「カンボジア人たちもウェンチ(園区:犯罪団地)が入ったカジノホテルで、清掃員や店の店員として働いていますから。結局、彼らのおかげで生計を立てているのは事実です」
カンボジア南西側の端にある港町シアヌークビルで、タクシー運転をするカンボジア人のペン・ファネットさん(28)が複雑な表情で語った。多くが中国資本で建てられたきらびやかなホテルのどこかで、中国、台湾、日本、そして韓国の組織員が各種フィッシングと不法ギャンブルの犯罪を行っていることを知っている。組織員の一部は監禁状態であることも、物騒な拷問の噂もよく耳にした。たが、このような都市の一部になってしまったペン・ファネットさんは、簡単には都市を責めることはできない。
ハンギョレが15~16日に訪れたシアヌークビルの風景は、「不夜城」という言葉そのものだっただった。都市の進入路から中国語の看板が一つ二つと目につき、中心部に行くほどきらびやかな中国語の看板がついた大型カジノと高層ホテル、ショッピングモール、食堂が並んでいた。華やかさの裏には犯罪がある。17年間この都市に住んでいる宣教師のオ・チャンスさんがため息をついた。「カンボジアで夕焼けが最も美しい海岸都市として知られていた地域が、どうして『犯罪都市』という汚名を着せられてしまったのか、残念です」。シアヌークビル韓人会長を兼ねるオさんには2日間、韓国人の「救助要請」2件が伝えられた。今年だけで、大使館とともに50人余りを救出した。外交部は15日0時を基準に、シアヌークビル州を旅行制限レベル3(出国勧告)地域に指定した。
シアヌークビルがのどかな港町からカジノ都市へと変貌を遂げる過程で、犯罪都市のエコシステムも定着した。わずか10年余りの間に起きたことだ。まず、「一帯一路」事業目的でカンボジアに流入した中国資本が現地人から土地を相場の2〜3倍の値段で買い入れた。カンボジア人は外郭に押し出され、都心にはカジノ施設を備えた中国系大型ホテルが雨後の筍のように建てられた。新型コロナウイルス感染症の大流行を経て、観光業に打撃を受けた。シアヌークビルの随所には当時、資金問題で建設中止になったホテルが骨組みだけの姿で独特な雰囲気を醸し出している。すでに建設されたカジノ施設は、世界に送出される不法ギャンブルの中継現場となった。ホテルの空き部屋は各種ボイスフィッシング、ロマンス詐欺組織のコールセンターとオンライン・ターゲティングの空間になった。ちょうどボイスフィッシング組織は、中国やフィリピンなどの取り締まり強化で、新しい犯罪空間を求めていた。
犯罪現場になったホテルの部屋に訪ねてきたり、監禁された下部組織員は国際的だ。彼らの中に韓国人がいる。オさんは「初期にはシアヌークビル犯罪団地が中国人、台湾人、日本人などで埋められていたが、3~4年前からはいわゆる『就職詐欺』で入ってきた韓国人の数が一気に増えた」と語った。シアヌークビル地方警察庁で会った現地警察官は「オンラインカジノ関連犯罪疑惑を受けている韓国人男性2人が拘禁されている」と話した。彼らは犯罪組織に閉じ込められていたが、最近辛うじて救出された後、現地警察の調査を受けている。
一方、カンボジアの現地人たちは、これらの犯罪とは直接的な関連性は少ない。中国人のように犯罪組織を作るほどの資金がなく、組織がフィッシング犯罪の標的にする国家の言葉も話せない。ただし、犯罪収益で構成された都市の変化に間接的な恩恵を受けている。 ペン・ファネットさんは主に中国人カジノ観光客をタクシーに載せることでお金を稼いでいる。シアヌークビルの中心街の露店で果物を売っている若い夫婦は「シアヌークビルで商売をすれば、お金を速く貯められると聞いて、周辺の小都市から移住してきて3年目」だと語った。
韓国の外交部第2次官と国家捜査本部長らが15日夜、カンボジアを訪れたというニュースは、シアヌークビルにも伝えられた。監禁された韓国人組織員を救助してきたオさんにとっては、当局の介入は歓迎すべきことだ。にもかかわらず、オさんの顔は暗かった。救助を試みている韓国人2人の状況のためだ。「一人とは連絡が途切れました。連絡を維持しているもう一人の話では、ウェンチ警備の人数が急に増え、監視が強化されたそうです。犯罪組織が身を潜めるほど関与した人々を救い出すこともまた難しくなるのではないかと、それが心配です」。エコシステムを成した犯罪都市の一網打尽はまだ容易ではない見通しだ。
2025/10/16 22:45
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