ドナルド・トランプ米国大統領が今年3月に「美しい発表」と称して最も成功的な韓米投資だと持ち上げていた現代(ヒョンデ)自動車グループのジョージア州「メタプラント」複合団地。4日、移民・関税執行局(ICE)など連邦要員による大規模な不法滞在者取り締まりによって修羅場と化した。韓米経済協力の象徴だったメタプラントが、たちまち単一事件としては最大規模の不法滞在者摘発作戦が行われた現場となってしまったのだ。
今回の摘発作戦の法的根拠は、ジョージア連邦南部裁判所が発付した捜索令状だ。当初、令状に記載されていた摘発対象はヒスパニック系の犯罪容疑者4人だけだった。ところが捜査当局はヘリコプターや装甲車をはじめ数百人の要員を投入して全職員を徹底的に調査し、その過程で475人が拘束された。300人余りの韓国人職員には手首と足首に手錠がかけられ、さらには全身を鎖で縛られたまま工場から170キロ離れた施設に拘禁された。
トランプ大統領は摘発作戦直後、関連する質問を受けると「さっき(取り締まり関連の)知らせを聞いた」としつつも、「彼らは不法滞在者であり、ICEはただ自分たちの役割を果たしただけだ」と述べた。
韓国の工場で摘発が行われた4日は、トランプ大統領が日本産自動車に対する関税を25%から15%に引き下げる内容の大統領令に署名した日でもあった。これに対して韓国は、関税引き下げの条件として3500億ドル(約52兆円)の対米投資を約束したが、首脳会談を経ても具体的な資金調達方法や投資時期に関する文書化を終えられず、25%の自動車関税がそのまま維持されている。
トランプ大統領の意図的な黙殺と政権の大規模な取り締まりの背後には、来年の中間選挙を見据えた政治的布石という解釈が出ている。ジョージア州は2020年大統領選ではジョー・バイデン前大統領が、昨年の大統領選ではトランプ大統領が勝利した代表的な激戦州だ。特に摘発対象となった合弁バッテリー工場への投資はバイデン前大統領時期に決まったものだ。バイデン前大統領の業績に傷をつけると同時に、不法移民の追放を支持する強硬な支持層「MAGA(米国を再び偉大に)」の世論を意識した決定だという解釈だ。民主党所属でジョージア州下院議員のサム・パク氏はニューヨーク・タイムズ(NYT)に対して「今回の取り締まりは来年の中間選挙を狙った政治的行為だ」と主張した。
実際、中央日報が6日に韓国人労働者が収監されているフォークストン所在の矯正施設を取材する過程で、あるトランプ支持者がトラクターを運転して現れ、「韓国が約束した投資は米国人ではなく不法滞在韓国人を雇用するためのうそだ」と言って取材陣を脅す場面もあった。トランプ大統領を支持するジョージア州の政治家トリ・ブラナム氏は「韓国企業が税制優遇だけを受けて現地労働者を採用していない」とし、自身が不法の状況を通報したとSNSで明らかにした。
一方、米議会アジア太平洋系コーカス所属の民主党議員たちとジョージア州の民主党下院議員らは6日(現地時間)、共同声明を通じて「最近ジョージア州バッテリー工場で発生した移民取り締まりについて、我々は深い懸念を表明する」とし「行政当局が適法な手続きを遵守することを求める」と明らかにした。アンディ・キム上院議員(ニュージャージー州)、デイブ・ミン下院議員(カリフォルニア州)ら韓国系議員を含む20人が声明に加わった。
2025/09/08 07:19
https://japanese.joins.com/JArticle/338431