7月の関税交渉妥結以降、3500億ドル(約53兆円)の対米投資ファンドをめぐり膠着状態にあった韓米交渉が、最近また速度を出している。今月末に慶州(キョンジュ)で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を控え、両国ともに外交的成果を確保すべき政治的圧力が強まった結果と解釈される。このためAPEC首脳会議期間の韓米首脳会談で共同声明レベルの「トップダウン」方式の合意文が出る可能性が提起されている。
21日、政府・与党によると、金容範(キム・ヨンボム)大統領室政策室長ら交渉団は米国との交渉を終えて帰国し、李在明(イ・ジェミョン)大統領に「韓米交渉の残りの争点は首脳間の決断が必要な事案」と報告した。両国は3500億ドル規模の対米投資金額と、自動車など主要品目の関税を25%から15%に引き下げる案を含め、総論レベルの合意文を首脳会談で発表する案を検討していると伝えられた。
先週、金容範室長、具潤哲(ク・ユンチョル)副首相兼企画財政部長官、金正官(キム・ジョングァン)産業通商部長官、呂翰九(ヨ・ハング)通商交渉本部長らが出席した閣僚級交渉では、ある程度の調整を終えたとみられる。トランプ大統領が要求した「現金(出資)」中心の前払い方式は韓国経済の為替余力上、不可能であるため受け入れがたいという点を説明し、米国側もこれを一部受け入れたという。
金正官長官は帰国直後、「米国側が我々の意見を相当部分受け入れた」とし「全額現金投資要求ではない状況」と明らかにした。残りの争点は全体投資金のうち現金納入比率をどの程度に調整するのか、残余金額は貸出や保証の形態で調達して分割支給するかどうか、投資配分に対する商業的な合理性などと観測される。金容範室長は「一つ、二つほど調整が必要な事案が残っている」と伝えた。
西江大のホ・ユン国際大学院教授は「米国が日本のMOU(了解覚書)枠組みを維持するものの韓国側の要求を反映した修正案を提示し、これに両国が一定部分の共感を形成したとみられる」とし「特に通貨スワップとキャピタルコール(必要に応じて資金追加納入)を連係した段階的(Phased)執行方式で意見の接近があったと判断される」と述べた。
続いて「ただ、投資のガバナンス構造、損失分担条項、意思決定参加範囲などは依然として争点として残っている」とし「APECではMOUよりも共同声明(Joint Statement)形態で大きな枠組みの方向だけに合意し、細部は後続交渉で進める可能性が高い」という見方を示した。
グローバル投資銀行モルガン・スタンレーも最近の報告書で「APEC首脳会議の前後に韓米間でMOUが締結される可能性が高まった」とし「両国が『自動車など関税15%への引き下げと3500億ドルの対米投資」という基本交換構造を維持するものの、現金納入比率を低めて米連邦準備制度理事会(FRB)との為替スワップライン構築を併行する組み合わせが最も現実的な代案」と評価した。
今回の交渉の成否は何よりもトランプ大統領の決断にかかっているという分析が多い。匿名を求めた通商専門家は「トランプ大統領の最終決断までは不確実性が依然として高い」とし「彼の予測不可能な意思決定の特性上、韓国政府は不必要な刺激を避けながら『米国内プロジェクトに寄与する』というメッセージを維持することが戦略的に重要だ」と助言した。
ただ、専門家らは交渉の進展にもかかわらず、「条件・方式・期間」が文書で明確に整理されなければ論争が繰り返されると指摘する。日本の場合、8月に米国とMOUを締結したが、投資ファンド構造が公開されず混乱が続いている。赤沢亮正経済再生相は「出資は1~2%水準」と明らかにしたが、トランプ大統領は「前払い合意」と主張し、異なる解釈を見せているからだ。
ソウル大のイ・ジェミン法学専門大学院教授は「7月30日と8月25日の韓米合意のように抽象的な文章で残れば両国間の混乱が生じるおそれがある」とし「今回は必ず条件を明確に決着させて文書化しなければいけない」と強調した。
2025/10/22 07:53
https://japanese.joins.com/JArticle/340052