【コラム】米中ロの空白の中で拡大する東南アジア市場…韓国防衛産業はゴールデンタイムつかむべき

投稿者: | 2025年10月15日

グローバル分析によると、東南アジア防衛産業市場は2024年の140億ドルから2032年には254億ドル規模に成長する見通しだという。年平均6~8%の成長率となる。このような成長を予想する理由は3つの側面の変化のためだ。

1つ目、多層的安保リスクの深化だ。南シナ海問題と域内のタイ-カンボジア国境衝突、サイバー攻撃とドローンの脅威が同時に強まり、各国は自主国防に動いている。シンガポールは国内総生産(GDP)の2.8%を国防に投入しながら地域最強国の地位を維持し、ベトナム・フィリピンは2けた予算増額を断行した。

 2つ目、米国の「戦略的無関心」だ。米中貿易戦争で東南アジア各国の対米輸出は増加したが、トランプ政権は東南アジアに関心がほとんどなかった。トランプ2期目の最初の10カ月間の公式外交メッセージ・演説・ホワイトハウス資料に「東南アジア」という言葉自体がほとんど登場しなかったと、米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)は分析した。

伝統的安保パートナーに対する信頼が揺らぎ、東南アジア国家は新しい選択肢を模索している。逆説的にも今月のASEAN首脳会議にはトランプ大統領だけでなくブラジルのルーラ大統領、南アフリカのラマポーザ大統領、インドのモディ首相までが出席する。米国中心の安保秩序から抜け出し、ASEANが直接グローバルパワーを呼んで主導権を握っていく構造的な変化が起きている。

3つ目、中国とロシアの空白だ。中国は南シナ海領有権紛争当事国という政治的限界により戦略・高危険武器の採択で制限的にならざるをえない。品質問題も表れた。マレーシアが費用削減のために中国製沿岸任務艦(LMS)4隻の導入を決め、一次として2隻の引き渡しを受けた。しかし中国産電子装備・センサー・機関など核心部品の頻繁な故障と低い耐久性、予備部品確保の遅延が続き、期待した技術移転もまともに行われなかった。結局、残りの2隻(LMSバッチ2)は中国でなくトルコの企業に発注した。

ロシアは東南アジアで1位の防衛産業輸出国だったが、ウクライナとの戦争以降、金融制裁と部品不足で新規輸出と維持・補修が事実上中断し、米国の2次制裁リスクまでが高まったことで、ベトナムのような伝統的な顧客が離脱している。

◆防衛産業協力で産業高度化を摸索

このような隙間はすぐに埋まった。フランスはインドネシアにラファール戦闘機42機を輸出する契約をし、トルコも新型戦闘機(KAAN)とステルスドローン(Talay)輸出契約を締結した。輸出はなく自衛隊だけに武器と装備を納品してきた日本は輸出要件の緩和と政府安全保障能力強化支援(OSA)制度を通じて東南アジア市場攻略に注力している。フィリピンに海岸監視レーダーシステムと巡察艦、マレーシアには警備艇と海洋ドローンを提供した。ベトナムとインドネシア・タイとはさまざまな協力事業を協議・進行中だ。

東南アジア主要国の戦略は明確だ。特定強大国に依存せず、複数の国と技術協力を拡大し、外交的空間を広げるミドルパワー戦略だ。単純な武器輸入でなく防衛産業を通した産業生態系の高度化を望む。したがって高価な最先端武器よりも、戦争抑止力を確保しながら自国の企業が参加して技術移転を受けることができる協力を好む。

現代戦で武器は単独で作動しない。FA-50戦闘機は地上レーダー網と連結して情報を随時交わし、天弓2防空ミサイルは海軍艦艇の戦闘体系と統合されてこそまともに作動する。個別武器でなく統合システムを構築するものであり、これは20年以上共にアップグレードする長期パートナーシップを意味する。

インドネシアやフィリピンのような島嶼国家にはこうしたシステムがなおさら必要だ。広大な排他的経済水域(EEZ)を管理する海洋監視システムは軍事用を越えて違法操業取り締まりや災難対応にも活用される。レガシーシステムを段階別に構築する余力がないASEANは人工知能(AI)で効率性を高めて費用を抑え、最新体系に飛躍しようとする。

韓国は西欧レベルの品質と合理的価格、技術移転の意志で東南アジアの需要に応じている。マレーシア海軍にLIGネクスワンは海弓を納品する予定であり、ハンファシステムは艦艇戦闘体系と垂直発射台を供給している。単なる武器販売を越えて統合システム協力モデルを構築するものだ。

ASEANは中東やポーランドのように一度に巨額を支払う「大魚」ではない。しかし国防費は毎年2けた増加で、技術移転と現地生産を含む長期パートナーシップを望む。着実に成長しながら韓国と統合システムを共に構築する市場だ。

◆韓国、ASEANと長期パートナー戦略が必要

このため韓国の戦略的ポジショニングが重要となる。ASEANが望むのは戦争武器でなく平和インフラだ。韓国は数十年間の国連平和維持軍派遣と災難救助で信頼を築いた。「脅威を与える対応武器」でなく「安定構築システム」を販売するというメッセージを強調すれば、フィリピンを海軍維持・補修・整備(MRO)ハブに、マレーシアを航空機部品生産基地に発展させる協力も可能だ。

欧州と中東に続いてASEANまで幅広い輸出構造を構築する場合、リスクを分散しながら各地域で長期協力構造を構築できる。しかし防衛産業の輸出拡大が韓国の国家イメージとソフトパワーに及ぼす影響も慎重に考慮する必要がある。単に武器を売る国と認識されれば、Kカルチャーで築かれた創意的な韓国のイメージは色あせる。

それで「平和構築システム」というポジショニングが重要だ。海洋の安全と災難対応・違法操業取り締まりという公共価値を強調し、技術移転を通じて現地産業生態系の発展に寄与するというメッセージを明確にしなければいけない。K防衛産業が単に武器販売者でなく地域の安定と繁栄を共につくるパートナーとして定着する時、経済的利益と国家ブランドを同時に守ることができる。今が「K防衛産業平和システム戦略」を実現していくゴールデンタイムだ。

コ・ヨンギョン/延世大国際学大学院デジタル通商研究教授

2025/10/15 14:13
https://japanese.joins.com/JArticle/339814

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