アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議前の妥結を目指して、韓国と米国が最終段階の関税交渉に入った。韓国の金容範(キム・ヨンボム)大統領室政策室長と金正官(キム・ジョングァン)産業通商部長官は16日、共に米国に向けて出国して追加交渉を行う予定だ。米国のスコット・ベッセント財務長官は15日(現地時間)、韓国との貿易交渉が最終段階にあると明らかにした。両国間の貿易合意が目前に迫っているとの見方が出ている。
15日、通商当局によると、最近米国側が韓国に修正案を提示し、それに対する後続協議が行われている。これに関連してベッセント長官は同日、CNBCとのインタビューで「現在、どの貿易交渉に最も集中しているか」という質問に対し、「私の考えでは、我々は韓国との交渉をほぼ終えようとしている(we are about to finish up with Korea)」と答えた。韓国の対米投資をめぐって意見の相違があるのではないかという質問には、「悪魔は細部に宿るが、我々はその細部を調整している(ironing out the details)」と述べた。また、韓米両国の関係者が今週ワシントンで開かれる国際通貨基金(IMF)および世界銀行年次総会の期間中に別途会合を持つ予定であることも説明した。
金室長と金長官は韓米関税交渉の後続協議のためワシントンD.C.へ移動し、ハワード・ラトニック商務長官と会談する予定だ。呂翰九(ヨ・ハング)産業部通商交渉本部長は前日に先発隊として出国し、交渉準備を進めている。
◇金容範室長「米国、かなり意味のある代案を提示」
具潤哲(ク・ユンチョル)副首相兼企画財政部長官も15〜16日(現地時間)にワシントンD.C.で開かれる「主要20カ国(G20)財務相・中央銀行総裁会議」などに出席する機会を通じて、ベッセント財務長官と会い関税問題を協議する計画だ。
ここ2週間の間に、米国が韓国側の修正案に「意味のある」反応を示し、新たな提案を韓国に伝えたことで、交渉の流れが変わった。金容範室長はこの日、YouTube(ユーチューブ)番組「サムプロTV」とのインタビューで「米国側からはしばらく何の言葉もなかったが、今回金正官長官が訪米した際に米国側が意味のあるコメントをし、かなり意義深い代案を提示した」と説明した。先立って金長官は、秋夕(チュソク、中秋)連休中の今月4日、カウンターパートであるラトニック長官と会い、交渉を進めていた。
金室長は「デッドラインが特にあるわけではないが、(韓米)両国首脳が会う機会がそう頻繁にあるわけでもないので、アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議が実質的に大きな目標だ」と述べ、韓米間の関税交渉が近く妥結する可能性があるという楽観的な見通しを示した。
韓米両国は、これまで最大の争点だった3500億ドル(約53兆円)規模の対米投資パッケージをめぐり、最終的な接点を模索する予定だ。米国政府は日本のように3500億ドルをほぼ現金で提供する「白紙小切手」方式を望んでいる。一方、韓国政府は為替市場の安定性と財政負担を考慮し、直接的な持株投資は最小限に抑え、保証と融資を中心とする投資構造を構築すべきだという立場だ。また、米国が持株投資規模の拡大を求める場合には、「安全弁」としての無制限通貨スワップ(両国通貨の相互交換協定)が必要だという前提も付けた。
金室長は「米国が韓国の言う状況を理解し、それなりに代案を出したという点で意味のある進展だと思う」と述べた。ただし、米国が提示した修正案の具体的な内容は公開されていない。結局、米国が韓国の要求をどの程度反映したかが今回の交渉の分岐点になる。金室長は「3500億ドルを一度に出すことはできず、米国の製造業復興に実質的に寄与できる事業でなければならない」と強調した。
ある外交消息筋は「政策室長まで投入されたのは、首脳会談前に交渉の枠組みを安定化させようという意味」とし「今回の訪米で合意の骨格を整え、細部の文言調整などは後に回す可能性が大きい」と伝えた。
米中対立が高まっている状況が、韓米交渉妥結の可能性を高めたという分析も出ている。ベッセント長官は「米国の株式市場が下落しても、中国との貿易交渉の立場を変えることはない」と語った。
韓国貿易協会国際貿易通商研究院のチャン・サンシク院長は「米中対立が激化する中で、米国の立場では、韓国との交渉を早期に妥結させる必要性が高まった」とし「韓国とのサプライチェーン協力を強化する方向で交渉スピードを上げる可能性がある」と指摘した。
ソウル大学法学専門大学院のイ・ジェミン教授も「米国は3500億ドルの現金投資が物理的に不可能である点を認識したようで、より現実的な修正案を提示した可能性がある」とし「3〜4カ月続いた交渉の長期化で双方ともに疲労感が蓄積し、むしろ妥協の意志が高まった面もある。9月より10月のほうが交渉条件は良くなった」と評価した。
2025/10/16 06:48
https://japanese.joins.com/JArticle/339828