米太平洋司令部作戦本部長を務めたマーク・モンゴメリー元海軍少将は9月17日(現地時間)、シンクタンク韓米研究所(ICAS)が主催したオンラインセミナーで「トランプ大統領はプーチンに続き、習近平中国国家主席との談判でも失敗するだろう」と主張した。さらに「トランプ大統領は来年4月ごろ、新たな強者(strong man)が必要となる時期に金正恩(キム・ジョンウン)氏を登場させると確信している」と述べた。
モンゴメリー元少将は、原子力空母ジョージ・ワシントンを旗艦とする第5空母打撃群司令官を務め、韓半島(朝鮮半島)に対する米国の核戦力を直接運用していた人物だ。しかし韓国国内で拡大する核武装論については「現実的な最終目標になってはならない」と語った。その代わりに「韓国の国内総生産(GDP)比の国防費を、早急に欧州に求めた3.5%以上へ引き上げなければ、交渉の主導権を握ることはできない」と強調した。
◇「米中談判は失敗する…次のカードは金正恩氏」
モンゴメリー元少将は、ドナルド・トランプ米大統領と習近平主席の談判時期を11月と予測した。11月は慶州(キョンジュ)でアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議が開かれる時期だ。モンゴメリー元少将は「その頃にはウクライナ戦争に関して言うことを聞こうとしないウラジーミル・プーチン露大統領に疲弊し、突破口が必要な時期になる」としつつ「しかし(突破口として設けられる)11月の談判も失敗する可能性が高い」と述べた。
–習近平主席との談判をどう見ているか。
「習主席との談判は、プーチンとの談判失敗に対する(政治的)突破口だ。11月は8月にプーチンと会ってから3〜4カ月後にあたる。習主席との談判もプーチンの例と同じく、トランプ大統領の一方的要求が拒絶されるか、大きな失望の中で終わるしかない」
–中国との談判が失敗した後の次の突破口は何か。
「プーチンの時と同じく、11月以降5カ月ほどは時間を稼ぐだろう。そして『習主席が私を欺いた』と言い談判決裂を宣言する可能性が大きい。時期は来年4月ごろだ。トランプ大統領は再び突破口を開くための別の『強者』を探すだろうし、その頃に金正恩北朝鮮国務委員長が登場すると私は100%確信している。来年11月に中間選挙が行われる点を逆算すれば答えは明白だ」
さらにモンゴメリー元少将は「金正恩氏の登場は北朝鮮の核兵器に対する懸念が現実化することを意味する」とし、トランプ大統領が政治的危機突破のために持ち出す米朝首脳会談が、実質的に北朝鮮の核保有を認める方向に流れる可能性への懸念を隠さなかった。
◇「自国による核武装を目標にしてはならない」
モンゴメリー元少将は、北朝鮮の核脅威が高まる中で拡大する韓国の自国による核武装の必要性について否定的見解を示した。トランプ政府の国防政策を主導するエルブリッジ・コルビー米国防総省政策次官が中央日報とのインタビューで「核武装の可能性までテーブルに載せるべきだ」と言及したことに対しても「可能性を開いておくというレベルならともかく、米国が率先して主張すべき方向ではない」と強調した。
–トランプ大統領の「同盟軽視」が核武装論を広めている。
「米国は数十年にわたり核拡散を阻止するためにあらゆる努力をしてきた。(韓国の核武装は)コルビー次官が構想する立場かもしれない。しかし核武装を含むあらゆる可能性を念頭に置こうという次元を超えて、当座の現実的な最終目標になってはならない」
–少なくとも戦術核の再配備は必要だという主張もある。
「この問題については韓国と公正に議論すべきだ。(2017年退役前の)海軍作戦司令官時代に、米国が韓半島周辺に61基の核を配備しているという『主張』があったと承知している。当時の私の任務も、核兵器を搭載した戦略原潜(弾道ミサイル原子力潜水艦=SSBN)を韓半島周辺に展開することを調整する仕事だった。米国が韓国に関心を持っていることを証明するためだった」
モンゴメリー元少将は「実際に私が最後にSSBNを配備した場所を特定して言うことはできないが、確かなのは韓半島近くではなかったということだ」と述べ、「もはや過去のように核資産を時折展開する方式の『その場しのぎ』程度では解決できない状況に至った」と強調した。
◇「トランプ大統領を『沈黙』させるため先制的な国防費増額が必要」
モンゴメリー元少将は李在明(イ・ジェミョン)大統領とトランプ大統領の首脳会談は非常に成功的だったと評価した。その理由について「GDPの2.32%にすぎない国防費について『コルビー一派』が問題視しなかったのは奇跡だ」とし、「(交渉が難航した場合)2%台の国防費が足かせになるだろう」と述べた。
–韓国はどのような戦略を立てるべきか。
「核兵器を持つ短気な独裁者に直面している韓国の国防費が2%台というのは(トランプ政府が)容認できることではない。もしトランプ大統領が会談前にこの数字に注目していたら、会談自体が成立しなかったはずだ。それは自国の家の前に置かれた地雷のようなものだ。除去しなければ結局韓国が踏むことになり、韓国が最大の被害を受けることになる」
–当面の目標をどの程度に設定するのが賢明か。
「欧州に提示した3.5%をまず達成すれば、貿易や安保に関する韓国の悩みは自ずと解決されるだろう。欧州より高い水準を先に示すことが重要だ。もう一つ助言を追加するとすれば、国防費にはサイバー安保のための別枠予算を盛り込むことが賢明だ。断言するが、韓国の国防部と軍は現在、北朝鮮から100%の確率で攻撃を受けている」
実際、政府関係者は中央日報に「米国との軍需協力を推進する過程で、米国が同盟国である韓国に機密情報を共有することに拒否感を示す時が多い」と語り、「米国の立場からは韓国と共有した情報が北朝鮮に流出する可能性があるという警戒感を持っているからだ」と説明した。
◇「造船協力は必須…『労働者拘禁』 米国は謝罪すべき」
モンゴメリー元少将はまた、韓米が最も急務として協力すべき分野に造船を挙げつつ、北朝鮮のサイバー攻撃に言及し「米海軍の軍艦は韓国ではなく米国で建造されるべきだ」と述べた。
–造船業の協力は具体的に進んでいる。
「給油艦を米国で作れば1ドルかかるところ、韓国で作れば28セントで済む。工期や品質も韓国の方が優れている。しかし今すぐ軍艦を韓国で建造させるのは難しい。韓国企業が我々を指導してくれることを望む。このような役割を果たせる同盟国は韓国と日本しかないが、日本の造船業はすでに中国との競争が難しい。一方、韓国は中国より革新性で優れている」
彼はまた、ジョージア州で発生した現代(ヒョンデ)自動車・LGエナジーソリューション合弁工場で発生した韓国人労働者拘禁事件について「米国が血で結ばれた同盟国に決してしてはならない屈辱的な過ちを犯した」とし「米国は韓国に明確な謝罪をすべきだ」と主張した。
–拘禁事件に対する否定的世論が高まっている。
「起きてはならない本当に恥ずべき出来事だ。理論上、両国は今も共に戦争を戦っている。この件は同盟国同士の接し方ではない。残念なことに国土安全保障省が『我々が発見したものを見よ』とばかりに、同盟を損なうことを誇示する愚かな行為をしてしまった。幸いなことは、米国の行動が恥辱だと比較的早く気づき、できるだけ迅速に是正した点だ」
–対米投資にも悪影響を及ぼすとの懸念がある。
「幸いにも国土安全保障省の屈辱的行動を国防省が主導権を握り、ホワイトハウスと共に収拾している。迅速に収束しなければ今回の件は同盟間の大きな汚点として残るだろう。国土安全保障省によって手錠や足かせをかけられた労働者のうち、残っているのは1人だけだと聞いた。米国には工場を建てる技術者がいない。米国が犯した恥ずべき出来事について、明確に謝罪すべきだと私は思う」
実際、この日のセミナーに出席した一部の専門家は、参加していた韓国人記者に向かって「米国は同盟国や友人を大切にする方法を学ぶにはまだ程遠い」と述べ、「ジョージアで米国が犯した行為について、国を代表して謝罪の意を伝える」と語った。
2025/09/19 10:00
https://japanese.joins.com/JArticle/338868