文元大統領「早期の終戦宣言と平和協定で戦争を公式に終わらせるべき」

投稿者: | 2025年12月25日

 文在寅(ムン・ジェイン)元大統領は19日、個人の資格で訪韓した日本の鳩山由紀夫元首相と慶尚南道梁山市(ヤンサンシ)の平山村(ヒョンサンマウル)で対談し、韓日関係、東北アジアに平和を定着させる方策などについて意見を交わした。2人は、米中覇権競争、北朝鮮の敵対的核保有主張、ロシアとウクライナの戦争という3重苦がのしかかる東北アジアの平和と安定のためには「韓日の主導的協力が必要だ」と強調した。

 文元大統領はこの日、日本の植民地支配について韓国民に「もういい」と言われるまで謝罪すべきだと「無限責任」を訴える鳩山元首相を「尊敬する」と述べて歓迎した。鳩山前首相は「ぜひいちど平山書房に来てみたかった」と述べつつ、退任後も旺盛に活動する文元大統領を「尊敬する」と応じた。鳩山元首相は4代にわたり2人の首相を輩出している「日本のケネディ家」と呼ばれる政治の名門の家の出身で、2009年に民主党を率いて戦後初の「非自民党単独政権」を作った。2人の対談は平山書房で、ムン・ジョンイン延世大学名誉特任教授の司会で1時間15分間にわたって行われた。

-おふたりは近ごろどのような生活を?

文在寅

 読書を勧める仕事をしている。平山書房で一日1~2時間ボランティアをしたり、平山書房のユーチューブで良い本を紹介したりもしている。平山書房は公益財団なので、収益金はすべて公益事業に使われる。現実政治とは確実に距離を置いている。

鳩山

 公共形態の書店の運営はご立派で尊敬する。地域住民にとても愛されている様子も印象的だ。まだ何か政治的な力があるのではないかと感じる。私は「東アジア共同体」を構想する研究所を設立し、理事長を務めて13年目。東アジアを戦争のない地域にしたい。そのためには歴史を直視することが最も重要だ。そのため、過去に誤った戦争で韓国と中国に悲劇と被害を与えたことを謝罪することが、私の課題だと思う。韓日がより信頼できる関係となるよう、コミュニケーション環境づくりの役に立ちたい。

文在寅

 日本でそのような話は人気がなく、むしろ反対にぶつかっているのに、勇気を曲げないことに対して尊敬を表し、感謝する。(2015年8月に)西大門(ソデムン)刑務所歴史館を訪れて「膝をついて謝罪」した姿が今も記憶に残っている。歴史に対する誠意ある態度は日本の自尊心を傷つけるのではなく、むしろ道徳性と国の格を高め、国際社会での日本のリーダーシップを確立するものだと思う。在任時、安倍晋三首相の歴史に対する硬直した態度が非常にもどかしかった。

-高市早苗首相についてはどう思うか。

鳩山

 安倍首相は「一度謝ったら終わりだ」という考えだ。加害国が「こうしたのだから終わりだ」と言うのは正しくない。被害者が「もういい」と納得するまで謝罪し続けなければならない。私は無限責任が必要だと思う。しかし安倍首相のように高市首相も「終わった問題」だと主張するだろう。

文在寅

 心配だ。韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は非常に現実的な路線で日本との関係発展に努めるという心構えであるはずなので、高市首相が歴史問題で韓国民を刺激したり挑発したりしないだけでも両国関係の発展と首脳同士のシャトル外交は可能だと思う。しかし最近の独島(ドクト)発言のように、韓国民を刺激したり挑発したりする言動を続けると、韓日関係がまたも厳しくなる可能性がある。

-米国で「MAGA」という極右が政治的に勢力をつけている。韓国や日本も事情は変わらない。

鳩山

 この30年あまり、日本経済が成長できないでいる間に、韓国と中国は目覚ましい発展を遂げてきた。その羨望が憎悪に変わり、排他主義につながっていると思う。しかし、自分の国のみを愛するのは愛国ではない。隣国も愛してこそ愛国主義だ。日本は排他主義を克服してはじめて、世界から尊敬されうる。

文在寅

 ごもっとも。韓国は12・3戒厳内乱で民主主義が危機に陥った時、速やかに克服したため、全世界が韓国民主主義の驚くべき回復力に賛辞を送った。だが、今も韓国の保守野党は戒厳内乱という極端な選択を謝罪していない。穏健で合理的な保守勢力が力を失い、強硬な極右が保守の主流になっているせいだと思う。良心的な声が排斥されるのは、各国内部で愛国的な声が強すぎるせいだ。それは日本だけでなく韓国、中国、米国、欧州連合(EU)も同じだ。全世界の民主主義勢力はこれをどのように克服していくか、連帯と協力を深く考えるべきだ。政治指導者の役割が重要だ。

-最近、第2期トランプ政権の国家安全保障戦略が発表された。新孤立主義、取引主義などが目につくが、どのように対応すべきか。

鳩山

 トランプ大統領が訪日した際の高市首相の行動を見たら、「米国がどのような政策を取っても日本は追従する」という決定をしたようにみえた。トランプの経済第一主義に(押し切られて)日本は80兆円、韓国は50兆円を米国に投資すると発表した。私は日韓が協力して「これはおかしいのではないか」と強く主張すべきだったと思う。

文在寅

 トランプ政権の示す米国優先の一方的な態度や国際機関に対する敵意の表出などは、第2次世界大戦以降、平和と繁栄のために人類が共同で構築してきた多国間主義や自由貿易基調などの戦後秩序を破壊する行為だ。米国との同盟は非常に重要だが、中国との協力も維持しなければならない。韓日は米中(の覇権競争)に引きずられる世界秩序に従ってのみいるのではなく、もう少し自立的な外交の道をともに模索すべきだ。ダメなものはダメだと言えるようにならなければ。

鳩山

 米中どちらかを選べという問いの立て方は間違っている。どちらも重要だ。だが高市首相は米国を選択すると思う。中国と対立し、韓国とも歴史をめぐる対立を引き起こしている。それでは発展的な方向性が出てこない。共同の利益を考えるべきだ。

-文元大統領は2019年の国連総会での演説で、「非核化プロセスは敵対関係の終息と相互安全保障の上に築かれるべきだ」と強調したが、その考えは有効か。

文在寅

 その考えは今も変わらない。ただ、和平プロセスの過程と内容は変化があってしかるべきだと思う。当時は「非核化を前提とする平和プロセス」だったが、今、北朝鮮は非核化を前提とした対話を拒否している。まず、北朝鮮の核凍結の程度が対話の出発点だと考えうる。そして早期に終戦を宣言するとともに平和協定を結び、朝鮮半島の長年の戦争を公式に終わらせなければならない。平和への過程に欠かせないものだ。さらに朝米間、日朝間で関係正常化を論議し、国交樹立とともに非核化も最終的に実現することが現実的ではないだろうか。北朝鮮に非核化を要求するには、確実な安全保障策、経済発展のビジョンを提示し、北朝鮮に受け入れさせなければならない。かつてその役割を果たしたのは米国だった。だから北朝鮮は米国のみを相手にしたのだ。しかし今まで成功できていない。今や韓日が共同で主導的にイニシアチブを形成し、米国はもちろんEU、他のアジア諸国とも共同で、朝鮮半島の平和と東北アジアの安定のために膝を突き合わせて模索すべき段階に来ていると思う。

鳩山

 文大統領の構想を行動に移せば、北朝鮮の行動の緩和を引き出せると思う。しかし、残念ながら高市首相は安倍首相を尊敬しているから、安倍路線に追従して拉致問題が先だと主張し続けるだろう。

-文元大統領は退任後、外国には出ていないが、海外に行く計画はないのか。

文在寅

 海外に出ることを控えているとか、そういう考えはまったくない。来年に『辺境から中心へ』という私の回顧録が米国で英語版に翻訳されて出版されるという。その時期におそらく米国に行くことになるのではないかと思う。行くことになれば、朝鮮半島の平和のために助力してくれそうな方々に会うつもりだ。

鳩山

 日本語翻訳版もまもなく発売されると聞いている。出版されたら妻とともに必ず読むつもりだ。

2025/12/24 07:00
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/55051.html

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