韓国造船業、好況期追い風に「MASGA」で羽ばたく

投稿者: | 2025年9月5日

 ドナルド・トランプ大統領が当選して掲げた「米国を再び偉大に」(マガ・MAGA)という旗印は、全世界に向けた関税戦争につながった。米国政府の負債が想像を超えるほど増えているにもかかわらず、トランプは大統領選挙の公約として減税を掲げたので、不足する税収を関税で満たすしかなかった。

 当選して間もなく、トランプは全世界を相手にとんでもない関税率で脅し始めた。韓国も例外ではなかった。韓米自由貿易協定(FTA)が色あせるほど、米国は圧迫の水位を高めた。幸いにも2025年7月末、関税率15%台で妥結した。今後、米国にさまざまな追加投資をしなければならず、さまざまな品目を開放しなければならないという要件もあるが、概ね善戦したという評価だ。

 今回の関税交渉の立役者は断然マスガ(MASGA・「米国造船業を再び偉大に」)だ。衰退した米国の造船業を再び活性化させるため、造船強国である韓国が多様な方法で支援することが核心だ。世界の造船業は韓中日三国志と表現できる。中国が急速に成長し、世界の船舶建造の46%を占め、韓国と日本の比重がそれぞれ30%、15%程度になる。中国に物量が集中しているが、品質面では断然韓国が1位と言っても過言ではない。

ハンファ・オーシャンの変身

 米国が覇権主義を掲げているが、造船業が衰退しているため海洋覇権は中国に奪われかねないという危機意識がある。米国が軍艦の建造や修理を中国に委ねることはできないだろう。結局、友好国である韓国と日本に手を伸ばすしかないのだから、韓国にとっては大きなチャンスに違いない。

 このマスガプロジェクトには韓国の造船「ビッグ3」であるHD現代重工業、ハンファオーシャン、サムスン重工業が参加し、韓米政府と共に共同タスクフォースを構成したという。ビック3の中で断然目立つ企業はハンファ・オーシャンだ。2024年にすでに米国フィラデルフィアの造船所を買収し、米海軍と船舶の整備・修理・改良などの用役を提供するMRO契約も締結した。

 ハンファ・オーシャンの前身は、2015年の粉飾会計事件で世間を騒がせた大宇造船海洋だ。10年近くにわたり5兆ウォン(約5500億円)台の粉飾会計をしていた事実が明らかになり、大きな衝撃を与えた。赤字が累積し、財務構造も不安で、引き続き厳しい時間を過ごしたが、幸い造船業が2020年から好況期に入り一息ついた。2023年5月、ハンファグループが買収し、現在のハンファオーシャンになった。

 新型コロナウイルス感染症が蔓延した2020年初めまでは、経済の不確実性によって世界的に船舶発注が急減した。しかし、その年の下半期から環境規制対応船舶の需要が増え、韓国の造船業が徐々に伸びをすることができた。世界船舶受注の半分近くを中国が行っているが、液化天然ガス(LNG)船や二元燃料船舶のような環境規制対応船舶に対する技術力は確かに韓国が中国より優位にある。このような理由で船主が韓国企業を好まざるを得なかった。

 造船業が最も良かった2008年以後、13年後の2021年に全世界船舶発注量が最大値を記録し、本格的好況期に進入した。大将株(株価上昇を主導する株式)のHD現代重工業は目標受注額の89億ドルを66%も超過する147億ドルの物量を獲得し、ハンファ・オーシャンも目標額の77億ドルを41%も超過達成した109億ドルを受注した。

 以後、両社ともに毎年受注額が大きく増え、仕事が積もり始めた。HD現代重工業の場合、2020年末でも受注残高が12兆7506億ウォン(約1.36兆円)だったが、2025年第1四半期末現在の受注残高は49兆6336億ウォン(約5.3兆円)にもなる。会社の年間売上額規模が14兆ウォン(約1.5兆円)台だから、ほとんど3~4年分の仕事を取ったわけだ。ハンファオーシャンも8兆6405億ウォン(約0.9兆円)だった受注残高が5年で31兆402億ウォン(約3.3兆円)に増え、3年分の仕事を保有することになった。その間、両社の株価はいずれも5倍近く値上がりする気炎を吐いた。

 2030年までに全世界船舶の二酸化炭素排出量を2008年対比40%削減しようという国際海事機関(IMO)の「IMO2030」のような全世界的環境規制で各国老朽船舶の交替が本格化し造船業好況は今も持続している。売上が継続して増加するのは既定事実だが、今後収益性もさらに良くなると見られる。船舶の主要原材料である鋼板価格が下落傾向に入ったためだ。

 受注が増え、本格的好況期に入った2021年、2022年には造船会社の売上高は増加したが、数千億ウォンから数兆ウォンの赤字を出してしまった。トン(t)当り60万~70万ウォン台だった鋼板価格が1年で110万ウォンに垂直上昇したためだ。原材料価格が安い時に取ってきた仕事を処理するために高い原材料を買って投入しなければならないので、採算が合うはずがない。

収益性まで良くなった

 幸い、今は1t当たりの価格が90万ウォン台に下がり、収益性が大幅に改善された。特に原材料価格が高い時に高い価格で受注した仕事を処理するのに安くなった原材料を投入するので損益が改善されるほかはない。2025年上半期までハンファオーシャンは6303億ウォンの営業利益を達成したが、これは2024年の1年分の営業利益2379億ウォンの2倍を超える。営業利益率も2%台だったが、今は10%まで上がった。

 受注は増え、原材料価格は下がり、太平の世を享受しそうだが、ハンファ・オーシャンは、「マスガ」でさらに成長の足場を築いた。米国もエコ船舶の交替需要が多く、海軍の場合には老朽化した駆逐艦の代替が本格的に行われている。2054年までに艦船数も297隻から最大381隻に拡大する計画だという。艦隊拡充予算だけで1千兆ウォン(約106兆円)という話が聞こえる。また、MROサービス関連でも2024年までに約2兆6千億ウォン(約2700億円)だった規模が2035年には5兆ウォン(約5300億円)台に増えると予想される。自動車や二次電池などの成長が停滞している最近、造船がその隙間を埋め、韓国経済の心強い支えの役割を果たしており、本当に幸いと言わざるを得ない。

2025/09/05 11:19
https://japan.hani.co.kr/arti/economy/54149.html

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