【コラム】「極東1905年体制」と習近平の「転換点」

投稿者: | 2025年9月8日

 120年間にわたって保たれてきた東アジアの現秩序を説明するために「極東1905年体制」という興味深い分析の枠組みを提示したのは、日本の防衛研究所戦史研究センター国際紛争史研究室の千々和泰明室長だ。同氏は昨年4月に出版した著書『日米同盟の地政学』でこの概念のことを、「伝統的な覇権国だった中国が弱体化」したことを機として「日本と、日本にとって地政学的に重要な朝鮮半島(少なくとも南部)と台湾が、力の後ろ盾によって同じ陣営にまとめられている体制」だと説明した。

 日本-朝鮮半島-台湾が同じ陣営にまとめられている今の秩序を千々和が「極東1905年体制」と名付けたのは、この奇妙な「力の均衡」が作られたのが1905年だからだ。日本は1895年、東アジアの「伝統的覇権国」だった清を破って「台湾」を吸収し、1905年の日露戦争で勝利を収めて朝鮮半島を手に入れることになる。それに巻き込まれて大韓帝国は植民地へと転落するという苦しみを経験した。

 この秩序に最初の衝撃が加わったきっかけは、日本の敗戦だった。だが日本は崩壊せず、ギリギリ生き残る。米国が1950年に朝鮮戦争に参戦したことを機に、日本-韓国(朝鮮半島南部)-台湾を改めて一つの陣営にまとめあげたからだ。米国は1951年9月に日本、1953年10月に韓国、第1次台湾海峡危機直後の1954年12月に中華民国(台湾)と同盟(1979年1月の米中国交樹立で解体。その後、台湾関係法を制定)を結んだ。アジアにおける共産主義の拡大を阻止するには日本を橋頭堡(きょうとうほ)にしなければならず、そのためには朝鮮半島と台湾の安定が必要だということを、遅ればせながら悟ったからだ。

 今や私たちが目撃しているのは、この秩序を脅かす2度目の衝撃である米中戦略競争の激化だ。中国の習近平国家主席は今月3日、「戦勝節80周年閲兵式」が行われた天安門の城楼上に朝ロの首脳と立ち、「人類は改めて平和か戦争か、対話か対抗か、ウィンウィンかゼロサムかという選択に直面している」と警告した。同氏は、昨年11月には米国のバイデン前大統領に「『トゥキディデスの罠』は歴史的宿命ではなく、『新冷戦』は起きてもならず、勝利することもできない」という見解を示している。米中戦争は十分に避けられるという中国式の楽観論は、わずか10カ月で「我々は戦争と平和の岐路に立たされている」というふうに変わってしまった。この陰うつな変化の裏にドナルド・トランプの影がちらついている。まさにここが習近平の「転換点」だ。

2025/09/07 14:11
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/54168.html

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