訴した場合に備えて「他の通商法を活用して国家安全保障と産業を守る方策を検討中」と述べた。政府次元で法的リスクを回避できる代案(プランB)を準備しているという意味だ。

ベッセント長官が提示した代案は、1930年の大恐慌時代に制定された「スムート・ホーリー関税法」第338条だ。同法は、大統領が特定国家が貿易において米国を不公正に差別していると判断した場合、議会の同意なしに50%の関税を最大5カ月間課すことができるという内容を含んでいる。ただし関税法第338条は歴史上一度も実際に発動されたことがない。このほか、鉄鋼・アルミニウム関税に適用された通商拡大法232条を用いる可能性もある。国家安全保障を理由に特定品目に高率関税を課すことが可能だ。不公正な貿易慣行を根拠に報復関税が可能な通商法301条も活用することができる。

最高裁判決の見通しについても、トランプ政府がやや有利になるだろうとの評価が多い。2審までは法理的解釈に集中する場合、最高裁の判決には政治的判断が考慮される可能性が高いためだ。最高裁の保守的構成もトランプ政府にやや友好的である可能性があるとの見方も出ている。西江(ソガン)大学国際大学院の許允(ホ・ユン)教授は「米国には大統領の外交的決定において『司法自制の原則』を優先する伝統がある」とし「大統領の外交的権限を広く認め、法制解釈上問題が生じた場合は、裁判所が大統領の裁量と判断を尊重してきた」と説明した。

2025/09/05 16:50
https://japanese.joins.com/JArticle/338409

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