ICEが今月4日の取り締まりで拘束した韓国人約300人の中には、米国国内の工場やオフィスなどで合法的に働ける駐在員ビザ(L-1)保有者も一部含まれていたという。給与を韓国の会社から受け取り、契約書などに役割が明記されていれば、短期商用ビザ(B-1)や電子渡航認証(ESTA)などで米国に入国し、機材設置や施工管理・監督などを行っても違法ではない。しかしICEが予想外の取り締まりを実施し、現場でこうした内容を十分に説明できなかったため、韓国人拘束者の数が大幅に増えた。米国南部の「経済成長エンジン」と呼ばれるジョージア州は、ここ数年で韓国企業による対米投資が集中し「韓国のおかげで食べている」と言われるほどだったが、ICEによる取り締まり以降、ブライアン・ケンプ州知事や知韓派のバディー・カーター共和党下院議員らは取り締まりの適法性を強調し、距離を置く姿勢を見せている。外交筋は「保守陣営では今、不法移民追放に反対の声を上げられる政治的空間がない」として「こうした雰囲気の中で、善意の韓国人や企業の被害者がさらに増える可能性がある」との見方を示した。
こうした中、最前線で動向を感知し、米国側と協議すべき立場にある米国内の韓国領事館は、9カ所のうち4カ所で領事が空席の状態だ。アトランタの場合、ここ数年間で韓国人コミュニティーがロサンゼルスやニューヨークに匹敵するほど急速に拡大しているが、今年6月に徐尚杓(ソ・サンピョ)総領事が定年で退任して以降、空席状態が続いている。このため、今回のジョージアでの大規模取り締まりに対応するために、ワシントンの駐米韓国大使館が総領事を派遣せざるを得なかった。ホノルル、ヒューストン、ニューヨークの各総領事も、李在明(イ・ジェミョン)政権が特任公館長の一斉帰国を指示したことから空席状態になっている。これらの地域は韓国系住民が多い上、韓国国民の投資・旅行需要も高いため、ジョージア州と同様の事態が発生した場合、初動対応が十分にできない可能性がある。米国現地でコントロールタワーの役割をしながら米政権の高官とも接触しなければならない駐米大使も、2カ月以上空席となっている。先月に康京和(カン・ギョンファ)元外交部(省に相当)長官が内定したものの、1カ月近く米国側からアグレマン(駐在国の同意)が得られていない。アグレマンは全面的に米国側の意向に懸かっているが、前政権に比べると承認速度がかなり遅い。
トランプ大統領が7日「バッテリーや船舶関連の専門人材を呼んで米国人を教育してもらうことを検討する」とビザの拡充を示唆し、趙顕(チョ・ヒョン)韓国外交部長官が8日に訪米して担当高官にこの件を要求するようだが、これも短期間のうちに実現するのは困難との見方が支配的だ。なぜならば、米議会では現在、韓国国籍者に最大1万5000件の専門職就業ビザを発給する法案が発議されているが、これは「外国人が米国国内で働くためにビザを発給する」という趣旨の法案であるため、米国優先主義が重視される現在の米国で政治家らがこの法案を積極的に推進するのは難しいからだ。米国政界の与野党を対象とした広範囲なロビー活動が必要となってくるが、政治トレンドに合わせて一流のロビイストを雇う日本とは異なり、韓国は特定の韓国系ロビイストが10年以上にわたって大使館の仕事をほぼ独占受注しているのが実情だ。ワシントンにある大手法律事務所の弁護士は「かつて、韓米自由貿易協定(FTA)を議会で批准させるために、ほぼ毎日議会を相手に説明会やレセプションを開いた」とした上で「ビザの新設はそこまでではないにしても、それに準じる努力が必要だ。会談のたびに『協力を要請した』という社交辞令レベルでは何も実現できない」と指摘した。先月25日の韓米首脳会談の前も、外交部がこの件を議題の一つに押し込もうと努力したが、米国側から特別な言及はなかった。
ワシントン=金隠仲(キム・ウンジュン)特派員
2025/09/11 09:20
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2025/09/10/2025091080159.html