トランプの呼びかけにも沈黙の金正恩…2019年とは異なる雰囲気、なぜ?

投稿者: | 2025年10月27日

 米国のトランプ大統領の訪韓期間(29~30日)に、北朝鮮の金正恩国務委員長とトランプ大統領の「対面」は実現するのか。トランプ大統領は「対面は100%開かれている」として、「会おう」とシグナルを送っているが、金正恩委員長は「沈黙」で対応している。ただし、近ごろの2人の言動は「実現しない」方へと傾いている雰囲気だ。

 まず、トランプ大統領の「会おう」というシグナルが曖昧だ。トランプ大統領は25日(現地時間)、大統領専用機の機内で記者団に対し、「韓国にいる間に金正恩と会う計画はあるのか」と問われ、「彼が連絡してくれれば会う」と答えた。「対面」に先立つ最小限の朝米の実務者による接触が難しいためそう述べたのか、それとも「金正恩との対面を焦っている」という批判を回避するための「ボールを相手に投げる」発言なのかは不明確だ。

 金委員長との対面時間を作るのも難しい。韓国滞在初日の29日には慶州(キョンジュ)で李在明(イ・ジェミョン)大統領と、翌日の30日には釜山(プサン)で中国の習近平国家主席と会談しなければならない。金委員長の最近の動向は、むしろ中国およびロシアとの「特殊関係」を強調することに重きが置かれている。このような点から、「沈黙」は「会うかどうか」悩んでいることを示すものというより、「無視」に近いようにみえる。

 金委員長は23日、ウクライナ戦争の戦死者を称える平壌市和盛(ピョンヤンシ・ファソン)通りの「海外軍事作戦戦闘偉勲記念館」着工式の演説で、「平壌は常にモスクワと共にあるだろう」と述べている。その翌日には、中国軍の朝鮮戦争参戦75周年に際し、平安南道桧倉郡(フェチャングン)にある「中国人民支援軍烈士陵園」を訪れている。22日には北朝鮮ミサイル総局が「2つの極超音速飛翔体」の発射実験をおこなっている。「対面」の真逆のシグナルだ。

 何よりも、26日午前に朝鮮中央通信(中通)が予告したチェ・ソンヒ外相のロシア・ベラルーシ訪問は、トランプ大統領の「彼(金正恩)が連絡をくれれば会う」との提案に対する否定的回答だと読み取れる。ただし、中通はチェ外相の訪ロ日程や議題を詳細に公開していないことから、ぎりぎりでの対面実現の可能性は排除できない。

 金委員長とトランプ大統領の最近の言動は、2019年6月30日の板門店での対面時とはまったく異なる。金委員長は、2019年にはトランプ大統領の「非武装地帯(DMZ)で金正恩に会ってあいさつできるだろう」というツイートに、5時間もたたないうちに「非常に興味深い提案」だという「チェ・ソンヒ談話」で喜びを表現した。一方で今回は「チェ・ソンヒのモスクワ行き」発表で冷や水を浴びせた格好だ。何よりも、あの時は朝米の首脳いずれも、2019年2月のハノイでの2回目の首脳会談が物別れにおわっていたものの、2018年6月のシンガポールでの最初の首脳会談の成功を継続していくという政治外交的必要性に迫られていたとすれば、今回は「対面の条件」を合わせるのが難しい。

 金委員長は9月21日の最高人民会議での施政方針演説で、「米国が非核化への執念を捨て、真の平和共存を望むなら、米国と向き合えない理由はない」と述べている。「核保有」を認めることを前提とすれば関係正常化に向けた対話に応じうるという「条件」の提示だ。しかしトランプ政権は、北朝鮮に対しては「無条件の対話」を、韓国と日本には「朝鮮半島の非核化という目標の堅持」を強調している。トランプ大統領も、北朝鮮は「一種の核保有国」だと述べてはいるものの、「金正恩の核保有を認める」とは言っていない。接点を見出すのは難しい。

2025/10/26 18:01
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/54553.html

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