韓米が7月末に合意した貿易合意の後続交渉が妥結に近づく雰囲気だ。両国の経済トップから交渉が急流に乗ったことを示唆する発言が相次いで出てだ。今月末に慶州(キョンジュ)で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を契機に開催が見込まれる韓米首脳会談で最終合意案が導出されるかに関心が集まる。
ベッセント米財務長官は15日の記者懇談会で、「韓国の対米投資履行に対する双方の溝は解消すると予想するか」との質問に、「溝は解消されると確信する」と答えた。その上で「われわれは現在協議中であり、今後10日以内に何かを期待する」とした。貿易交渉の結果が10日以内に出るだろうという意味だ。ベッセント長官はこの日のCNBCでの対談でも「われわれは韓国と(交渉を)終えようとしていたところだ。悪魔は細部に宿るがわれわれは細部を解決している」と述べた。
◇具副首相「速いスピードで調整する段階」
この日米国に到着した具潤哲(ク・ユンチョル)経済副首相兼企画財政部長官も同様のトーンのメッセージを出した。彼はワシントンDCのダレス国際空港到着後に記者らと会い、現在の交渉状況を「速いスピードで互いに調整している段階」と明らかにした。
韓米は7月30日の交渉で、米国が韓国に対する相互関税を25%から15%に引き下げる代わりに韓国が3500億ドルの対米投資をする内容で合意したが、対米投資履行案などをめぐって溝があり、2カ月半にわたり後続文書化交渉過程で産みの苦しみを味わってきた。韓国は直接現金を出す方式の持ち分投資は最小化し、投資金の大部分を貸付と保証形態にする間接投資方式を構想したのに対し、米国は日本と合意したように一種の「投資白紙小切手」を要求してきた。
だが韓国が大規模なドルの対米投資を実行する場合、外国為替市場への悪影響が懸念されるという論理に米国側が一定部分で理解を示し突破口が設けられたものとみられる。韓国政府は通貨スワップなど通貨危機を防ぐ安全装置を要求してきた。
◇ベッセント長官「私がFRB議長なら通貨スワップ」
これに対し米政府が有意味な代案を提示し交渉の糸口が開いたという。ベッセント長官は記者懇談会で通貨スワップ締結の可能性に対する問いに「通貨スワップは米連邦準備制度理事会(FRB)の所管だが私がFRB議長ならば韓国はすでにシンガポールのように通貨スワップを有しているだろう」と話した。
これと関連し具副首相も「米国が韓国外為市場に対してよく理解している。そのためおそらく韓国が提案したことを受け入れるだろう」とした。ベッセント長官が例示した米国とシンガポールの通貨スワップは600億ドル規模で韓国側の要求とは相当な開きがあるが、大規模にドルを一気に投資する場合の外為市場に及ぼす衝撃を防ぐ最小限のガードレールの必要性には双方で共感が形成された形だ。
韓国政府の経済・通商部門のトップがワシントンDCに総集結しているのも交渉が重大変曲点を迎えていることを裏付ける。大統領室の金容範(キム・ヨンボム)政策室長と産業通商資源部の金正官(キム・ジョングァン)長官は16日に米国を訪問し、米国側で交渉を陣頭指揮するラトニック商務長官と会談したほか、15日に米国入りした呂翰九(ヨ・ハング)通商交渉本部長は米通商代表部(USTR)のグリア代表と交渉を継続する。主要20カ国(G20)財務相・中央銀行総裁会議と国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会出席に向け訪米した具副首相もカウンターパートであるベッセント長官と会い関税問題を協議する計画だ。
◇トランプ大統領「3500億ドルは先払い」繰り返し圧迫
ただトランプ米大統領は韓国が約束した3500億ドルは「先払い」が約束されたものと繰り返し韓国を圧迫した。彼はこの日の記者会見で、自身の関税政策成果を強調しながら「日本、韓国とも(交渉に)署名した。韓国は3500億ドルを先払いで、日本は6500億ドルで合意した」と話した。
韓国は3500億ドルの対米投資には合意したが具体的な履行条件と用途などに対する最終署名には至っていない状態だ。日本が合意した対米投資規模も6500億ドルではなく5500億ドルだ。トランプ大統領が数値を勘違いした可能性、また妥結が迫った状況で韓国を繰り返し圧迫することで詰めの交渉を有利に導こうとした可能性がある。
交渉が急速に進展を見せる雰囲気をめぐり、両国がAPEC首脳会議前に交渉を決着させるために拍車をかけているとの分析が出ている。この日APEC首脳会議の見通しを主題に開かれた韓米経済研究所のセミナーで、アジアグループのパートナー、カート・トン氏は「トランプ大統領の訪韓が差し迫り双方が貿易交渉に集中している。進展を期待できるだろう」と述べた。続けて「韓米貿易合意は米日貿易合意ととても似ているだろう。今回の合意は合理的な水準になるだろう」と予想する。
在米韓国大使館のアン・セリョン経済公使は「安全保障・投資・貿易・技術協力分野で韓米間に進展があり、李在明(イ・ジェミョン)大統領とトランプ大統領が今月末に会う際に双方は多くの内容を発表できるだろう」と話した。
2025/10/16 17:57
https://japanese.joins.com/JArticle/339885